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ロングロング  作者: くろ
59/85

No59 ファンタジック・ドリーム


    アリロスト歴1925年 1月



  昨年、ジュリアス皇太子と姪のエレインの婚姻の日程が正式発表されてから、それに促される様に、次々と婚約の纏まったカップルが婚姻ラッシュアワー状態で、グレタリアンは景気の良いピンク色に染まっていた。

 この景気がジュリアス皇太子の婚姻式の或る5月終わり頃まで続くようだ。


 課税の所為で婚姻が増えると言うのも、皇族と臣下の令嬢との婚姻と同じで新しい。

 不動産課税と累進課税のWパンチは、現金収入が少なかった正しき貴族家系を直撃し、資産を持つ商人たちや貴族との血の繋がりを求めていたエセ貴族たちとの婚姻を加速させたようだ。

 まあ、スチュアート3世時代に売官制度で一代貴族に成ったモノたちは青い血筋を求めていたので、渡りに船だったと言う。


 そして届けられた新聞に載ったエレインの写真は、俺が出会っていた若い頃の可憐で利発そうな義姉エリスことエリザベートにそっくりだった。



 そんな事を想いながら俺は左手に持って読んでいた兄からの手紙を読み返し、苦笑した。



 「パトの孫娘サブリナがデニドーア公爵家の養子に成った、、、。」


 兄には、(さぞ)かし苦痛なことだろう。

 娘エレインが皇太子と婚姻する事等忘れているような手紙だった。

 デニドーア外務卿って敢えて兄の嫌がる事をしているようにしか思えない。

 うん。

 ワザとだよなー、コレ絶対。


 婚姻式後、新郎新婦の互いの家族で過ごす食事会を想像して、俺は内心で兄に手を合わせた。






     ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 

   アリロスト歴1926年   3月




 ジュリアス皇太子とエレインとの婚姻式に始まり、ジョアンの友人アーベル・ルイスとウィルの娘レイチェル、クロエの長男ニックとシェリーの娘ヒルダが婚姻しても同じ5月に式を挙げ、俺的には婚姻に彩られた1925年が過ぎ、当分は婚姻式なぞ無くて良くねーかなとも考えていた。


 て、言っても今年の8月にはジョアンとミッシェルの婚姻式が或るんだけどな。

 ジョアンは此の儘で良いと言うのだけど、俺が遠慮したいんだよ。

 て訳で、まあ余りロッジ内をミッシェルにうろつかれたくない、って俺の個人的な理由でロッジの隣に去年からジョアンとミッシェルの新ゴシック様式な愛の巣を建築中。

 何処までもグレタリアン様式に拘る俺って、、、いや、これって単にネオゴシック調なロッジに合わせただけだし。



 

 そんな中で、ロンドから来た研究職風な容貌の補佐官クラークの御機嫌伺いつうか報告。


 「インフレに悩まされていたゲルン共和国もシュトーレン首相の手腕に寄り、新通貨を発行し上手く乗り切った模様です。不換紙幣にして一兆ゲルン=マルクを1レンマルクにしたそうです。ジェローム様。」

 「凄いね。乗り切れるもんなんだね、クラーク。」

 「ええ、正に魔術師ですよ、ジェローム様。返ってインフレに成らないかと心配していたのですが。去年、通過が安定した事を確認してシュトーレン首相は、1レンマルクと新たな通過1ライヒマルクを交換出来る様にし、1ライヒマルクに移行しました。」


 「此れで経済政策も打てるように成るな、クラーク。ゲルン共和国が破綻したらランダ共和国やギール王国やバンエル共和国、ポーラン共和国も引き摺られて大変だしな。他の安定してない国々も危なくなる。」

