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3話

 翌日、朝の支度をデーンに手伝ってもらい朝食を食べたら、神殿長室に案内されて今は神殿長室のソファに俺と神殿長だけ座ってて、デーン達は俺の後ろに控えている。

「神子様、昨日はよく寝れましたか?」

「うん、よく寝れたよ。あ、俺の事、神子様じゃなくてトールって呼んでほしいな」

「それはよかったです。……ではトール様と呼ばせていただきますね。それでは、トール様は神子がどういったものとかはお分かりに?」

 ネイザンの言葉に俺は満足そうに頷いた、そしたら神子の事を聞かれたのでデル様に言われた事を伝えた。

 俺が伝えた事は。

 神子として明確に何かしなければならない事はないって事と、この神殿で心安らかに過ごしてデル様と話をすればいい事、を話した。

「そうですか創造神様から望まれている事ですので従来の神子としての役割をしていただかなくても大丈夫です。それではトール様の事を鑑定水晶玉で鑑定してもよろしいですか? これは水晶玉に触れた人の鑑定結果を見れるものです。害はありません、どうでしょうか?」

「勿論いいよ。この水晶玉に手を触れたらいいの?」

 ネイザンが恭しく鑑定水晶玉だろう物をテーブルの上に載せた。見られる事は嫌ではないから首を縦に振りどうすればいいのかと問うと、水晶玉に手を置くだけでいいらしいので俺は水晶玉に手を置いた。すると空中に画面が現れた。

 ――――

 【名前】トール・スメラギ

 【年齢】10(30)

 【体力】1500/1500

 【魔力】∞

 【魔法】―

 【スキル】創造

 【称号】創造神バネロッサデルフィの愛し子 魔の神マラべセロの加護 春と再生の女神ソーフィファーリアの加護←New 夏と情熱の神ソルトバフィルトの加護←New 秋と豊穣の女神リズフィリータの加護←New 冬と裁きの神ヤーデフィリットの加護←New 芸術の女神ミィリルイヤーの加護←New 美と愛の女神アールガナの加護←New 匠の女神サムカチィダの加護←New 知恵の神コシュケビの加護←New 医の神ヌマイラシィの加護←New 武の神ユーゲルピィの加護←New

 ――――

「創造スキルですと!? 素晴らしい! なかなかいないレアスキルですよ。おや? 創造神様以外に11神様にも加護をいただいてますね。一度にこんなにも神様方に愛されている方は珍しいですよ」

 そう言ってネイザンは祈りを捧げた。

 デル様とセロ様以外の11神様に加護をもらえてると聞いて俺は吃驚した、デル様とセロ様は分かっていたけど他にも!? よくよく見てみたら本当だった。春から冬の神様達はネイザン曰く姉弟妹(きょうだい)だそうだ、他の神様方は手に職を持ったりする人がもらうものだそうだ。

 なんで加護をくれたのだろうか?

 そんな事を考えていたらセロ様がテーブルの横にいて吃驚した。みんなには見えていないみたいだ。

「神子よ、驚かせてすまない。皆の加護がついてるのを疑問に思っていたから説明に来た。そのまま聞いてくれ。姉弟妹神達や他の神々達は創造スキル持ちって事と清らかさや優しさ、神子としての才能を持っていて、創造神様の愛し子って事で興味持っちゃって、自分達も加護与えたいって創造神様に直談判してつけたんだ、だからあまり気にしないでねじゃあ(やつがれ)は行く」

 セロ様はそう言ったら来た時と同じで急に消えた。なんだったんだろうか? って言うか他の神様達は俺に興味持ってくれたんだね、それで加護もらえちゃうとかありがたい心の中で拝んどこ。ありがたや〜。

 セロ様が一方的に話し終わったあとに、祈りを捧げ終わったネイザンは口を開いた。

「トール様には好きな時に神殿の事をしていただいてもらって構いませんので、好きな時に好きな事ができる様に神殿の一日の流れを言っておきますね。お祈りは朝昼晩と3回、日中は民の神訴(しんそ)を聞き答えます。祭りや建国記念日には出来れば出席願います。トール様がもし他にも何かしたい事があるのなら後々でもいいのでお教え願えますか?」

 俺にしてほしい事は朝昼晩の食事の前のお祈りと神訴は多分懺悔みたいな事だろう。聞いたらそうだった。そして祭りや建国記念日の時に神子として何かしらをやってほしいって事なんだろう。俺は出来れば全部やりたいと思ってる。ただ居るだけだとただの穀潰しだしな。俺はやりたいと言ったら喜ばれた。それに俺にも出来る事って何かないかな? 疑問をネイザンに話したら神殿でやっている事を教えてくれた。孤児院だったり治療院だったりだ。俺は治療院って聞いて怪我や病気を治す魔法を作ればいいと思いついた。一応聞いてみよう。

「治療院って事は怪我や病気を治す様な魔法があるの?」

「ありますよ。治療院に居る人でも治す力の差はありますが、その魔法は聖魔法です」

 聖魔法か……創造スキルで作れないかな? よし、まずはステータスを出して聖魔法が使えます様にと願うすると【魔法】の欄に聖魔法とあった。俺は直ぐにネイザンに教えた。

「創造スキルで聖魔法作ってみたら出来た。これで俺も怪我や病気の人を治せる?」

「勿論ですよ、それが本当ならとても助かります。早速試してみますか? トラディスいいかな」

 ネイザンは試してみようと言ってトラディスを呼んだ。なぜトラディス? そう思ってたらトラディスは短剣で自分の指先を少し切りつけた。俺はそれを見て吃驚してしまった。だが直ぐに我に返り慌ててトラディスの手を取りこう口にした。

