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11話

 約束通り5分で起こしてもらった。まだ疲れている感じはするが怪我人が来るのが未だに続いていてこれ以上寝てなんていられなかった。

 俺はゆっくりと立ち上がり、気合を入れて怪我人の治療に専念した。

 5分程集中して怪我人の治療をしていたが未だに終わらないと悟った。

 セロ様……魔物の大氾濫(スタンピード)を止めるために俺の魔法で倒す事は出来るのでしょうか……!

 ――出来る……が、人も巻き込む……。創造魔法で人には危害を加えぬが魔物には有効な魔法を作れば出来ない事はないだろう……。

 ありがとうセロ様……!

「デーン、トラディス。ごめん、先に謝っとくね。約束破る事になるけどこの状況を改善したいんだ、魔法を使って魔物を倒すから戦ってる少し手前まで行かせて……!」

「外は危険です!」

「ダメです! いけません! 御身に何かあったら創造神様になんとお詫びをすればよいのです!?」

「デル様が俺の事を気にってるのは分かってる! でも、デル様はこの世界の人達も大切に思ってるんだよ! だから俺に魔物の大氾濫が起きるって言ってくれたんだよ! 力がある俺が問題を解決しないでいるなんて出来ない! 俺もデル様が大事にしているこの世界を俺なりに大切にしたいんだ! だからお願い……!」

 彼らの思いも分かるが、このままでは状況がよくなる前に体力消耗してジリ貧になって、終わらせるのも遠ざかると分かる。トラディスなら分かってるのではないかと思っているのだが、分かってるからこそ俺を行かせたくないのかもしれない……。でも、これ以上は状況がよくなる事はないと思うから俺は一生懸命想いが伝わる様に話した。

「……分かりました。ただし、私達の側を離れない様にしてください」

「トラディス……!」

「デーン、トール様にこれ以上言っても無駄だ……。1人で駆け出して行かれるより私達がお側で御守りする方が創造神様にも分かってもらえるだろうさ」

「分かりました……トール様、絶対に1人で突っ走らないでくださいね」

「分かった……後ろの方から人に危害がないが魔物には有効な魔法を放つから、それまで周りの事お願いね……頼んだよ……!」

「はっ!」

 俺の言葉にトラディスは騎士の礼をして答えた。

 それから俺達は怪我人達の事を他の治癒師に頼み、救護幕から外に出て危険ではないが魔物が来ないとも言えない場所に立ち、周りをトラディスに頼み、俺は人に危害はないが魔物に有効な魔法を考える事を優先した。

 人に危害がなく魔物だけを倒すイメージを固めたら、両手を空に向かって伸ばしその上に魔力を集め練っていく。

 近場にいた冒険者や騎士達が、魔力が集まっていくのに気付き、慌てて離れたり驚いて固まってしまってる人がいる中、俺はそれらに目を向けたりはしても魔力を練る事を辞めはしなかった。

 俺は極限まで魔力を込め、金と銀の光の塊を魔物がいる前方に一気に放つ。

 先に冒険者や騎士達に魔法が当たるがなんともなくただ光が通過しただけだった。次に魔物達に当たると弱い方だったのだろう魔物が跡形もなく消え去った、だが途中で強い魔物だったものは消える事はなかったが、ピクリとも動かなくなりドサリと地面に倒れ込んだ。

 戦っていた人達は最初何がおきたのか分からず、驚きで身体が硬直したが一瞬で状況を判断し意識を切り替えた。だが次々と金と銀の光が当たった魔物達はバタバタと倒れていくのを見ているしか出来なかった。

 最後の一体が金と銀の光に当たり、大きな身体が大きな音をたてて倒れ、1分程経って動かないと判断した人達は一瞬静寂が訪れた――。

 そして次の瞬間……。

「――うぉぉぉおおおおおおおおおお!」

「すげぇぇぇえええええええ!」

「かっけえええええええええ!」

「なんだよ今の!!」

「神子様がやってくれたぜええええええええええええ!」

 歓声が巻き起こり、涙を浮かべる者、座り込んで笑い出す者、仲間と抱き合う者……様々な感情が渦を巻いて広がっていった。

 俺がやった事を見ていた人がみんなに知らせたらそれが広がり、俺への賛美になっていった。

「神子様万歳!!」

「神子様最高!」

 その声に応えようとしたが、一瞬景色がブレて意識を保つ事が出来なくなって、身体の力が抜けて倒れそうになった俺を、誰かに受け止められたと意識の奥で思ったが、ブツっと意識を手放した。