 「ええ、大きな国だったので、ジェローム様。


 「じゃあ、クラーク、懸念する国は今の所は無しなの?」

 「ふっ、ジェローム様、グレタリアンが懸念しない国があるとでも?」

 「何?クラークは、俺に報告したく無いのか?」


 「気のせいですよ、ジェローム様。先ず、可成り以前ジェローム様が心配されていたエデリアナの地ですが、クイラ王国とトランス王国へ住民を移住させて貰って、ソレが完了してからガロアの国に成る予定です。只、聖地は3分割され其々の聖堂が建てられる予定に成っております。クイラとトランスにはそれなりの見返りをグレタリアンと北カメリアが提供をする事に成りました。」


 「まあ、ややこしい事に成らないなら良いよ、クラーク。」

 「モリアーニ氏には、グレタリアンも北カメリアも国が買えるほどの資金を調達して頂いたので、デニドーア外務卿とエイム公爵が骨を折られたようですよ、ジェローム様。」

 「あの兄がモリアーニの為にクイラとトランスに頭を下げるかと思うと俺も感慨深いよ。」

 「ふっ、エイム公爵が頭を下げるなんてジェローム様の妄想癖も中々ですね。通信技術を回して終わりですよ。利益を得たかったら自国の商人から獲れ、と申していたそうです。」

 

 「あのさ、クラークは俺を下げないと気が済まないのかな?」

 「ふっ、気のせいですよ、ジェローム様。そう言えばチーズバロキア共和国とクラナド共和国もヴェイトと同盟を結び、共産国へ成りましたね。。」

 「ええー、クラナド王国も共和制に移行したのか、クラーク。あそこは穀倉地帯でもあり地下資源も豊富だっただろう。それに王国としてポーラン共和国に移行していた筈だけど?しかし豊かな王国だったのにいつの間に、共和国に成ったんだ。」

 「元はポーラン派の兄と自国派との後継者争いで揉めていたのですが、硬直した体制に不満を持っていた将校たちが、アッサリ王族を倒した後、ヴェイトの力を借りて、議会制に移行したようです。」


 「はあ、意味が分からないよ、クラーク。何故、自国の事を他国に委ねるかね、しかもヴェイトなんてさ。議会制と言っても一党しかないなら無意味だし。」

 「共和制にする前からヴェイトが入り込んで居たのでしょうね、ふふっ、コレだからジェローム様は。」

 「いや、クラーク、それ位は俺も判っているよ。つうか、何?俺をおちょくっているの?」


 「ふっ、気の所為ですよ、ジェローム様。そう言えば、此の秋にはジョアンの婚姻式があるとか。誠におめでとうございます。何でも相手はサマンサ夫人のご令嬢であるミッシェル様と聞きました。綺麗な義娘が出来てジェローム様が羨ましいです。禁酒法が無ければ祝いのお酒を是非贈りたかったのですが、本当に残念ですよ。」


 「いや、有難うクラーク。クラークの気持ちだけで嬉しいよ。気にしないでくれ。」


 「では、此れがエイム公爵からの報告書に成ります。急ぎますので私は失礼いたします。」


 そう言って、クラークは金属製の四角いケースを置いて、モスグリーンのアームチェアーから立ち上げり、細面の顔に掛かった銀縁眼鏡の細いフレームを右手の人差し指で押え、クロードから受け取ったグレーの毛皮のコートを羽織り、艶の或る重厚なオークの扉を開いて、「ふっ」っと笑い、俺の聖域から足早にヨークへ向かって出て行った。



 あっ、ちくせう。

 クラークめ、俺を笑って出て行きやがった。

 小ルドアと呼ばれて旧ルドア帝国と近しい国だったクラナド王国が、ヴェイト(旧ルドア)の影響を受けない筈もなく、勢力を広げたいローソン代表が何もしない訳もない。

 大国の都合だけでヴェイトに勝ったポーラン共和国へ国王在任の侭、勝手に移譲されたクラナド王国だったけど、国に住む人間にはソレで済む筈もない。

 矢張しこりは残った状態だったのか。

 クラナド王国は盤上を動かす大国で無かったので遂、見逃してしまう。


 ただ、その情報を知っていたとしても、ポーラン王国とルーニア王国トルゴン共和国に囲まれているクラナド王国、今はクラナド共和国に何かが出来る程、デニドーア外務卿や外務の人間も手は長くないだろう。

 東ヨーアン地域は、全てヴェイトと同盟汲んだ方が安定するのかもな!って思わなくもない。

 ヴェイトは、秘密警察も居て強権的だと言われているけど、まあ、ソレは現在姿を隠しているだけで、何処の国でも存在しているからな。

 サイレンスな国営のシークレットサービス?


