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家に帰るまでが一日。

13日 2:00

その後高床式さんを家まで社用車で送った。既に深夜アニメのゴールデンタイムも過ぎている。

スタジオのデスクに座りこれからの事を考えていた。フリーランスのアニメーター達への営業をして、打ち合わせの準備をして、各部署への挨拶と予定を確認して用意するものも膨大etcetc・・・

A4コピー用紙の裏紙は明日以降のやらなければいけない事でいっぱいになったが時間に追われていない現状はまだ幸せだった。

対岸に燃えるというか隣の席の同期の話数は現在炎上中(物事が上手くいかない様子の例え)。

多分スタジオのどこかで仮眠しているのだろう。

誰もいないことを確認し、制作部の明かりを消し机に突っ伏した。


13日 9:30

始業まであと30分まだ制作部の明かりは未だに点いていなかった。

給湯室で顔を洗い、歯を磨いてと身支度をしていると後ろから声をかけられた。

「秋元くんおはよう!今朝はだいぶ早い出勤じゃないか、昨日の今日でやる気に溢れているね。」

朝から元気なのは外下プロデューサーである。アニメ業界は時間にルーズなので朝から出勤しているとこんな感じに捉えられる。

「おはようございます。昨日はあの後、演出の高床式さんを送ったんで帰れなかったんですよ。」

「あの人昨日来てたんだ、珍しいこともあるもんだな。そもそも高床式って昔は制作やってたような気がするんだが、あんまりスタジオに寄り付かないというか何というか・・・仕事は出来る奴だったから誰の注意も聞かなかったんだが。変な奴だっただろ?」

確かにそれは初耳だ。そして昔からあんな感じだったのかと少し安心したのも確かだった。

「変な人っていうのはその通りですが、まぁこれからなので頑張ろうと思います。何かまた思い出したことがあったら教えてくださいよ。」



13日 12:00

昨日は帰れなかった為、今日はほどほどの時間で一度帰りたいなと思いながら割り振り表(絵コンテを元にざっくりとシーン分けしたもの。)を作っていた。

今回はカット数もだが最終回。可能な限り社内の作画さんにお願いするとしても、果てさてどうしたものか・・・

そんな折、高床式さんからの着信。すぐにメモ帳を用意して電話に出る。

「もしもし、秋元です。昨日の今日でどうしました?昨日渡した素材、何か足りなかったですかね?」

「お疲れ様、割り振り表って出来ているかな。あれば送って欲しいんだけれど」

昨日からだいぶ砕けた感じになってるな。

あとそういうの欲しいタイプの人なんだなと思いつつ首にスマホを挟み両手をフリーにする。パチパチとタイピングしながらフォルダをまとめ送信した。

「ちょうどいいんでこのままメールで送りますので、一回確認お願いします。」

「今確認出来ました。」

少し感心したような声音な気がする。こういうちょっとしたやり取りが早いのは喜ばれるので最速報連相を心掛けていてよかった。

「すみませんがこの割り振りもう埋まっているところはある?」

この流れはあれか?作画さん紹介してくれるとかのやつか?

「いや、これから社内の作画さんに当たろうかと、見せ場の所は単価の問題もあるんで一回デスクに相談してから営業って感じで考えてます。」

「了解。じゃあリクエストがあるんで今送ったリストの人アテンドしてもらっていい?」

reの付いたメールのフォルダを開き一通り目を通す。高床式さんこれって当然のように言ってますけど、

「あの・・・これ高床式さんからの紹介でって言えばどうにかなりますか?一見で行ける感じのメンバーじゃないというか、売れっ子スーパーアニメーターしかいないんですけど・・・」

「それをどうにかすんのが制作進行でしょう。とりあえず期限は来週のCTまでに作打ちを組んでおいて。ちなみに私も褒められた方法で連絡先集めた訳じゃないから、紹介って言いかたはしないでね。」

「ちょっt!」

電話は切られてしまった。速攻で折り返すも機械音声が電波が届かないとかいう。今朝変な奴って話聞いてこれって幸先が良すぎるな。

ちょっと色々確認するんで!!という内容でreにreを付けておいた。



13日 16:00

いつも通りの時間に出勤して来たデスク溝ノ口さんに早速発生した問題を報告しておいたが、すでに佳境を迎えている話数が大変なことになっているとのことで週明けのミーティングで改めてという事に落ち着いた。

今日が金曜日なので7日間あるタイムリミットは既に半分ほどになってしまうが、いちいち気にするのは、とても精神衛生に良くないので僕は一度家へ帰る事にした。

正直こんな序盤から睡眠時間を削っていくのは得策ではない。幸い明日は土曜日なので、メールやら連絡対応もそんなに多くはないだろう。昼頃からカット袋を作って、仲の良い作画さんに12話の相談をするくらいで十分だろう。

「お先でーす。」

そうして僕は二日ぶりの帰路に着いた。

ノリと勢いで終電を逃すこともある

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