18話
翌日。1、2時間目は選択授業の魔法生物学だ。場所は講義室での講義を聞く事になった。
「……注目、魔法生物学の担当……シェルヴィン・ギルクス、1時間目は……あー、魔法生物の分類、生態、魔力との関係を簡単に学ぶ……保護対象、飼育許可などの実用的な知識も学ぶ」
先生がそう話したあと、プリントをもらいそこに学んだ事の要点、気づいた事、疑問点などを書いて提出との事。
「分類から……陸生型は主に森林、草原、山岳などに生息している、姿は主に獣型、昆虫型などだ。……水生型は主に湖、川、海などの水辺に生息している、姿は主に魚型、両生型などだ。……飛行型は――」
黒板に魔法生物の姿を例で描いていて分かりやすい。俺はノートに書いてあとでプリントに書く様にしようと思う。
「次は生態だ……単独行動型は縄張り意識が強く、繁殖期のみ接触。……群れ行動型は常に複数で暮らし、役割分担がある。……寄生・共生型は――。次は魔力との関係だ……魔力蓄積型は周囲の魔力を吸収し、攻撃や防御に使う。……魔力変換型は魔力を熱、光、雷など別のエネルギーに変える。……魔力発光型は――。……そして保護対象は絶滅危惧種、神聖指定種、聖地指定種、希少魔力種、環境維持種、文化財的価値を持つ種の大きく6つがある――。……これだけは知っておいて欲しいことは、接触時の安全手順、これは近づき方、魔力の与え方、触ってはいけない部位などだ、例えば角や尾などを刺激すると威嚇行動を取るので触らないなど――。……餌の与え方と量、これは過剰給餌で魔力暴走が起こる種、逆に空腹で凶暴化する種などだ――。……繁殖期・換毛期の対応、これは気性が荒くなる時期、魔力の色や匂いが変わる季節――。……魔法生物を飼う場合は飼育許可は必ず取らなければならない、その際は魔法生物局で許可証を発行してもらう。……許可証をもらうのに最高で1ヶ月かかる場合があるから余裕を持って行くといい」
こんな感じで座学は終わった。次の時間まで休憩と移動を促され、俺は魔法生物厩舎まで行く。
「……注目、この時間からは実際に魔法生物と触れ合い、観察し、その結果を各々のプリントに書き込む事。……5人一と組になるようにこちらで組んだ、呼ばれた者は前に来る様に。……1組目――、2組目――マテレオ・シュトルム――、3組目――、4組目――トール・スメラギ、お前達はマリスティングだ、5組目――、6組目――マルセル――、7組目――、8組目――、9組目――、10組目――アリエム・コスモス――。……呼ばれてない生徒は……いないな。……各自、観察開始」
4組目で呼ばれたから前に行って、上級生にちょっと大きめな水槽を持ってもらって、少し離れた机に水槽を下ろす。中を覗くと大人の拳くらいのクラゲが5匹いる。開始の合図があったから最初は話し合ってこれからやる事を決める。
「まずはこのまま何もせずに観察するのがいいと思うんだけどどうかな?」
その言葉に俺達は頷いて同意を示した。それから色々観察と魔力を与えてみた結果がこちら。
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記録日 9月10日 水曜日
種族名 マリスティング
個体識別 水色の体色
給餌内容 魚、葉野菜、乾燥果物、ペレットを与えてみたけど食べなかった
体調 優雅に泳いでる、特に体調が悪い事はない様に思う
行動の様子 水槽に近づいたり離れたりしても何も反応しない
魔力反応 魔力を指先に出したものを近づけたり離したりすると近づいてくる。与えると形が変わった。形は扁平で半口端は尖った円錐形になった。
異常・特記事項 魔力を与える人によって様々な形に変化する
感想 食事は全く取らないのに元気。魔力で形が変わるの様子は見ていて飽きない。反応は穏やかで危険性はなさそうで安心。
――――
授業時間があと僅かの為に、観察は一旦終わりにして、俺はプリントを仕上げた。プリントを提出して授業は終了。
4時間目は保健体育だ。今日は体育らしいから運動着を着て体育館Ⅰに行く。
