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17話

 日は過ぎて月曜日。ついに本格的な授業が始まる日だ。

 朝の空気は少しだけひんやりしていて、制服の襟元を指で正しながら俺は教室へと向かった。

 それから授業が始まった1時間目は国語だ。

 教室の黒板には、筆記体で“今日の題”が魔法で浮かんでいた。先生は銀縁の眼鏡をかけた、柔らかい物腰の中年男性。声が落ち着いていて話を聞いているだけでも少し眠くなりそうだ。

「さて、本日は“道ゆく光”の短文、これを読み解いて感想を書いてください」

 国語の授業では、読み書きの基本だけでなく、詩や物語を読み解くなどをやる。今日は導入として、短文の物語を読み解いて感想を書かされる事になった。

 机の上に並ぶ万年筆とインク瓶が静かに光を反射している。エルネスとロヴェリーは集中して短文を読み込んでいる。セインは「んっ、これ比喩が難しいな……」と小声で呟きながら唸っていた。

 そんなこんなで1時間目は終わった。2時間目は選択授業の薬草学で連続授業である。

 薬草学は、白衣のようなローブを羽織って校舎の外にある植物園Ⅰの中の温室の前に集合だった。屋根は透明な魔法ガラスで、陽の光が柔らかく差し込んでいる。

 先生は見た目にも分かりやすいほどの“研究者肌”といった風貌で、白衣のようなローブを着ていた。ポケットにはドライハーブの束と小さな瓶が何本も入っていて、歩くたびにカチャカチャと鳴る。

「薬草は見た目だけで判別してはなりません。香り、葉のつき方、根の形、魔力の反応……観察とは多角的であるべきです」

 授業では、実際に鉢植えの薬草に触れ、香りを嗅いだり、茎を切って断面の色を見るなどして記録する実習が行われた。

 ペアになたのは他クラスの人と上級生が2人の俺を加えた4人。

「これは……鎮静効果があるけど間違えると熱を引き起こすタイプだよ」

「詳しいですね」

「まぁ、この授業2年目だしね」

 俺はその会話に成程と頷いた。

「覚える事多そう……」

「覚えるまで難しいけど覚えたら色々と使い道があるから楽しいよ」

 先輩のその言葉に俺は気を引き締め直した。

 昼休みになって大食堂へ向かうと、すでに多くの生徒がいた。食堂内は明るく、窓から差し込む光が木のテーブルを柔らかく照らしている。

 俺達は4人席の空いているテーブルを見つけて腰を下ろした。テーブルにタッチパネルがあってそれで注文するみたいだ。それぞれ注文し終わってちょっと待ったらすぐにきた。

「……やっぱり授業が始まると、一気に“学校”って感じがするね」

 肉を一口大に切りながら俺が言うと、セインがうんと頷いた。

「国語は……まぁ、なんとか。でも短文の解釈って難しいですね。あれ、正解あるんでしょうか」

「“感じたことを書く”って言われても、どこまで自由でいいのか迷いましたよね」

「おれなんてチンプンカンプンだった」

 エルネスとロヴェリーが苦笑いまじりに言葉を重ね、セインは頭を掻きながら不可解だと顔を少し歪めた。

「でも、薬草学は面白かったよ。知らない植物ばっかりで、香りとかで覚えるって言うのが新鮮だった」

「薬草学、私も来年は取ってみようかな。使う機会多そうですし」

 おれの言葉にロヴェリーが興味ありげに答える。

「ところでさ、部活今日からじゃん、楽しみだよね」

 パンをちぎりながらセインが言うと、エルネスが少し身体を乗り出した。

「演劇部、今週から台本読みが始まるらしいですよ。初めてなんで緊張しますけど」

「魔法生物部は餌やり当番があるらしい……でも、触れるのは楽しみなんだ」

「侍従実務部は、週の前半が講義で後半が実技らしいです。実践重視なのはありがたいですね」

「マジカルテニス部は体力育成から始めるみたいだ、後は魔法も練習するみたいだ」

 みんなそれぞれ楽しみにしている事があって、その話をしているだけで自然と笑みが溢れる。

 それから放課後になった、待ち望んだ部活動が出来る。まだミープを連れて行っていいか分からなかったから、今日も寮で留守番だけど連れてきていいってなったら朝から一緒にいられると思う。

「では、新入部員から自己紹介してください」

「はい、僕はマテレオ・シュトルム、1-Cです。よろしくお願いします」

「ぼくはマルセルといいます、1-Dです。よろしくお願いします」

「俺はトール・スメラギ、1-Aです。よろしくお願いします」

 新入部員は俺を含め3人だった。

「ええ、よろしくお願いしますわ。わたくしは部長のアリエム・コスモスですわ。部活動で分からない事があったらわたくしや他の部員に聞いて下さな、よろしくて?」

 部長にそう聞かれて俺達はいい返事を返した。

「じゃあ、新入部員の皆さんには、今日は“観察とふれあい”を体験していただこうかしら。こちらにいらして」

 部長の後ろについて魔法生物がいる厩舎に移った。その中でも、小型の魔法生物がいるエリアにいる。鳥型、カエル型、リス型、ゼリー上のスライム型、様々な見たこともない魔法生物が多数いた。

