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私情警察2 ~中編~

「どうぞ、おかけください…飯島さん」


女性の名まえは飯島薫。静かに腰掛けた。

今回の依頼者は一人息子を持つ母親だ。

パっと見は裕福な身なりをしている。

しかし、それとは対称的に手持ちの赤いバッグはかなり傷んでいる……。

オレの視線に気づいたのか飯島さんは語りはじめた。


「このバッグ…息子がプレゼントしてくれたんですよ、初任給で」

「…………」


言葉がでなかった。

長年の経験から、余計なことは喋らずに聞き手にまわった方がいいと判断した。


「犯人は2人組の男だと聞いています…。しかもまだ捕まっていない」

「決定的な証拠がないんです。警察の捜査も行き詰った感じで…わたしでもわかるくらいに」

「……………………」

「テレビでもその事件のことはほとんど取り上げなくなりました…」


(資料には…親が政治家とあったな…。なるほど、テレビ局に圧をかけたか…?)


「息子は…将来自分のお店を持つことが夢でした…ヤキトリが好きという変わったところもありましたが…わたしには大事な一人息子だったんです……!!」


すべてを話すと飯島さんはボロボロのバッグを強く胸に抱きしめた。


「…それで、オレのところへたどり着いた…?」


彼女は黙ってうなずいた。

だが…オレには必ず聞かなければならないことがある。


「飯島さん。オレがすることは法に反することです。そしてあなたはその犯罪に加担するのと同義…。その意味がわかりますね…?」

「覚悟はできております…!」


その瞬間…飯島さんの顔が豹変した。


「はい…!お願いします!息子の無念を…!たよれるのはもうあなたしかいない!!」


すべてを話し終えた彼女は、オレに頭を下げてきた。

彼女の声には慟哭と犯人への憎悪が感じ取れた。

依頼者の顔に般若が憑依したように見えた。



愛するものを突然奪われた喪失感…!生涯消えることのない憎悪…!!



オレは彼女の手を見た。

とてもか細い手だ。人生の在り方は…人体のどこかにでるものだ。

彼女の場合は手だろう。女手一つで子を育て…さぞ大変だっただろう…!


親しい人を唐突に失う言葉では言い表せない感覚……。


オレも…オレたちも……似たような経験をしたからわかる…!

あなたの痛みが……!

あなたの苦しみが………!


「わかりました…。あなたの無念…オレがはらしましょう……!」


「ありがとうございます。ありがとう…ござい…ます…」



懸命に生きる人を…身勝手な自分の都合でその命を奪う……!!

そんな外道どもが生み出す負の連鎖…。それによってうまれた遺族の無念。

その遺族の無念を汲み取り、そして晴らすこと…

だれが…泣き寝入りなんてするかよ。


(人にはそれぞれ使命があるってんなら、それがオレの使命だ!)

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