10話
それからすぐに住民の避難が開始された。住民達は慌てず騒がずだが急いで避難をしている。その間に救護班の俺達は南門の外側辺りに救護幕を作った。かなりの広さを確保したが間に合うかは分からない……。
冒険者の人数は例年より多いらしいが、大丈夫だろうかと不安になってる声が聞こえる。騎士団の人達は第3騎士団は都市外の警備、魔物討伐の人達で遠出してる隊はいないらしいので全部隊が召集されてるらしい。第4騎士団は魔法と剣の両方に長けた人もいる特殊部隊の人達も全部隊が召集されてるらしい。Aランク冒険者でまとめ役の人と第3、4騎士団の団長達が俺の元にわざわざ来て、後方支援の俺達に挨拶してくれた。怪我人が出た時はお世話になるからという事らしい。
それから1時間後、魔物の大氾濫の第1陣が来始めた。後方支援の俺達は最初の頃は怪我人もいなかったが少しずつだが怪我人が運ばれてくる事が多くなった。
「そこの治癒師! コイツ、肩を斬られたんだ! すぐ処置してやってくれ!」
「で、では、こちらに! 今治療しますから、安静にしててください」
最初の怪我人が運ばれて来て、俺達のいる救護幕内もピリッと張り詰めた空気になる。
中級ポーションと上級ポーションは数に限りがあり、余程の事がなければ使わないと決めているから治癒師達と俺で治療していく、俺は治癒師でも治せない怪我の時や手が足りない時に治療する事になってる。
「おい! こっちは足を斬られた! 運ぶのを手伝ってくれ!」
「僕が手伝います! すぐに治すので大丈夫ですよ」
「腕がいてぇ! 治してくれ!」
「すぐに治します! ……腕の骨に少しヒビがありますね。神子様、お願いします!」
「分かった、すぐに行く!」
俺を呼ぶ声にすぐさま反応し、少し急ぎ気味に歩く。
「今治すから」
「神子様、よろしく頼みます」
怪我人が不安にならない様に笑顔で対応する。
『治れ』
いつもと同じで金と銀の光がクルクルと周って傷を治していく。するとすぐに治った。
「治ったと思うけど痛くない? 腕動かせそう?」
「……! 治ってる! ありがとうございます、神子様!」
怪我人は腕を恐る恐る動かし、治ってる事に喜んでいる。
「神子様! こちらもお願いします!」
「今行くよ! ……じゃあ、お大事にね」
怪我人にそう声をかけて俺は他の怪我人のところに行く。
それから少しずつ忙しくなってきて、声が増え、怒号や呼びかけが交差し始めた。
「次! 出血が酷い! ポーション持ってきて!」
「毒に侵されてる! 毒消ポーションか、解毒出来る人は!?」
「場所が足りない! 外で待ってもらってて! 重傷者は中に入ってもらって!」
1人ずつじゃ間に合わない……。
「みんな聞いて! 怪我人を出来るだけ俺の近くに集めて!」
「神子様、何を……?」
一瞬、救護幕の中が静まり返る。ざわめきの中、俺は口を開く。
「これから、一気に……怪我を治すよ」
「そんな事が……可能なのですか!?」
周りが驚く中、デーン達はテキパキと動く。
「分かりました、すぐに!」
それを見ていた周りの人達もすぐに動き出した。
俺は真ん中あたりに立って魔力を練る。その間にみんな協力して出来るだけ俺の近くに集めてくれた。俺の周りに金と銀の光がクルクルと周ると周りが静かになった。
『みんなの怪我よ治れ』
そう言ったら俺の周りから徐々に治っていって、最終的には怪我人全体に行き渡り治ってない人はいなかった。
「う……い、痛みが……消えた……!?」
「あ、脚が、動く……!」
「傷がねぇ……!」
などの声が聞こえてきた。俺はニコリと微笑み、次の怪我人達を連れてくる様に言って次に備える。それを2、3回繰り返して次の怪我人を呼ぼうとしたところに、6人くらいで1人の冒険者の男性を運んで来た。その人達はみんな焦っている感じだ、それだけの怪我をしたのかもしれない。
「おい! 目を閉じるなよ!!」
「今怪我を治してもらえるからな!!」
「大丈夫だ! 絶対治してもらおうな!」
「お前はこんなところで死ぬ様なやつじゃねぇだろ!」
「神子様に治してもらおうな!」
「気をしっかりもて!」
そう怪我人に声をかけ続けている、俺はすぐに駆け寄り怪我人の状態を診た、怪我の度合いは今までで一番悪く、左腕を肘下から欠損していて、切り口からは黒ずんだ血が滲み、肉の奥に白い骨が一部露出している。内臓は脈打ちながら収まりきらずに外に押し出されそうになっていた。よくこれでかろうじてだが息があるなと思った程だ。
ヌマ様これはどうしたらいいのでしょうか……!?
