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76:繋がらない電話

■その人、誰?

『この電話は現在使われてないか、電波の届かない……』

 ピッ


 朝飯を済ませた後、心優に誘われてハンバーガーショップに来ていた。

 美帆さんに何度も電話をかけているが……


「だめだ、繋がらない」


 これで何回目だろう。

 朝から十回はかけているはずだ。


 美帆さん、あの後どうなったんだろう。

 気になって仕方がない。


「ねぇ、その美帆さんて人、たっくんとどういう関係?」

 正面の席に座っている心優が、頬杖をついて右手に持ったフライドポテトを上下に振りながら、不機嫌そうに訊いてきた。


「前のバイトの知り合い。いまのバイトに誘ってくれたのも美帆さんだよ」

「ふぅん、仲いいんだね。私に電話なんて滅多にしないのに」


「いや、お前毎晩うちに来てるだろ」

「そうだけどさぁ」

 心優は口を尖らせる。


「それに、昨晩の事件に巻き込まれていないか気になって」

「その美帆さんってどんな人?」


「お前が姉ちゃんと一緒にランチしに来たとき、担当していたウエイトレスさんだよ」

「えっ、あの超絶美人のお姉さん?」


「たぶん、その人であってると思う」

 こいつも覚えてたか。


「あのお姉さん、事件に巻き込まれているかもしれないの?」

「そこまではちょっと……」 


 どっちかと言うと当事者側だけどな。

 本人は覚えてないだろうけど。


 あの後どうなったかを知りたい。

 ダミアンは「パズスはしばらく大人しくしてる」って言ってたが。

 あぁっ、美帆さんを助けるにはどうすればいいんだろう。


「心配だね、その美帆さんって人」

 心優はさっきまでとは違って、少し眉を寄せて、ほんとに心配そうな顔をしている。


「まぁな」


「仲良かったんでしょ?」

「どうだろう、仲は悪くはなかったと思うけど」


「そっかぁ。あのさ、本人に連絡取れないんだったら、バイト先に訊いてみたら? もしかしたら、美帆さんバイトに行ってるかもしれないよ?」


 そうだな、その手があった。

 すぐにバイト先に電話をかける。

 数コールの後、店長が出た。


「はい、はい、そうですか。わかりました。ありがとうございます」

 通話を切ると、心優がじっとおれを見ていた。


「で? どうだったの?」

「バイトには行ってたらしいんだけど…… 警察に連れて行かれたって」


「えっ、なんで!?」

「そこまでは、店長もわからないって言ってた」


 無事だった事がわかって安心したが、どうして美帆さんが警察に連れて行かれたんだろう。

 管理会社の男が何か喋ったのか?

 でも、それならおれのところにも警察が来るはずじゃ……


「あのさ、たっくん。美帆さんはスマホを壊しちゃったんでしょ? スマホに登録してる電話番号なんて憶えていないと思うんだけど」

「あ……」 


「だから、修理したらきっと返事してくれるよ。元気だして」

「……そうだな」


 おれが落ち込んでると思ったのか、心優が優しく励ましてくれた。

 心優の言う通り、美帆さんの連絡を待つしかないか。

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