表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロングロング  作者: くろ
66/85

No66 ニヨニヨ

   

  アリロスト歴1931年  8月



 暇な訳でも無いだろうに俺の聖域へヤング元大統領が生贄の子ヤギを連れて来た。

 あっ、生贄じゃ無いか。

 商務長官のウォレン・ウォーターだった。

 ウォレン・ウォーター商務長官は少ないライトブラウンの髪を左右でキッチリ分けた清潔感溢れた40代後半の山羊だった。


 次の選挙でウォレン・ウォーターを推したいってヤングは話してるけど、次って絶対に自由党って負けるよね?

 こんな恐慌ってクーリッツ大統領の所為じゃないかも知れないけどさ。

 「景気は、もう直ぐ戻る!」って言ってるだけじゃ駄目なんだよ。

 フリでも良いから何かしないと。

 それに1915年位から通貨供給量を増やして株で投資経済にしたのってヤング、お前だろう。

 まぁー、投資信託を許可したのは、次のショーン・キャメロン大統領だったけども。



 「で、ヤング氏、南部との会談は如何でしたか?」

 「はぁ、ジェローム。私の事はベニーと呼べとジェロームには何度も言って居るだろう。何時まで経っても他人行儀だろ?それでは。」

 「いやぁ、ずっと他人ですからね、俺とヤング氏とは。それで、、、。」

 「ベニーと呼ばないとクーリッツ大統領へジェロームを相談役にと推薦状を書くしかなくなるが?」

 「はぁ?はー、もうベニー、此れで良いですか?公邸は勘弁してくださいよ。もうー。」


 「ははっ、矢張り名前で呼ばれるのは良いな。ああ、そうそう南部だったな、ジェローム。」

 「ええ、まあ。」


 俺は、基本どちらでも良いんだけどな。

 旧プロセン資本も今はガタガタだから北部もグレタリアンの資本は欲しいだろうし。

 南部も今はグレタリアンが介入してフォローしてくれると思って無いだろうしな。

 外交なんて困ったときは頼りに成らないよね。

 お互いに。

 


 「一応、北カメリアとして纏まる事にアンソニー・デイビットからは合意して貰えたよ、ジェローム。」

 「おめでとう御座います。此れでベニーの懸念事項は無くなって、楽隠居が出来ますね、お疲れ様。」

 「ただジェローム、完全な北カメリアと言う訳では無く、北部の中央集権では無く南部は南部の地方分権の遣り方を通すと言うのだよ。」

 「ソレは今の北部もそうでしょう。州の独立性は高いですし、互いの移動がフリーに成れば南北どちらもゆっくりと受け入れるように成る気もしますよ。それに内戦の理由であったプリメラ人奴隷も今は南部に居ませんし。」


 「表向きはね、ジェローム。」

 「ソレを言ったら北部もでしょう?そもそも産業界からの要請だったんでしょ?ベニー。新たな奴隷は流石に時代的に購入出来ないし、でも低賃金の労働力は欲しいつうね。大体、俺には自由党が人権とか考える党に見えませんから。」


 「全く嫌な事を言うな、ジェロームは。そしてジェロームのその問いにはノーコメントだよ。」

 「はいはい。それで、此の侭ベニーも不況に対しては何もしないんですか?」

 「私は元大統領として余り動けないからウォーター商務長官を赤十字と一緒に失業者達の滞在先へ廻らせようかと考えている。ウォーター商務長官も内閣の人間だから、少しはクーリッツ大統領への批難を和らげれるのじゃないかと思って居るんだ。」


 「ああー、失業者達が建てて作った村をクーリッツビル、毛布代わりの新聞紙をクーリッツブランケットって国民党の広報官がクーリッツ大統領を貶める為に考え出したって言う奴か。新聞紙は便利だと俺とか思うけどね。」

 「どうしても我々は民間企業の邪魔をしてはいけない。国民の自由意思を尊重すると言う考えが身に就いているんだよ、ジェローム。」

 

 「其処ら辺が面白いですよね。ベニーも小さな政府を目指しているのに、奴隷解放って北カメリア全土に憲法で発布するし、同じく小さな政府を目指すキャメロン大統領も禁酒法を制定するって。」

 「はあ、あの時南部が州を脱退せず攻撃をして来なければ、内戦などせずに話し合えたのに。」

 「ふふっ、其処ら辺はベニーの回顧録にでもどうぞ。でもウォーター商務長官、選挙に出たら負けますよ?きっと八つ当たり的な対応を有権者は選挙活動中のウォーター商務長官にしてくると思いますよ?此のジジイに嫌、ベニーに騙されてませんか?」


