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16話

 翌日、俺は昨日より少し遅れて教室に行くとまだ3人ほどしかいなかった。

「あ、セイン! おはよう」

「おはようございます、トール様」

 俺はセインのいる一番後ろの窓際に俺も座って話す。するとこちらをチラチラ見てくる2人の視線に気づく。

「……? えっと、何かな?」

「「……っは……!」」

 俺が声をかけると、2人の表情が一気に引き締まり、視線に緊張が混じった。

「……申し訳ございません。その……見たところ貴方は神子様ですね?」

「神子様も入学すると聞いて貴方がその神子様なのかと思ってみてしまいました」

「そっか、俺がその神子だよ。トール・スメラギっていうよ。トールって呼んでね。2人の名前は?」

「はい、トール様。私はロヴェリーと申します、よろしくお願いします」

「分かりました、トール様。わたしはエルネス・ミーディアンと言います」

 それから4人で話していたら先生が来たので居住まいを正した。

「おはようございまあああぁぁ、いて!」

 昨日と同じ所でコケたけど軽症っぽいから俺は立ち上がらなかった。

「さて、今日は選択科目を選んでもらいます。ではプリントを配りますので選んでくださいね。どんな授業をするのか分からない場合は聞いてください。周りと相談してもいいですからね」

 そう言ったらプリントを一人ひとりに魔法で渡していた。見てみると魔法、騎士、飛行術、種族研究、冒険基礎、侍従実務など多岐にわたる。もの凄く悩ましい……。

「どれを選んでいいか悩ましいですね……」

「俺も思った……、飛行術は絶対取りたいからそれ以外を選ぶのをすごく悩んでる」

「一つは決まってるんですね」

「私は侍従実務は取りますね」

 プリントには科目ごとに一言説明がついているからそれをみながら考える。魔法は基礎から高等魔法まで幅広く扱う、飛行術は箒などの扱い方からスポーツをしたりまで、冒険基礎は冒険に必要な事を1から学ぶ、古代語は始まりの1000年の時のものから3000前までの言葉を幅広く学ぶ――。

 俺は悩みに悩んで5つ選んだ。選んだのは飛行術、魔法、薬草、魔法生物、魔法薬にした。他にも受けてみたいものがあったけど来年また選べるみたいだから来年選ぼうと思う。

 セインは飛行術で一緒、魔法は4人一緒だった。

 プリントを回収してこう口を開く。

「はい、今日はこれでおしまいです。では各自で解散してください」

 その言葉にゾロゾロと教室を出ていく人と教室に残って雑談する人と別れた。

 俺は寮に戻るために教室から出て寮に戻った。

 翌日。部活を決める日が来た。部活動の見学をそのまま出来るように今日は午後からのガイダンスなのだとか。

 昨日と同じでプリントを配られてどこに何の部活が活動してるのかの説明書きがある。

 俺は4人で行動して部活を決めようと思う。部活動は新たに作ってもいいし兼部も出来るらしい。

 体育系の部活は入らない事にしてるから文化系のを中心に見ていく。

 まずはエルネスの気になってる演劇部を見に行った。

 演劇部の部室は、大講堂の裏にある小さなホールだった。入ると、奥にある舞台で照明魔法の練習が行われていて、ステージの上を淡い光が滑るように動いていた。音響の調整をしているらしい生徒が、魔導具に向かって何事かを唱えている。