「モグラのような姿の子はドリクシィのドドリ。リスのような姿の子はマロニスのマーロ。小鳥型の子はチルフルのルック。3人でこの子達の中でローテーションでもいいからお世話をお願いできるかしら」

 そう言われて俺達は顔を見合わせて頷き合い一歩前に出たら、マーロはマルセル、ドドリは俺、ルックはマテレオの近くに寄ってきたので、それならと俺達はそれぞれ来た子をお世話する事に決めた。

「決まったみたいね。それじゃあそれぞれの特徴とかを話しますから覚えてくださいませ。あと、飼育記録の書き方も教えますから覚えてくださいませ」

 ドリクシィは巣に気に入った物を隠す癖があるのだとか。樹洞っぽいのが巣なのだとか、中に物があったら回収して落とし物ボックスに入れて置いてほしいと言われたので覚えとこう。あとは水浴びが好きなので2日に1回の頻度で水浴びをさせてあげて欲しいとのこと。食べるものは葉野菜が好みで朝夕の2回ご飯をあげる事と言われた。

 それからお世話しつつ飼育記録に書き込む。

 ――――

 記録日 9月8日 月曜日

 担当者名 トール・スメラギ

 種族名 ドリクシィ

 個体識別 緑のスカーフ

 給餌内容 葉野菜(ほうれん草、白菜)・4枚ずつ・15時25分。ほうれん草は3枚、白菜は4枚食べた。

 体調 活発、元気

 行動の様子 懐いてるけど言う事はあまり聞かない。

 魔力反応 緑・少量・嬉しそうに舐める。相性◎。

 掃除・環境整備 樹洞の掃除、隠してあった物を回収、温度・湿度調整

 異常/特記事項 特になし

 担当者の感想 初日からお世話をするのはドキドキした。これからドドリともっと心を通わせたい。

 ――――

 っとこんな感じに書いた。頷かれたので大丈夫だったのだろう。

「飼育記録も書けたわね。それじゃあ、何か質問ある人はいるかしら? ……今は特にない感じかしら。……なら、終了時刻まで解散していいわ」

 そう言われて、マテレオとマルセルは散っていった。俺はと言うと、部長に用があったので話しかける。

「部長、ちょっと聞きたい事が……」

「何かしらトール様」

「えっと、創造神様に褒美で魔法生物の卵をもらって孵化させたんですけど、初心者だから分からないことも多く、ここの人達から意見が欲しくて、連れてきてもいいか聞こうと思いまして、連れてきてもいいですか? 植物系の魔法生物です」

「まあ、創造神様から賜ったのね。そう言う事なら大歓迎よ、連れて来てちょうだいな」

「じゃあ、明日連れて来ます」

 俺の言葉に部長は嬉しそうに頷く。

 翌日の朝。魔法生物厩舎にて。

「この子が昨日言ってた子?」

「はい。ミープって言います。種族名はタプィミ・ピャータです」

「そうなのね。色々気になるけど今日の放課後に他の人も交えて話し合いましょうね」

 部長と話したあと、ドドリのお世話をして授業が始まる前に教室に行った。

 1時間目の授業が始まった。授業内容は神聖だ。

「今日は神話の第1章、第1話――“創造神と4つの種族”を学びます。」

 俺は朗読が始まる前に、神聖聖書の白い皮装丁の表紙を、ひと撫でしてページを捲る。

 「……はじめに、世界には何もありませんでした。創造神バネロッサデルフィ様は、自らの手でこの星をお作りになりました。陸と海、山と森、川や湖、池をお作りになり、そこに四つの種族を創られました。エルフ、ドワーフ、獣人、そして人間です。神様は4つの種族を平等に、そして深く愛しておられました。――」

 この世界がどのようにして出来たのかとか、あまり知らなかったからこうして知れるのは嬉しいな。

 やっぱりデル様は愛情深い神様なんだなぁ。だから4種族達が争うのを見たくなくて、それぞれの地に“1000年“以上縛り付けてしまったんだね。“魔物“はそれぞれの種族が争い合う理由を作らせないために生み出したんだね、魔物も有効活用出来なかったら生きる意味がなくなっちゃうから、倒したら便利な物を取れるのかも。デル様は4種族を許す事が出来るようになったから、もう一度地上を訪れたんだね。だから大きい争いがなく、ちょっとした小競り合いくらいはある、って説明してくれたんだね。

「あなた方がもし、創造神であったなら、種族にどう接したいと思いますか? 他にも、もし――」

 プリントを配られて、先生の問いかけへの答えを、その紙に俺の思う答えを書いていく。

 プリントを返して1時間目は終了した。3、4時間目は選択授業の魔法学だった。場所は体育館Ⅰでするみたいだ。

「最初は座学からだと思ってたんですけど違いますね?」

「座学はここに入る時に家庭教師に教わってるからいらないとかなのでしょうか?」

「座学もここでしちゃうんじゃねぇの? 一々移動面倒くさいとか言うやつは一定数いるだろ?」

「なるほど、それもありますね」

「え、座学ってなに? 俺イメージしたら魔法使えるからみんなもそうなのかと思った……」

 そう言ったら俺の方を見て、セイン達は吃驚した顔を晒した。

 え? そんなに吃驚する? でも他の人と違うなら一般の考えを学ぶ事はいい事だよね。何かに活かせるかもしれないし!