 「ははっ、いえ、理解していますよ。ジェローム氏のお気遣い有難う御座います。あの、本当にc・エイム子爵と呼ばなくて大丈夫なのでしょうか?ヤング氏からはエイム子爵と呼ばれるのを嫌がられると注意をされていたのですが。」


 「うん、そうなんだよ、ジェロームで結構。一応、俺も北カメリア北部の国民なので、爵位で呼ばれるのはさ。そう言うにはグレタリアンに戻った時だけで良いよ。ウォーター商務長官。」

 「、はい。まあ、今回は酷い負け方をするのは織り込み積みなので。それにヤング氏には今回の暴落前に救って頂いたので、十分な報酬は事前に頂いていますので。」


 「うげーっ、俺、嫌な事を聴いた。ベニー、ウォーター商務長官に口止めしときなよ」

 「ははっ、元はジェロームからの情報だろ。お礼の序にウォーターを連れて来たんだ。」

 「有難う御座います、ジェローム氏。」

 「あーヤダヤダ、俺も悪党の一味みたいな立場だよ。ホントさ、いい加減にして欲しいよね。」

 「その代わりエイム公爵やジョアンの無理な願いを叶えて来ただろう。こういうのは、お互い様だよ。しかし惜しい方を亡くしてしまったよ。デニドーア外務卿がいらっしゃったら、グレタリアンともっとスムーズな連携を取れたんだけどね。此れからはジェロームに頼む事が増えそうだ。」


 「嫌だぁ。そう言う面倒な世界に関わらない為に、俺はロースクールにも行かず探偵業をしていたのにさ。何が悲しくて68歳にも成って生臭い場所へ近付かないといけないんだよ。」

 「知らなかったのかい?ジェローム。デニドーア外務卿達と我々がジェロームの為にクリストン特区とヨークにジェローム・c・エイム研究室を作ったんだよ。補佐官ヒューイと弟の補佐官クラークが今は詰めているけどね。」


 「、、、ありえねーーっ!」


 俺は、そう思い切り叫んで、力の抜けた身体をヤングとウォーターに向ければ、2人の背後に妖怪ぬらりひょんデニドーア外務卿がニヨニヨと良い笑顔で笑い掛け来る姿を幻視した。







     ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 


 

 アリロスト歴1931年  9月



  俺はジェロームがポスアードの街慈善活動でへ寄付をしたことをディックから聞き、自分も何かできないか考えて居るとモリアーニ氏から電話が掛かってきた。

 其処で俺はモリアーニ氏に相談すると一緒に遣ってみても良いかと言う話に成った。


 俺はモリアーニ氏と共にヨーク市に或るセントラルパークへと出向いた。

 立ち並ぶバラック建ての小屋には、不安げな子供達と居る母親らしき女性達、立ち上がって周囲を見る多くの人達、そして空きを探しているのか歩き回る人達でごった返していた

 広大な公園だった一帯には突如としてスラムが出来ていた。

 此処の他にも後、4か所くらい職を失い逃げて来た人々のこういう宿泊滞在書が或るそうだ。


 モリアーニ氏と俺は炊き出しを行っている場所を人を掻き分けて抜け、赤十字マークが或る仮説の小屋まで行き、モリアーニ氏が責任者の人へ必要な物のリストを訊ねて、互いについて来た従者へとそのリストを渡し、此処へ運ぶように頼み、俺達は外へ出で疲れた人々で溢れているセントラルパークを後にした。


 多くの金融機関が潰れ銀行が余り機能して居なかったので金融機関を保有しているモリアーニ氏の存在は有難かった。

 モリアーニ氏から案内され、豪奢な銀行の建物の扉を半分だけ開けて、従者や警備員の人達と屋内に入り、預け入れをしていた現金を出して貰い、応接室迄運んで来てくれた。



 「ロンドで45年以上前に金融不安が起き、金や通貨の取り付け騒ぎが起きて、あの時はウチも金貨が足りなく成って潰れ掛けそうに成りましたからね。その時、色々と対策を講じて於いたのですよ。」

 「凄いですね。お陰で助かりました。何時もモリアーニ氏にはお世話に成りっぱなしで。」

 「いえいえ、私も今回はジェローム氏から大いに助けて頂いたので此れ位は何とも在りません。ジョアンも何か在れば是非とも私に声を掛けて下さい。また手助けをさせて下さい。」

