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75:パジャマの来訪者

◇三十六日目【7月15日(月)】海の日

■朝からラッキースケベ


「琢磨、ご飯よ」

 二階から駆け下りダイニングに入ると、姉ちゃんはテレビを見てため息をついていた。


 パジャマ姿のおれと違って、姉ちゃんは既に着替えている。

 こういうところは見習いたいが、容姿と同じく、性格も姉ちゃんには敵う気がしない。


ーー こちら、事件現場のピアモールから中継です。昨晩、西港市のショッピングモール、ピアモールの空き店舗で、行方不明になっていた20代の男性と10代の女性が監禁されていたのを、隣接するファミリーレストランの店長が発見し、警察に通報しました。


ーー 被害者の二人は、現在市民病院で治療を受けていますが、意識不明の重体とのことです。警察は、監禁事件として捜査本部を設置し、経緯を詳しく調べています。


ーー 事件の重要参考人として、ショッピングモールの管理会社の男性から事情を聴いていますが、現時点で事件の詳細は明らかになっていません。


ーー さらに、こちらのショッピングモールの屋上駐車場で、明け方に大きな炎が上がったという情報もあり、現場は騒然としています。警察は、監禁事件との関連性も含め、放火事件の可能性も視野に入れ捜査を進めています。


「いただきます」


 朝食は目玉焼きとソーセージ、それにサラダとトースト。

 しかもコーヒー付き。


 おれはトーストにかぶりつきながら、テレビを眺める。

 報道は昨夜の事件一色だった。


「このショッピングモールって、琢磨のバイト先でしょう?」

「うん」


「昨日、帰ってくるのが遅かったけど、大丈夫だったの?」

「大丈夫」


 ……でもなかったけど。

 あの後、パズスはどうなったんだろう。美帆さんは無事かな。


 朝になって何度も連絡したけど、返信はない。

 スマホの画面が壊れてるせいで、電話に出ることもできないんだろう。

 当然、メッセージなんて見られるはずもなく。


「バイト、続けるの?」

 姉ちゃんは心配そうだが、たとえ僅かでもお金を稼がなくっちゃ生活できない。


「もう警察が来て調べてるんだから、問題ないよ」


 今日は海の日で学校は休みだ。

 バイトいれとけばよかったと後悔したが、姉ちゃんの様子を見ていると、今日は休んで正解だったかなと思い直す。

 顎に手を当てて考え込んでいる姉ちゃんの姿を見ていると、玄関のチャイムが鳴った。


「誰だろう、こんな朝早くから」

 面倒くさいが、仕方なくインターホンのモニターを確認する。


 ……うっ。


 モニター画面いっぱいに、人の目と鼻がアップで映っていた。


「心優が来てる」

 振り返ると、姉ちゃんは苦笑いしながら小さく頷いた。

「心配してるんだよ。早く玄関、開けてあげて」 

 玄関を開けると、パジャマ姿の心優が飛び込んできた。


「たっくん、大丈夫だった!?」


 え~。


 唐突な距離の詰め方にたじろぐが、それよりも……

 そのパジャマ、サイズがちょっと大きくないか?


 ダイニングから顔を出した姉ちゃんが、目を丸くした。


「みゅうちゃん、どうしたのその恰好」

「その恰好って?」


 しばらく玄関で心優を見下ろしていたが、姉ちゃんの声に我に返り、おれは慌てて心優に背を向けてしゃがみ込んだ。


√ ラッキースケベというやつか。

 階段を下りてきたダミアンが、つまらないことを言ってきた。


 ……たしかに、見ちゃったけど。


「みゅうちゃん、これ羽織って」

 姉ちゃんが部屋から長めのナイトカーディガンを持ってきて、心優の肩にそっとかけた。


「うっ、うん」

 心優の子供っぽいところは、高校生になってもなおらない。


「琢磨、もういいわよ」

 おれはしゃがんだまま、そっと振り向く。


「どうしたんだ? そんなに慌てて」

 心優は少し顔を赤らめながら俯いている。


「さっきテレビ見てたら、たっくんのバイト先で大変な事件があったって言ってたから、その心配になって」

 さっきまでのテンションとは違い、声がトーンダウンしているのが気になる。


「あぁ、大丈夫、ありがとう」


 心配してくれるのは嬉しいが、そんな無防備な格好でうちに来るのはやめてほしい。

 近所の人に見られてないだろうな?

 ちょっと心配になってきた。


「みゅうちゃん、コーヒーでも飲んでいく?」

「うん、ななちゃんありがとう」

 心優は素直に、姉ちゃんと一緒にダイニングへ向かっていく。


「琢磨もご飯食べなさい」

「姉ちゃんごめん、お腹痛いからもう少しこのままでいる」


 そう言うと、二人は微妙な顔でおれを見て、そのままダイニングに入っていった。


√ 興奮冷めやらぬ、だな。

「う、る、さ、い」


√ ちなみに心優も貴様のものをしっかり見ていたぞ。

「あぁっ、もぉっ、そういう情報は聞きたくない!」


 その後、おれが飯を食ってる間、心優は姉ちゃんに「女の子がパジャマで外をウロウロしちゃダメ!」と説教されていた。

 おれが朝食を食べているのを見て、心優が顔を真っ赤にしていたのが気になったが。


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