『治って』

 こちらの世界でなんて口にしたら治るのか分からなくて日本語で言ったけど発動したから大丈夫だった。でも不思議な事に俺の周りを金と銀の光がクルクルと回って消えた。大丈夫かと思って怪我の所を見たらなんともなかった。周りを見たら、トラディスは俺に手を取られていて祈るポーズは取れなかったけど少し頭を下げて、取られてない方の手を胸に当て祈っていた、というか感動して打ち震えていた。なぜに? 不思議に思ってネイザンの方に目を向けるとこちらも両手を組み祈っていた。デーンとデービットはどうだろうかと見たら片膝をついて両手を組み祈っていた。デーンなんかは少し涙も流れてる。どういう事? 祈る要素どこにあったの?

「み、みんなどうしたの?」

 俺がそう言うとネイザンが祈るポーズをやめて顔を上げた。

 穏やかだったその顔には、深い敬意と心の底から感動している様子が滲み出ている。

「とても素晴らしいものを見させていただきました。……これはただの治療ではありません。あれは、奇跡と言っても過言ではありません」

「奇跡?」

 首を傾げた俺にネイザンはゆっくりと言葉を続けた。

「はい。聖魔法でも、あの様な光を伴う事はまずありません……何より、あんなに穢れのない癒しを見たのは初めてです。普通の聖魔法は、例え成功しても多少の痛みが残ったり、傷跡が薄く残るものですが、見た所今の癒しは完全でした。……しかも、あの光は神聖そのもの。もはや神の御業に近いです」

 トラディスも頷きながら答える。

「正直、私もこんな素晴らしい治療は見た事がありません。聖魔法を扱う人でこれ程の治療を行える人はそういないと思います」

「そ、そんなに凄いの……?」

 自分がした事に自覚がなかったから思わず聞き返してしまった。

 だって、ただ"治ってほしい"って願っただけだったのに……。

「はい。……だから、きっと救われる人達が沢山います」

 ネイザンがそう言った時、俺の中で一つの思いが芽生えた。

 ――それなら、俺も……力になりたいな。

「ねぇ、ネイザン。もしよかったら、俺……明日、治療院に行ってもいいかな? 怪我や病気の人達を癒す手伝いをしてみたいんだ」

 そう申し出ると、ネイザンの顔がパァッと明るくなった。デーン達も嬉しそうに微笑んでいる。

「勿論です。それは本当にありがたいお申し出です。治療院の者達もきっと喜びます!」

 ネイザンは勢い込んで立ち上がりそう言った。

「ですが、慣れない場所でもあるので、トラディス達をお連れください。きっとトール様の役に立ちますよ」

「うん、そうするよ。ありがとう」

 俺も自然と笑顔になる。

 なんだか、久しぶりに自分の力で誰かの役に立てるのが、素直に嬉しかった。

「それでは、明朝、朝食後に治療院に向かってください。デーン達が場所を知っていますので大丈夫ですよ。移動も馬車ですのでご安心ください。治療院までは馬車で10分程です。トール様が明日治療院に行く事は前もって伝えておきますから安心してください」

「分かった。ありがとう、ネイザン」

 俺がそう答えると、ネイザンも嬉しそうに胸に手を当てた。

 こうして、翌日、治療院へ行く事が決まった。

 窓の外を見ると、温かい光が神殿の白い壁を照らしている。

 この世界で、俺に出来る事――少しずつ、見つかっていく気がした。

 その日の午後、俺は少し散歩に出ることにした。神殿の周りは広大な庭園が広がっていて、花々が色とりどりに咲き誇っている。普段の生活では見逃しがちな、小さな幸せがそこかしこに隠れている気がした。花の香りに包まれながら歩いていると、ふと、これから自分がどんな役割を果たすべきなのか、改めて考えさせられた。治療院で手伝うことは一つの方法だけど、それ以外にも、神殿の中でできることがあるかもしれない。

 ふと、隣で歩いていたデーンが声をかけてきた。

「トール様、何かお悩みですか?」

 と、その穏やかな声に振り返ると、デーンの目には心配の色が浮かんでいた。

 俺は軽く笑って首を振った。

「いや、ただ、これからのことを考えてただけだよ。でも、大丈夫。少しずつ、みんなと協力していけばきっと道は見えてくるから」

 デーンは少しだけ安心した表情を見せて、静かに頷いた。

「はい、わたし達はいつでもお力になります。」

 その言葉に、心が温かくなるのを感じた。確かに、これからの道のりは容易ではないかもしれない。でも、俺は一人じゃない。仲間たちと共に歩んでいける。それが何よりの支えになるだろう。

 その後、夕日が西の空を染める頃、神殿に戻った俺は、明日の治療院訪問に向けて準備を整えながら、心の中で決意を固めていた。どんな困難が待ち受けていようとも、少しずつでも自分にできることを積み重ねていく。そのために、今は一歩ずつ前に進んでいこう。そう俺は心に留めた。

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