 「はい、有難う御座います。モリアーニ氏も何か在れば、俺に声を掛けて下さい。俺が出来る事であれば手伝わさせて下さい。」


 俺は品の良い仕草で優しい目をして、運ばれた珈琲を進めて呉れる細い白髪のモリアーニ氏へ礼を告げ、純白な磁気で出来た珈琲カップの取っ手を右手で持ち口元へと近付けた。

 エイム公爵より少し歳若いと聞いていたモリアーニ氏は、眉迄もが白い、その優し気な容姿は老齢な紳士に見えた。

 矢張りあの気迫の所為でエイム公爵は若く見えるのかも知れない。

 そんな事を考えながら、俺は口に含んだ珈琲に少し酸味を感じる味と濃い薫り味わって居ると、静かな声でモリアーニ氏は話し掛けた。


 

 「実はジョアンにお願いが在ったのですよ。」

 「はい、モリアーニ氏、何でしょうか?」

 「ええ、実は会ってジョアンに話を聞いて欲しい人が居ましてね。私もレイ・ブラウン司法長官から依頼されましてね。」

 「えー、と、俺なんかで大丈夫でしょうか?モリアーニ氏。」

 「勿論、まあヤング氏との話の種が1つ増えると思ってジョアンは気軽に聴いて呉れると助かります。」

 「はい、ソレで良いのでしたら。」


 「そう言えばジョアンはスピークイージへ行ったことが在りますか?」

 「ええ、映画会社の人達と会う事が在るのでどうしても。デルラには余り来て欲しくないのでスピークイージで会いますね。ああ、でも俺は酒を飲まないんですけどね。」

 「飲まなくても入れるのですか?ジョアン。」

 「ええ、向こうも商売なので入場料として料金を払います。ジェロームが身体に悪いからスピークイージの酒は絶対飲むなって五月蠅いので。どうしても酒が必要な時はルーサーに持参して貰って居るモノを飲みますよ。その分、又余計に料金を支払いますけどね。」


 「そうですか、ああ、丁度、着いたみたいですよ。」



 そう言うと重厚なブロンズ色の扉が重々しい音をさせて開き、短い黒い髪を後ろに撫で付けセットした鋭い目をした20代後半の深い藍色のスーツを着た青年が姿勢正しい姿で入って来た。


 「ジョアン、此方がFPB捜査官のロバート・マロウ氏だ。そしてロバート、彼が私が友人と思っているジョアンだよ。2人共座ってざっくばらんに話しなさい。」


 俺は固い表情のロバート・マロウ氏に右手を差し出し挨拶をし、ロバート・マロウ氏もぎこちない仕草で右手を差し出し握手をし、互いの挨拶を済ませてテーブルを挟み向かい合って皮製のソファーへ腰を降ろした。

 俺の左のソファーに座っていたモリアーニ氏は、緊張している俺とロバート・マロウ氏を見て、楽しそうに笑った。


 「いや、ジョアン緊張させて申し訳ない。人の多いセントラルパークでは話せる雰囲気でも無かったからね。実は、クーリッツ大統領から何としてもカッポレを逮捕したいからと、アイデアを求められてね。ロバート・マロウ氏も司法長官から何とかカッポレを捕まえようと頑張っていたんだけどね。」


 「はい、面目も在りません。3度とも上手く逃げられてしまいました。確りとカッポレの経営するムーランへいる事を確認して警官たちと踏み込んだのですが。」

 「情報が漏れていたんですね。ロバート・マロウ捜査官。」

 「ええ、3度目の時はもう1人の捜査官と警官で踏み込んだのですが。2度は保安官も居たので3度目は警察とFRBで踏み込んだのですが駄目でした。ふぅー。」


 そう言ってロバート・マロウ捜査官は厳しい表情の侭、深く結んでいた薄い唇から息を吐き、発達した下顎を僅かに緩めた。

 角ばった顔の所為か、真剣な表情で話すと、ロバート・マロウ捜査官は厳しい顔つきに成るみたいだった。


 俺に捜査など分る筈も無いけど、ヨーク市のスピークイージでも捜査のある時は解るみたいで、捜査員が来る前に、裏口や隠し通路から逃がして貰ったり、前もってわかっている時は休日にすると贔屓の監督や会社に連絡が入ると知人は話していた。


 確かジェロームは議員や官僚とも繋がっていると言っていた。


 俺はその話をロバートマロウ捜査官へと話した。


 「秘密裏に捜査しないと駄目な気がしますね。それにジェロームが言うにはカッポレが足の付きそうな場所に逮捕されるような証拠は残さないだろうと話してました。」

 「ふぅーむ。はぁ、、如何すべきか。」

 

 「あっ!?」

 「うん?」

 「どうした、ジョアン。」



 密造酒の販売や密輸、殺人などの犯罪行為を想わせるモノは隠されてしまうかも知れないが、本人が犯罪と思っていない事で調べてみれば如何だろう。

 俺は、真剣な目をして俺を見ているロバートマロウ捜査官と何処か楽しそうな品の良い老紳士のモリアーニ氏へ、思い付いたことを話し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