「トール様は神子様だからな、他の人とは違うのかもな」

 セインのその言葉に、エルネスとロヴェリーがうんうん頷いてた。

「はい、授業を始めます! まずは点呼をします。――……。全員いますね、ではプリントを配りますので名前を記入しておいてください。今日の授業が終わったら集めますので!」

 プリントをもらい名前を早々に書いておく。

「今日は攻撃魔法、防御魔法、付与魔法、回復魔法のそれぞれ4種類の魔法の力の数字が可視化出来る魔導具で皆さんの力がどれほどか見せていただきます。向かって左から回復魔法可視化人形(ドール)、その隣が付与魔法可視化人形、その隣が防御魔法可視化水晶、そして最後が攻撃魔法可視化水晶になってます。プリントに結果を書いて提出してください。では、それぞれに得意なのからでも、不得意なのからでもいいので、それぞれに一列になって順番に測ってくださいね。最高点は100点ですからね! では、始め!」

 先生の指示に従ってそれぞれ並び始めたので、俺はやったことのある回復魔法からにする。回復魔法には誰も並んでいなかったから俺からみたいだ。

 よし、頑張るぞー!

 俺は人形の前にきて、どれくらいの怪我を想定したらいいだろうかと悩む。魔物の大氾濫の時の重傷者より下のちょっと重傷くらいでいいかな? よしどういう傷がどこにあってどれくらいなのかとかをイメージして治るように言葉を紡ぐ。

『傷よ治って』

 いつもと同じ金と銀の光がクルクルと回って暫くしたら消えた。すると人形からピロンと間抜けな音共に、数字が出てきたので見ると100点と出ていた。

 やった! 最高点! おっと、喜ぶ前にプリントに記入しとかないと。……んん? なんかやたら静かじゃない? まあ、いいや次は攻撃魔法にしようやったことあるしね!

 それから俺は3つの魔法をやってみたら回復魔法が100、攻撃魔法が87、防御魔法が93、付与魔法が79、だったなかなかに高得点じゃない?

 セイン達の点数が気になって、俺くらい採れてるかと思って見せてもらったら、大体が30から35くらいで得意だと言ってたのが40から45でエルネスだけ50のが1つあるだけだった。

 理由を聞いてみたら、10才で学校に入りたては30あればいい方で、40から50のものがあるのはかなり得意な魔法だと言うことらしい。俺の記録は言うなれば、専門家か魔法を使う職業に就いた人が取れるものらしい。

 だから最初に100点取った俺に驚いて、みんな静かだったみたい。

 それから放課後、魔法生物部に顔を出したら、顧問が来ていた。全部員を集めこれから俺のミープを紹介して、俺が卵をもらった日から今までの観察日記を見せることになってる。

「……注目、小生の事を知らない人もいるのでまずは……自己紹介から、小生はここの顧問の……シェルヴィン・ギルクス、よろしく今日は……あー、面倒だから部長ここからよろしく……」

「分かりましたわ。では……オホン。神子のトール様が創造神様から、魔法生物の卵を賜ったそうですわ。それはこの世に1対のみらしいので、どの様に育てていいのか皆さんの意見が欲しいとの事で、今分かってる範囲の観察日記を見ながら皆さんで意見を出し合いましょう。皆さん、よろしくて?」

 みんなそれぞれに同意の言葉を言って頷いてる。

「では、トール様、ミープと一緒にこちらにいらして。こちらには観察日記を置いて下さいまし」

 部長に言われた通りにミープを連れて前に出て、観察日記を言われた場所に置く。

 みんなはワクワクを抑えられないと言うように、ミープを見る者、観察日記を手に取って読み込む者、俺に質問をする者と別れた。

 ミープがちょっと戸惑っているのか、柑橘が香るけど、ほんの少しだけ苦い香りを纏っていた。だから安心する様に優しく撫でる。

 ミープを見た部員達は「思ったより愛嬌があるな」「珍しい色合いだ」と口々に感想を漏らした。観察日記を手に取った数人は「反応まで細かく書いてある」「香りの変化まで記録してるのはありがたい」と感心している。「食事はどんなものを?」といった質問や、「魔力に反応した時はどうなるの?」など考えもしなかった質問が飛び、俺は分かる範囲で答えていった。いつの間にか厩舎には穏やかな笑い声と好奇心が満ちていた。

 そんなこんなで部活の時間は過ぎた。明日はどんなことが待ってるかな?

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