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世界を書き換えられる転生幼児は、 評価を保留させたまま学園を出る  作者: 黒羽レイ


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第1話 転生、なお説明不足

この物語の主人公は、

最初から“世界を変えられる力”を持っています。


世界の評価を書き換える。

危険度を下げる。

重要度を曖昧にする。


――そんなことができる、謎のパネルを。


けれど彼は、

その力を使って目立つことをしません。


理由は単純です。


評価とは、祝福ではなく管理だから。


強いと知られれば、観測される。

有能だと示せば、分類される。


ならば最初にやるべきことは、

力を振るうことではない。


力を隠すことだ。


爪も、牙も、すでに研いである。

ただ――

今は、見せない。


これは、

世界を書き換えられる少年が、

あえて“評価を保留させる側”に回り、

学園を出るまでの物語。


世界を変えるのは、

まだ先。


だがその準備は、

もう始まっている。

 ――気づいたら、真っ白な空間に立っていた。


「はい次の方どうぞー」


 目の前にいるのは、白いローブを着た人影だった。顔はのっぺりしていて、性別も年齢もよく分からない。というか、よく見ると足元が床に接していない。浮いている。


(……あ、これ死んだな)


 状況を把握するよりも先に、妙に冷静な自分がいた。残業続きの平凡な社会人生活。通勤電車。コンビニ飯。特に未練もない人生だったからかもしれない。


「えーっと、名前……はもういいか。はい、転生ね」


「ちょ、待ってください」


 反射的に口を挟むと、ローブの人影――たぶん神だ――が、露骨に面倒くさそうな気配を出した。


「説明とか、ありますよね? 転生って何? 異世界? 能力とか選べる感じですか?」


「最近の人、質問多いなぁ……」


 神は空中で何かをめくる仕草をした。


「えーっと……異世界転生。世界名は……あー、長いから省略。剣と魔法あり。文明レベル中世寄り。はい、以上」


「いや雑すぎません?」


「大丈夫大丈夫。あとは自動で付与されるから」


「自動で?」


 その言葉が気になった瞬間、足元が消えた。


「じゃ、良い転生ライフを〜」


「ちょっ――!」


 声を上げる暇もなく、意識が一気に引きずり落とされる。


 視界が暗転し、次の瞬間。


 ――ぎゃああああっ!


 自分のものとは思えない、甲高い泣き声が響いた。


(うるさっ!?)


 いや、正確には「自分が出している声」なのだが、制御が効かない。体も動かない。視界はぼやけ、天井らしきものが滲んで見えるだけだ。


(……まさか)


「元気な男の子ですよ!」


 聞こえてきた声で、現実を理解した。


(赤ん坊!?)


 次の瞬間、さらに絶望的な事実に気づく。


(しゃべれない!)


 脳内では普通に考え、ツッコミまで入れているのに、口から出るのは「うあー」「あー」だけ。手足も勝手にバタつくだけで、思うように動かない。


(いや無理だろこれ! 難易度設定どうなってんだ!)


 その時だった。


 視界の端に、見慣れないものが浮かび上がった。


 ――半透明の板。


 いや、板というより「画面」だ。スマホのUIに近いが、もっと淡く、現実に溶け込むように存在している。


(……パネル?)


 意識を向けた瞬間、文字がはっきりと読めるようになった。


存在状態:新規生成

肉体年齢:0歳

知性:想定外

運命:未登録

世界からの期待値:未測定

管理者コメント:処理保留



(管理者コメント!?)


 思わず笑いそうになったが、赤ん坊なので笑顔にしかならない。


(いやいや、処理保留って何だよ。こっちは必死なんだけど)


 その瞬間、パネルの端に小さな注釈が追加された。


※一部項目は編集可能です(権限:ローカル)



(編集……?)


 試しに「知性」の項目に意識を集中させる。


知性:想定外

備考:本来付与されない値です



(付与されないって……そりゃそうだろ。赤ん坊だぞ)


 さらに見ていると、項目の文字が、まるで文章編集ソフトのように淡く揺らいだ。


(……まさか)


 恐る恐る、思考で「こうなったらいいな」と念じる。


 すると。


知性:想定外

→ 知性:想定外(観測対象外につき要経過観察)



(書き換わった!?)


 数値が上がったわけでも、派手なエフェクトが出たわけでもない。ただ、文章が少し変わっただけだ。


 だが、不思議と分かる。


(これ……世界の認識そのものだ)


 その瞬間、遠くで誰かが慌てる気配を感じた。


 ――神界。


「え? 今、何か書き換わらなかった?」


「ログ見て! 知性の備考欄!」


「え、赤ん坊だよね!?」


 そんなやり取りが行われていることなど、主人公は知らない。


(とりあえず……)


 視界に映る、こちらを覗き込む男女――おそらくこの世界の両親――を見て、主人公は思った。


(生き延びるしかないな)


 泣き声を止め、赤ん坊らしく微笑む。


 その裏で、半透明のパネルが静かに浮かび続けていた。


運命:未登録

備考:未確定要素が多すぎます



 主人公は、心の中で小さくつぶやく。


(大丈夫。仕様書が読めるなら、どうとでもなる)


 こうして――

 世界の仕様を読める赤ん坊の人生が、静かに始まった。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


お正月の間は、溜めていた原稿をどんどん更新していきます。


ブックマークをして、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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