 わたしはトール様の様子がおかしいと思った時に、身体を動かそうとしたがトラディスに先を越されてしまった。

「トール様! ……トラディス、トール様は!? 大丈夫なのか!?」

「……大丈夫だ。魔力を大量に使った反動だろう、ゆっくり休めば大丈夫だろうさ」

「よかった……。ではここはもう他の方々に任せて、わたし達はトール様を早く休ませるために、神殿に帰りましょうか」

「そうだな……デーン、悪いが、後方支援のリーダーに私達はトール様を休ませる為に、先に帰ると言ってきてくれるか?」

 いつもならトラディスが行くところだが、トール様を抱えていて尚且つ、トール様を少しでも早く休ませる為に先に神殿に向かうから、代わりにわたしにその役目を任せるのだろう。

 わたしは彼に了解だと頷いて応え、それぞれその場で別れ、わたしはトール様の元にすぐに帰れる様に早足で救護幕がある方向に向かう。

 救護幕の中に入って周りを見渡すと、怪我人を治して軽く声をかけているところだった、わたしは彼の元に小走り気味に近づくと彼が気づいた。

「デーン様! 神子様のお力で魔物の大氾濫が治ったと聞こえてきました、神子様はやはり凄い方ですね! 神子様に感謝を申し上げたいと思っていたのですが、神子様は一緒ではないのですか?」

「神子様は魔力の使いすぎでお疲れになり今は眠っています。先にトラディスがトール様を抱えて神殿に戻っている頃でしょう。ですのでわたし達は皆より先に戻ります。後の事は頼んでもよろしいですか?」

「勿論です、神子様にはゆっくりと休まれていただければと思います。ここは我々にお任せください」

 その言葉にわたしは頷いて応え、彼の元を離れトール様の元に向かうために足を早めた。


 ――トールよ守ってくれて、ありがとう。

 デル様の声が聴こえたが、俺が応える前に聴こえなくなった、そしたら意識が浮上する感覚があってそれに逆らわずに身体を預けた。

「……っぅ、……ここ、俺の……部屋? ……外にいたんじゃ? デーン? トラディス?」

 俺は最初、自室のベッドにいる意味が分からずデーン達を呼んだが応えは帰ってこなかった。デーン達がいないなら今日当番じゃないデービットを呼ぼうとしたら、水が弾けるバシャーンって音に俺は驚いた。音のした方を見たらデーンが立っていた、彼は桶を落として水浸しになった床を気にもせずに、こちらに駆け寄ってきた。

「トール様、やっとお目覚めになられたのですね……! 具合はどうですか? 気持ち悪かったりは?」

「いや、大丈夫……だけ、ど……やっと? え、今って魔物の大氾濫があった日じゃ?」

「よかった……。いえ、あの日から3日は経ってます」

 え……3日も寝てたの? いやでも、もっと確認しないといけない事あったじゃん。

「デーン、あの後どうなった? 魔物は全部倒せてた?」

「トール様のお陰で王都は大きな被害はありませんでした、ありがとうございました」

 デーンは祈る様に手を組んで感謝を述べていた。

「そっかよかった、どういたしまして……みんなの力があったから出来た事だよ」

「それで、目が覚めたらトール様に伝えてくれと伝言があります」

「伝言? どんな?」

「一定の活躍をした人達へ、国王陛下から勲章を授けるとの事で、トール様へも勲章を授けたいとの事です。つきましてはトール様が目覚めた2日後に授与式をしたいとの事です。その時にでも民への顔見せも行うとの事ですよ。この国の正式な神子様だと民や他国へと知らしめたいとの事です」

「勲章……? 俺ももらえる物なの?」

 俺の言葉に彼は驚いた顔をしてこう応えた。

「勿論です! トール様程の活躍をした人はいません! トール様こそ勲章されて然るべきです!」

「わ、分かったから。じゃあ、ジェイエルに2日後の授与式の事、了解したって言っておいてくれる?」

「分かりました。少し御前を失礼いたします」

 そう言って彼は部屋を出て行った。少しして他の世話係が交代で部屋に来て、濡れた床を拭く人と俺の世話をする人と別れた。体調の確認や軽食を持ってきてくれた。少し寝過ぎたのか怠い感じがするが、それ以外はいつもと同じくらい体調がいいと思う、軽食はゆっくりと食べた。

