私情警察2 ~前編~
カラン……
「やぁやぁ、マリさん。今日もお美しいっス!」
ドアの方を見ると、一人の男が入ってきた。
オレの後輩だ。イケメンで高身長。あと英語もペラペラ。
……なんかムカつく。
「まぁ、どうも…圭介さん」
「これ、いつものっス!」
「あらあら、今回は赤いバラの封筒?これって…」
「マリさんの好きな花っスよね?」
「まぁ、覚えててくれたの? うれしいわ」
「おいおいおい。だから!人の奥さんを口説くな!ってか、マリも断れ!!」
「あら?あたしは嬉しいわよ? あなたぜんぜんしてくれないし…」
「ぐぬぬ…!」
今回もA4サイズが入る封筒で持ってきている。厚みはそれほどでもないが…。
「マリさんへの想いを文章にしたら…こんなになったっス!」
「まぁ、ありがとう…」
「困ったヤツが来たら電話してくださいね。すぐに駆けつけますんで!!」
「困ったヤツか…今オレの目のまえにいるんだが、電話していいか…?」
圭介はオレの言葉も関係なく一方的にしゃべる。
「世の中おかしいっス!なんでこんな美人の旦那が…!? はっ!ま、まさかマリさん。…弱みを握られてるんじゃ!?」
「アホか!!」
「ラブレターは、お店を閉めたら読ませていただくわ」
「じゃ、僕は勤務中なんで…失礼するっス!」
「早くでてけぇ!ってか、仕事しろぉ!!!」
オレは玄関に清めの塩をまいた。
そして滞りなく一日が過ぎた。 時刻は夕方。オレは店じまいの準備をする…。
そしてその晩のこと…
「ふふ、圭介さんのラブレター…とても興味深いわ」
「どれ…」
オレはアイツが持ってきた資料に目をとおす。
う~む、資料も実に読みやすい。
今回のターゲットの情報がこと細かに記載されている。
アイツは顔がよくて、英語もできるから…情報収集なんてお手のものだ。
(……演技だよな? マリを口説くのは演技だよな…?)
オレは資料に目をとおした。
被害者と加害者のそれぞれの生い立ちや人間関係。
犯人の動機や犯行現場と時間など…。
(今回の被害者は20代の男性。幼いころ両親が離婚し、現在は母親と二人暮らし。夜道に男二人にからまれ…暴行の末、死亡が確認された…か)
お経のようにぶつぶつ言いながら、オレは資料をぜんぶ読んだ。
(外道が……!)
それが俺の感想だった。
怒りで、資料の端を少々しわくちゃにしてしまった。
そしてその日の夜、10時ごろ…。
コン…コン…コン…
店の裏口から一人の中年女性が入ってきた。