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私情警察 ~中編~

「どうぞ、おかけください…」


オレはその男を部屋に案内した。男は音もたてずに座った。

男はひどくやつれた初老の男性だ。


「秋本五郎さんですね…? ご用件をお聞きしてもいいですか?」


「娘の作品を汚して、死に追いやったあの女を殺してください…!」


男の名は秋本五郎。昨夜の資料の被害者の父親である。

彼にはマンガ家の娘がいた。

小さいころからマンガが好きで自分も絵を描くのが好きだったのだ。

だが、マンガ家になるには険しい道のりだった。

魂を込めた作品が選ばれず、それでも書き続け……

そしてやっとの想いで連載を勝ち取った。


「娘は学校を卒業してから、働きながらマンガを描いていたのです…」

「そしてマンガがヒットし…ドラマ化までこぎつけた」

「そうです。世間は結果しか見ませんが、わたしは娘の苦労をまじかで観てきました…」



しかし、そのドラマは…すこぶる評判が悪かったのだ。

脚本、選出された俳優、演出…なにからなにまで原作とはちがったのだ。


「娘はテレビ局に抗議にいきましたが、しかし話は平行線でなんの解決にもならなかった…」


(そして…心労がたたり…自ら命を絶った…)


親族の心境を考え、あえて口には出さなかった。


「でも、ちがうんです! あれは…自殺なんかじゃない!」

「……?」

「うまくは言えませんが、娘は自殺なんか絶対しない!なにか裏があると思うんです!わたしだって娘の仇を自分で打ちたい!しかし…ヤツは芸能界で働く人間…。極道や大物ともつながりがあるそうです…」


「それだけの権力があれば、捜査の報告書の捏造は造作もないでしょうね」

「はい…」

「…それで、オレのところへたどり着いたということですね…?」


秋本さんは黙ってうなずいた。

だが…オレには確認しなければならないことがある。


「秋本さん。オレがすることは法に反することです。そしてあなたはその犯罪に加担するのと同義…。その意味がわかりますね…?」

「はい…!」


その瞬間…! 秋本さんの顔が豹変する!!

「たのむ、娘の作品をろくに理解せず、作品を汚したアイツに…地獄を見せてやってくれ!」

その涙は…娘の無念と犯人への底知れぬ恨みが入り混じったものに見えた。


(この表情、決して演技ではない……!)


オレは彼の手を優しく包み込んだ…。

「わかりました…あなたの無念、オレが代行して晴らしましょう……!」

「ありがとうございます…ありがとう…ございます…!!」


自分たちの都合で真実をうやむやにする外道…!

それによってうまれる遺族の無念…!


オレは心の中で…つぶやいた。


(法律で裁けないのなら…オレが裁いてやる…!)

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