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忙しくないうちは休日出勤って言ってる。

3月14日 13:00

休日出勤は気楽なもので駅前で買ったパンをもそもそしながらデスクのパソコンを起動し新着メールを確認。

制作進行という仕事は、アニメーションを完成するまでに必要な素材の管理がメインの仕事だ。またこの素材というものは多くの人間が関わるもので、きちんと管理が出来なければ最後の最後で泣きを見ることになる。今はデジタル作業をする人も多くなっており、その素材管理自体もデータでのやり取りも増えてきている。しかしこの作品では監督がアナログな為チェックを円滑にすること、管理がしやすいという二点でカット袋(大きくて厚手の封筒の様なもの。原画を安全に運ぶために使うものだが当時はセル画を入れていた。)は必要になるのだった。


14日 13:15

作業用に空いているデスクに移動し、我がスタジオのロゴが印刷してあるカット袋を山盛り持ってくる。

そしてカット1から記入を始める。カット袋1枚につき5ヶ所の記入をしていく。今回の話数は417cutなので全部で2085回の記入が必要となる。

ちなみにカット袋は原画素材を入れるためのものなのだが、演出、監督、撮影部などを移動する際に縦にしたり横にしたり、積み上げたりが発生するので目当てのカットがすぐに見つけられるように、また確認しやすいようにという配慮で5か所の記入が必要なのだ。

そしてこの作業は意外に時間が掛かるのでこういったタイミングで終わらせてしまうのが理想的なのだ。

まぁ他に空いている制作なんかがいると手分けしてすぐに終わるのだが、今は皆して忙しそうなので仕方がない。あとこういう地味な作業が好きな方が制作には向いているのだ。


14日 14:00

作業用に流していた怖い話まとめが途切れて着信音に変わる。電話はノータイムで取る習性がある為、相手の確認もせずに電話に出る。

「秋本さ〜ん 助けてくださいよぉ 大変なんですよぉ」

「どうしたんですか?また水道でも止められちゃったんですか?玉柏さん」

彼女はうちのスタジオに席がある玉柏さん。前話数で一緒に仕事をして今は別話数に入っているアニメーターだ。絵も芝居も上手いがマイペースなのと生活力がないので、その辺のフォローもしないと力を発揮できないタイプの人だった。

「その辺は払ったんで大丈夫です!ただちょっと相談というか今の話数の制作さんがですね・・・」

「今って8話でしたよね?それだと担当は関くんですか。」

8話担当の関くんは2個下の新人だが、何かと熱量が空回りしているような印象を受ける子だった。


14日 15:00

「それで作業してると知らない間に後ろに立ってたりするんです!何か用事でもあるのかと思ってイヤホン外すじゃないですか、そうするとチョコとかくれて・・・まぁありがたいんですけどね!?」


14日 15:30

「でそのシーンの芝居がやばくて、すごい丁寧なんですよね。画面作りから違うんですけど、二木さん伝手で聞いてみたらあそこはもうお任せで進めて動画まで担当の作画さんがやっちゃったらしいですよ!」


14日 16:45

「劇場版だとちょっと描かれ方違いますよね?あれどう思いました?いろんな人に聞くんですけど、結構意見が分かれるんですよ・・・ちなみに私は、変えていいなら前のシーンからの一連の演出をもう少し客観した感じで入りたいかもって思ってみたり、すごくいいとこだから感情移入させるところでガッいきたいみたいな!」


14日 17:30

「それでもう面倒くさいというか!疲れちゃうというか!スタジオで作業したいんですけど、ちょっと行けないなという感じでぇ」

「はぁそれはまた・・・。」

途中かなり脱線したアニメ談義もあったが、要約すると関くんが仕事の進捗確認をする連絡をする際に、玉柏さんをご飯に誘ってみたりなんだりかんだりをしてくるのが嫌になっちゃいましたよ。ということらしい、ハチャメチャやってくれてんなぁ!である。

多分だがこの感じだと関くんは他の作画さんにもこういう事している可能性がある。そしてアニメ業界は狭いので、知らない間に厄介な事になるのは明白だった。早々に釘を刺すしかない。

「この件は週明けにしっかり対策するんで、それまでお家で作業してもらっていいですかね?あと自分で無理そうなら話を上に上げるしかないんですけど、玉柏さん的に嫌だったりします?」

ナイーブな問題なので念のための確認だが、

「解決しない方が困っちゃうので、秋本さんにもう任せますね!」

「じゃあ8話の後は12話が待ってますんで、さっき送った絵コンテ目を通しておいてください。また感想聞くんでよろしくです。」

「お疲れさまでした!」

余計な仕事が増えてしまったが、カット袋の記入作業はもう少しで終わるほどの所まで来ていた。

まぁ今日は早々に帰れそうだし、玉柏さんの相談にもしっかり乗れたので逆に連絡があってよかったまであった。

さてと作業を終えたら帰る前に作画フロアの様子でも伺いに行きますか。

忙しくなると常にいるから敢えて出勤とか言わないやつ

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