 それでも頭の片隅では、さっきの夢の中での事が思い出されていた。デル様の声、他の神様達の気配――。最後に聞こえた「ありがとう」と言う声。

 あの声に応えたかったな……。でも、守れた。ちゃんと守れたよ、デル様……。

 あ、今なんとなくだけどデル様が微笑んだ気がした……。

 食べ終わる頃にデーンが帰ってきた、入れ替わる様に今までいた世話係が部屋を出て行った。

「トール様、神殿長にお伝えしてきました。神殿長からのお言葉なら国王陛下もお疑いにはならないでしょう」

「ありがとう。……ねぇ、作法とか付け焼き刃でもやった方がよくない? 大丈夫かなぁ」

「あの日よりは混乱はしていませんが、日常になったかと言われるとまだですから、今専門の方を呼ぶのは憚られます。ですので、わたしがお教えするくらいなら出来ますがどうなさいますか?」

「デーンに教えてもらえるなら、嬉しいからお願いするよ」

「かしこまりました」

 それから俺はデーンに丁寧に教えてもらって、作法を少しは身につけたと思う、デーンが言うには完璧ではないが見ていてハラハラはしないとの事だ。

 王城の大広間――荘厳な雰囲気の中、煌びやかな衣装に身を包んだ貴族や騎士の上層部達がずらりと並ぶ。大理石の床には赤い絨毯が敷かれ、奥にある王座には王のジェイエルが、そしてその隣には宰相ウィードが立っている。

「これより、魔物の大氾濫(スタンピード)において顕著な功績を挙げた者達への、勲章の授与を執り行う!」

 宰相の高らかな声に場が静まり返る。その中で、順に呼ばれた冒険者や騎士達が勲章を授かっていく。

 そして――。

「次に呼ぶのは、神子トール・スメラギ。彼の魔法により、多くの命が救われ、王都の壊滅を防いだ。この偉業に対し、国王陛下より勲章が授与される!」

 ざわっ……と、場に静かなざわめきが起こる。すでに俺の存在は広く知れ渡っていたが、こうして公式に、そして堂々と“国の神子”として認められる場面に、貴族達が少なからず興奮している様な気がする。

 赤絨毯の上をゆっくりと歩く、白と銀の式服に身を包み、背筋を伸ばして壇上へと向かう。

 ジェイエルの前で跪くと……。

「その様な礼は要らぬ、其方はこの国の神子なのだから」

 そう言って俺の肩に手を添えて立たせる、俺は吃驚したが顔に出ない様に顔を引き締めた。公式の場だし礼を尽くすのはあっていると思ったけど、神子って存在はやはりこの世界では特別なんだと思わされる。

 そしてジェイエルは宰相が持ってる金と銀、ちょっとの桃色の混じった勲章を受け取り胸元へと掲げた。

「トール・スメラギよ。汝の勇気、信念、そして命を惜しまず人々を救わんとした行いに、我は深い敬意を示す。これは国を代表しての感謝と、神子としての功績への証――我が国が誇る“神桜(しんおう)勲章”である。受け取ってくれ」

「勿論――」

 そう俺が応えると、ジェイエルは丁寧に俺の胸元へ勲章をかけた。その瞬間、広間の奥から金と銀の光が差し込み、天井のステンドグラスを通った光が俺の頭上へと降り注いだ。

 俺にはデル様がやった事だとすぐに気づいたが、他の人達は一瞬惚けたが、神様が俺を祝福したのだと悟り、空気が震える様な沈黙が生まれた。

「――万歳!」

 誰かの声がきっかけとなり、次々と広間に歓声が湧き上がる。

「神子様万歳!」

 俺はその歓声を受け止め、ジェイエルに目配せをしたら、ゆっくり頷いたので、俺は落ち着いた様子で振り返り声を張る。

「この勲章は、俺1人の力で得たものではありません。俺の側で支えてくれた人達――デーン、トラディス、デービット、神殿のみんな、そして、スキルを与えてくれた創造神様のおかげです」

 そう語る俺の言葉に、場の熱気はさらに高まるのが分かった。

「俺は、この国を守りたい。その想いは、今も変わってない。だから、これからも俺に出来る事があれば、全力でやっていこうと思ってるよ。どうか、これからもよろしくね……!」

 その言葉に、大広間が再び大きな歓声で包まれた。ジェイエルも微笑みを浮かべ、宰相ウィードが誇らしげに頷く。

 こうして俺、トール・スメラギは、名実ともに“この国の神子”として、人々の前にその存在を知らしめたのだった。

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