「今日はマジカルボールをやるぞ。ルール知らない奴がいるだろうから説明するな。フィールドはこの線の内側がそうだ、形は長方形だから分かりやすいだろ? ボールはこいつだ、軽い魔力を込めると動きが変化する特殊ボールだ、例えば風魔法を込めると急加速したりだ。1チーム5人だ。制限時間は今回は10分、得点が多い方の勝ちだ。得点方法は相手ゴールにボールを入れると1点、魔力で光った状態で入れると2点だ。魔法の使用ルールは魔法で直接相手を攻撃するのは反則、ボールを動かす、軌道を変える、一瞬止めるなどは自由。防御魔法でシュートを防ぐのはあり。飛行魔法や浮遊魔法は人には不可だ。じゃあチームを作れ」
チームを作る時にすぐにいつものメンバーと背の高い子が加わって5人になった。そして試合をする事になった。
笛の音と同時に、宙を漂っていた青白い魔法球が弾かれたように動き出す。
「トール様、右!」
「分かった!」
セインの声に反応し、俺は素早く横へステップ。指先から風魔力を放ち、ボールの軌道をこちらに引き寄せる。
「ナイス!」
ロヴェリーがすぐに魔力を重ね、ボールを鋭く相手のコートへ押し出した。
相手の防御魔法がボールの前に展開される。
「エルネス様、上!」
「了解です!」
エルネスが火花のような光球を放ち、防御壁を一瞬だけ揺らす。その隙に背の高いチームメンバーがボールを急上昇させる。
「トール様、決めてください!」
俺は走って位置を合わせ、風魔力で自分の周囲に渦を作る。その流れに乗せるようにボールへ魔力を流し込み――形を光の矢に変化させてゴールへと射出。
シュウッ! と音を立ててボールが枠を抜け、ゴールが輝く。
「やった!」
歓声が上がり、チームメイトが手を振ったり親指を立てたりして喜びを示す。
その後もお互いに点を取り合い、試合は5対3で俺達の勝ち。授業が終わり、みんな汗と笑顔で教室へ戻っていった。
お昼休み、大食堂にて。席に着いてタッチパネルで注文をして、暫くしたら来た。セインが一口食べてから口を開いた。
「トール様、体育の時楽しそうだったね。ああいう授業、前からやってたんですか?」
「いや、魔法を使って運動するのは初めてだったよ。こっちに来る前は、魔法自体なかったし」
「へぇ……じゃあ、向こうの体育ってどんなのなんですか?」
ロヴェリーが興味津々に身を乗り出す。
「走ったり跳んだり、道具を使った競技をしたり。魔法がない分、全部自分の身体でやるんだ」
「魔導具はないんですか?」
エルネスが首を傾げながらそう聞いてくる。
「魔力で動くものは他のエネルギーで動くよ電気って言うの、でも体育で電気を使うものはないかな? 体力作りで使うくらいだよ」
セイン達は俺の話を聞いてふんふんと興味深そうに頷いていた。
放課後、魔法生物厩舎でドドリの記録を取り終わって、他にどんな魔法生物がいるか見ていたら、水槽内にいる魔法生物を見ている部員達がいた。
「トール様、こっちの個体の魔力濃度を測ってみませんか?」
「はい……!」
道具を手に取ったところで、隣で作業していた上級生が声をかけてきた。
「そういえば、トール様の世界にはどんな生き物がいるんですか?」
「魔法生物とか魔法がない世界なのでただの動物や昆虫などがいるね、馬とか鳥、犬とか猫、蝉やカブトムシもいるよ」
「名称は似てるけど、姿はこっちのとは違うんですか?」
「色合いは違うかな? 見た目は似てたりするよ」
そんなやり取りに、周りの部員達も耳を傾ける。
「……面白いな。……生き物だけじゃなく、文化全般をみんなに紹介してはどうだ?」
顧問のシェルヴィン先生が、腕を組んで怠そうにしながら笑った。
「……交流会みたいな活動を部にすれば、他学年とも知識を共有できる。……顧問は俺が引き受けよう」
不意の提案に、俺は目を瞬かせた。
「俺が部を作るって事ですか?」
「……ああ、必要なら申請書類も手伝うぞ」
部員達が面白そうに頷く。
「じゃあ……やってみようかな」