「……わぁ、衣装をこんな間近で見れるなんて」

「おー、これは凄いね」

 エルネスが目を輝かせて舞台袖の衣装ラックに近づく。ドレスや鎧、旅人風のマントなどが綺麗に整頓されていた。

「これは“雪の花姫”の王子の衣装ですね、見覚えがあります」

「結構かっこいいな」

「エルネス様なら似合いそうですね」

「確かに、着させてもらったら?」

「えっ、そうですか……!? い、いえ、まだ入部もしてませんし……」

 照れて俯くけど、目は王子の衣装から離れない。

 その時、部長らしき上級生が近づいて来た。

「興味あるなら、仮入部してみるといいよ。演じるだけじゃなく、演出や脚本、衣装作りまで全部やるから、いろんな視点から関われるんだ」

「脚本も……凄いですね。わたし演劇部に入りたいです!」

「じゃあ、その紙に所属する部活名と名前を書いて僕に渡してくれる?」

「はい! 今すぐ書きます」

 エルネスは部活名と名前を書いた紙を部長に渡した。

「はい、ありがとう。1年生が来ていいのは来週の月曜日からだから、また来週の月曜日に会おうね」

「はい。では失礼しますね」

 次はロヴェリーの気になってる侍従実務部を見に行った。

 侍従実務部の部室は、校舎2階の静かな一角にあった。扉の前には“見学歓迎”と丁寧に書かれた立札があり、すでに数人の見学者が出入りしている。

 中に入ると、広めの室内はきちんと整頓せれていて、応接セットやティーセット、鏡やブラシ、アイロンなどが整然と並んでいた。部員達は支給の所作や衣装の手直しを手際よく行なっていて、まるで本物の侍従のようだった。

「こちらへどうぞ」

 柔らかい物腰の部員に案内されて、ロヴェリーが自然に背筋を伸ばす。

「お客様をもてなす基本や、王侯貴族に仕える際の礼儀、言葉遣いなどを実践形式で学びます。いかがでしょう? ご自身の役に立つと思われますか?」

「はい。これは私の本分でもありますから。経験を積める場があるのは、ありがたい事です。とても役に立つと思います」

 ロヴェリーの言葉は端的で、それでいて真剣だった。所作の一つひとつを見る目も鋭い。

「この部活に入りたいです」

「それは良かった。では、入部届に記入してください」

「はい。……これでいいでしょうか?」

 部活名と名前を書いたロヴェリーは紙を部長に渡していた。

「はい、大丈夫です。1年生が来ていい日は来週の月曜日からです。また来週の月曜日に会いましょう」

「分かりました。では、失礼します」

 次はセインの気になってるマジカルテニス部を見に行った。

広い室外コートの上に、浮遊ボードに乗った部員達が颯爽と宙を駆け、光のラケットで打ち合っていた。

 ラケットは柄の部分しかないが、魔力を込めると空中に淡い光が走り、まるで結晶のように美しいラケット面が現れる。

「うわー、凄い……!」

 思わず声が漏れた。試合中の球は普通のボールではなく、魔力の反応に応じてスピードや軌道が変わる特別なボールらしい。部員の1人がタイミングよく反応し、宙を跳ねるようにしてラリーを返していた。

「こんにちは、見学かな?」

 空中からスッと降りてきた上級生が、ラケットを肩に担ぎながら声をかけてくる。

「魔力量だけじゃなく、飛行術のバランス感覚も必要だから最初はちょっと難しいけど、慣れるとめちゃくちゃ楽しいよ。体感、スピード感、戦略……全部が鍛えられる。君達はマジカルテニスはやった事あるかな?」

「おれ趣味でやってて部活はマジカルテニス部がいいて決めてて、この部活に入りたいです!」

「わあ、嬉しいな。じゃあこの紙に名前を書いてくれたらいいよ」

 セインはそう言われるやいなや、もう書いてたのかそのまま紙を渡していた。

「はい、ありがとう。1年生は来週の月曜日から来ていい事になってるから、また来週の月曜日にね」

「はい、では失礼します」

 最後は俺の気になってる魔法生物部を見に行った。

 部室は魔法生物厩舎内にあった。

「こんにちは、見学かしら?」

 迎えてくれたのは、キリッとした雰囲気の先輩だった。肩に小さなドラゴンの子どもみたいな生き物が乗っていて、じっとこちらを見つめている。鱗が艶々しているし、角と翼がある。

「ここでは様々な魔法生物の飼育、観察、記録を行なっていますわ。生体の特性や魔力の動きの研究もしていますよ。勿論、お世話も大事なお仕事ですけどね」

 先輩に案内されて中に入ると、ふわりと土と魔素の混じった匂いが鼻を掠めた。中では数人の部員達が、小動物サイズの魔法生物に餌をやったり、身体の様子を調べたりしていた。