――上級ポーションを少しずつ飲ませながら、神子、お主の治したいという思いを込めて治すがいい。さすれば治せるであろう……。
「誰か! 今すぐに上級ポーションを持ってきて! 早く! 一刻の猶予もない! 急いで!」
俺の言葉にすぐ様動いたのはデーンだった。俺はその間に魔力を込める。彼はポーションのあるところからすぐに目的の物を持ってきて俺の隣に来て俺に指示を仰ぐ。
「トール様、これをどうするのですか……!?」
「俺が治してる間にポーションを少しずつ飲ませて! そしたら治せるだろうって、医の神様が!」
「……! 分かりました!」
デーンはすぐに意味が分かったのか頷く。
「これは、神子様でも無理だ!」
「もう、間に合わない!」
誰かが彼の命を諦める声が聞こえた。俺はそれにピシャリと声を上げた。
「死んでいないのに諦めるわけないでしょ! いいから、静かにしてて! この人の命は俺が繋ぎ止める!」
そう言ったら静かになった。俺は重傷者に声をかける。
「今から治すから、もう少し頑張って! デーン準備いい!?」
「はい!」
『彼の傷よ治れ! 左腕よ元に戻れ!』
俺は思いを全力で込め、ゆっくり少しずつだが聖魔法をかけていく。
重傷者の周りを金と銀の光がクルクルと周り、ゆっくり身体に溶けて消えていく、するとそこから徐々に治っていく、俺は集中を途切れない様に余計な事を考えない様にしている。
「……あっ、傷が……治ってきてる!」
「呼吸も、さっきより安定してる……!」
「……腕が治ってく!」
「頑張れ! もう少しで治るぞ!」
「神子様が頑張ってるんだ、もう少しだけ頑張れ!」
それから集中力をなくさずに治していき、8分程で完全に治った。金と銀の光がなくなったから完治したと見ていいだろう。
「……っ、ぅう……ぉ、オレ……なんで……ここは……?」
少し経ったら重傷者の男性の意識が戻ってきた。すると一瞬だけ静寂が訪れたが、男性が助かった事を理解した人達が歓声を上げた。
「……治ったぁぁああああ! 神子様ばんざーい!」
「奇跡だ……!」
「神子様に拍手を!」
「うわーーー! すげーーー!!」
「よかった、本当に……!」
俺はその声に疲れを滲ませながらも笑顔を見せた。
「……よかった……助けられた……」
そう思ったらなんだか身体の力が抜けて、意識の奥がぐらつき、目の奥がじんじんと痛み、足元がふらついた、だが地面に倒れる前にトラディスに抱き止められた。
「……少し、休みましょう」
俺の額から汗が滴るまに救護幕の奥の隅に連れて行かれる、デーンは俺の汗を拭いてくれたり、飲み物を用意してくれた。
「少し寝た方がよろしいかと」
「でも……」
「まだ終わりそうにはないので、これから来る怪我人の対応をするなら少し休まれた方がいいと存じます」
「分かった、……5分で起こしてね」
「はい、必ず」
周りの興奮が未だ冷めない中俺は瞼を閉じた。




