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34:郷原の主人

■ダルク《POV:郷原》


 タイヤ倉庫の管理室


 郷原は、事務椅子にふんぞり返った田川――

 いや、今は彼の姿を借りたダルクの前に立ち、先ほどの出来事を報告していた。

 立ち位置はまるで部下と上司だ。


「なんだぁ、今ダミアンって言ったか?」

 ダルクが右手で机を勢いよく叩き、ガタリと立ち上がる。


(なにをそんなに驚いてるんだ、このおっさん……)


「おい、確かにダミアンって言ったんだな!?」


「はい、一緒にいた奴が、その不気味な黒猫をそう呼びました」


 郷原は、無意識のうちに言葉を丁寧にしていた。


 下僕になった以上、ダルクには逆らえない。

 そもそも、人外の力を持つこの悪魔に歯向かうなど愚の骨頂だ。


「その黒猫に、何か変わったとこはなかったか? どんな小さなことでもいい、言ってみろ!」


 郷原は少し考え、思い出したままに口を開く。


「二本足で歩く、不気味な猫でした。鋭い爪が…… 二十センチくらい伸びて」


「うむ…それで? 他に気づいたことはあるか?」

 ダルクは鋭い視線を投げかける。


「一緒にいた奴には、猫の言葉が分かるようでした。俺には何も聞こえなかったんですけど」


「そいつは下僕だったのか?」


「それは…… 分かりません」


 ダルクの表情が僅かに曇る。

 黒猫が本当に自分が思っている相手――

 ダミアンなのか、確信を持てないようだ。


「そいつに他の特徴は? 何でもいい、思い出せ」

 促され、さっきの恐怖が脳裏に蘇る。


 ダルクに下僕にされたときも恐ろしかったが、あの黒猫に殺されかけたときは、それとは比較にならない恐怖を感じた。


「目が……」

「目がどうしたってんだ?」


「金色に光っていました」


 郷原の言葉に一瞬沈黙したが、突如として顔を歪め、腹の底から笑い出した。


「くくくっ、がぁははははは!!」


(大丈夫か、この悪魔……)


「そうかい、そうかい…ってことはよぉ、あいつ、猫に憑いちまったってわけか! こりゃあ笑えるぜ!」

 ダルクの笑いが止まらない。


 郷原は恐る恐る尋ねる。


「金色の目のなにがおかしいんだ―― ですか?」


「金色の目ってのはな…… G-eyeゴールデン・アイって呼ばれてるんだ。とんでもねぇ魔力の持ち主の証だぜ! G-eyeを持つ者は三人、その一人が、あいつだ!」


 そう言って、ダルクは満足そうに椅子にドサッと腰を下ろした。


「ところでよ…… その黒猫の住処ってのは、分かってんのか?」


(言いたくねぇ…… だが、逆らえねぇ……)


「神木という家で飼われています」


 郷原が渋々答えると――


「ほぉ〜、神木って家か…… そんじゃあ、そこを徹底的に調べてこい! 家族でも仕事でも、何でもいい! どんな些細なことでも報告しろよ、いいな!」


「はい、ですが」


「なんだ」


 不機嫌そうな眼差しが突き刺さる。


(くっそ、偉そうに。昼間の気の抜けたおっさんの態度とは大違いだな。実際、別人格なんだろうけどよぉ)


「あの黒猫は、俺じゃ相手になりません。なんていうか、物凄い圧力のようなものを感じました。あんた―― いえ、あなたから感じる圧力の何倍も……」


「へぇ、お前、魔力を感じ取れるってのか?」


「はぁ、あれが魔力なんですか」


(あれが魔力ってんなら、あの黒猫はこいつの何倍もの魔力を持ってるってことだ。相当ヤバイ相手だぜ)


「お前…… どのくらい近づきゃ、わしの魔力を感じるってんだ? 言ってみろ!」


「1、2メートルくらいです。それ以上離れると分かりません」


「ふん、ヴァンパイアに毛が生えた程の感度だな。その距離じゃぁ使いものにはならん。ほかに何か使える力はねぇのか?」


 魔力を感知するのは特殊な能力なのか?

 郷原は少し考えた。


「そういえば、さっき黒猫から逃げるとき、一瞬で十メートル程移動できました」


「ほぉ…… ってことは、お前、瞬間移動ができるってことか? 本当か?」


「はい、気が付いたら移動していました」


(あのときは逃げることだけ考えていたが、気づいたらバリケードに突っ込んでいた……)


「そうか…… なら、その能力をもっと鍛えておけ。ダミアンに捕まったら、後悔じゃ済まねぇぞ!」


「……はい」


「今日はここまでだ。帰っていいぞ」

「はい、失礼します」


 郷原は軽く頭を下げ、管理室を出た。

 背後で、ダルクの笑い声がまだ響いていた。


(……冗談じゃねぇ。あの化け猫にまた会ったら、命がいくつあっても足りねぇぜ)

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