「……わぁ」

 目を引いたのは、全体が淡く光る羽を持つ小さな鳥の生き物が止まり木にいるのを見つけた。手が触れないギリギリに近づくと、一瞬こちらを見た後、興味を持ったのか飛んで肩に乗ってきた。爪が食い込むかと思ったら痛くはなかった。頬に頭を擦り付けてきた。

「その子は“スフレ”って呼んでるわ。帯電体質だけど気に入った人には触っても痛みはないから、貴方は気に入られたのね」

 先輩の言葉にちょっと嬉しくなった。

「魔法生物の種類も性格も本当に多様で、知れば知るほど奥が深いわ。大変な事も多いけど、魔法生物との付き合い方を学ぶには凄くいい経験になりますよ」

 俺はスフレの柔らかい羽をそっと撫でながら小さく頷いた。ここならミープの事で色々聞けそうだなと思った。

「俺魔法生物部に入りたいです」

「歓迎するわ。それじゃあ、この紙に名前を書いてね」

「はい……これで大丈夫ですか?」

 紙に必要事項を書いて先輩に渡した。

「ええ、大丈夫よ。1年生は来週の月曜日から来ていい事になってるからまた来週の月曜日にね」

「はい、じゃあ失礼します」

 翌日。委員会を決める前にイベントの事や、特待生(スカラー)制度、長期休みなどの話をするらしい。

「では、委員会を決める前に、まずは長期休みがいつからかを話しますね。まず、冬休みは13月1日から1月28日までで」

 そう言えばあっちと暦がちょっと違うんだったね。月日は一月(ひとつき)は28日までで、13月まであり、1年は364日あり、4週間ある。なので2ヶ月の休みになる。

「夏休みは7月1から8月28日までです。ですので休み前のテストで赤点を取ると休み中に課題が出ますので勉強漬けが嫌ならテストで赤点を取らないようにしましょうね。では次はイベントの話をしましょう。11月16、17、18日は魔法・剣競技大会があります」

 魔法競技は個人と団体で2日間やって、最後の1日は剣競技をやるのだとか。この競技は各学年、各クラスの上位1名を選抜して、1年から5年のAからEクラス別で、個人なら25人で学年クラスをバラバラにして5人づつの総当たりにして最終的に1位から3位を決める。団体は1チーム5人を前もって決める、それでチームで5回戦やる、1位から3位を決める。

「5月20、21日は文化祭があります」

 外部の人を招待してクラス別で出し物をしたり、部活別で出し物をしたり様々なことをするらしい。今から楽しみだ。

「次は特待生(スカラー)制度の事を話しますね」

 特待生(スカラー)制度はAからS以上の評価が必修条件で、評価は筆記、実技試験とレポートで構成される。全教科85点以上をキープならブロンズ、全教科90点以上キープならシルバー、全教科100点キープならゴールド、全教科100点以上キープならプラチナ。例えばガーネット寮所属の人がゴールドを取ったなら、真ん中の石がガーネットで土台がゴールドのブローチなのだとか。

「それでは、委員会を決めたいと思います。考える時間をあげますので時間内に決めてくださいね」

 俺は放送委員会にもう決めている。あっちでは放送委員なんてやったことなかったけど、こっちの世界では何をするんだろうか? せっかくなら未知なことに挑戦してみるのも悪くないよね。

「――では、放送委員会がいい人」

 俺はすぐに片手をあげてアピールした。他には俺以外にもう1人だけだったのでこれで決まりだな。

「では、トール・スメラギくんとフロイド・クラヴァンくんですね。では、次は――」

 それから同じ委員会同士で仲良くなるように少し話す時間をもらった。

「フロイド・クラヴァン。よろしく」

「トール・スメラギだよ、よろしくね」

「もしかして、神子様ですか?」

 フロイドの言葉に俺は頷く。

「ではこちらの魔導具の使い方とかは分からない事のが多いですかね?」

「そうだね、こちらの事は学んでる最中だから知らない事の方が多いよ」

「じゃあ、色々お教えしますね」

「ありがとう」

 今日でガイダンスは終了。来週の月曜日から通常授業だ。

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