 此の北カメリア北部も酒の販売禁止とか、強権的な事を遣っている訳でさ。

 いい加減に大国呼ばれる国も他国を勝手に分割やら移譲するつう考えを捨てた方が良いと思うけど。

 結局は揉めれば余計面倒な事に成るんだから。



 でも、まあゲルン共和国の経済が安定して来て良かった。

 縮小したとはいえゲルン語圏て広いから、下手したらまたヨーアン諸国全体の経済に影響して来る。

 体制を変えた国が多いから、余りマイナスな刺激は与えて欲しくは無いんだよな。

 北部に居るゲルン共和国の資本家も此れでホッとして金儲けに精が出せるし、北部の連合国政府も経済に水を差さずにいれて安心した事だろう。


 

 そんな連合政府はプリメラ大陸へ早く行く航路としてバナン島近海の通行許可と水と食料補充の為の港へ寄港する許可をカレ帝国とモスニア帝国へ求めて来た。

 半年ごとの契約で一定の使用料を支払う事で国際連盟での話はついた。

 モスニア海軍の北カメリア北部海軍への威嚇攻撃は正統なモノと判断もされた。


 一応は、ゲルン共和国の資本家達の所有するプリメラに或る会社や商会の確認ていう話だけど、恐らくは個別にグレタリアンと話し合うのだろう。

 今、グレタリアン帝国とグロリア王国とヨーアン諸国に復帰したランダ共和国が小競り合いをして、所有権を争っているキャメル王国やジェリア王国など南西プリメラ辺りを北カメリア北部も協力する事によって、グレタリアンの領有を有利にしようと言う秘密外交執り行ったのだろうなと推測出来る。


 グロリアは元々プリメラを植民地化する権利も無いし、本気で争えばきっとグレタリアンが勝てるだろうと思うけど、まあ今は選挙民に納得させる理由も作れない。

 特に南プリメラを得る為の戦争は当時グレタリアンのサーブ植民地首相だったトリス・ローデ氏が仕組んだ事柄が多い事が有権者にバレてしまい、プリメラへの出兵は大きく出来ない案件に成っていた。

 で、現植民地大臣も噛んでいるのでは?と言う疑惑も囁かれているので、余計に邪魔だからと言ってグロリアを叩き潰せない形だ。

 まあー、この情報のリークがゲルン共和国側から出された物と思われるのだけどね。


 兎角、政治は生臭く面倒なモノである。


 ランダ共和国は今まで散々自分の植民地をグレタリアンに奪われて来たからなー。

 取り合ず、グレタリアンへずっと返還要求が出されている南カメリア西部に或る植民地を返す事で、何とかなると思う。



 しかし、グレタリアンて結構今も派兵して居るんだよね。

 カレッジに通って居る者以外は21歳から1年間(戦時にはこの期間に非ず)の徴兵制だから。

 ゲルン共和国の北東に位置する島やキート軍港にへグレタリアン海軍や陸軍の駐軍、そしてトルゴン帝国から独立した国々にも派兵、アシェッタ王国、トランス王国、クイラ王国、パレス諸島、南プリメラ、エデリアナ国、南カメリア、イラド、アガスタン王国等々。

 派兵した分の戦費を植民地に支払わせたりもしているグレタリアン

 無線が使えるように成ってグレタリアンの世界はマジで広がった。

 最終目的地は真龍国の模様。



 つう訳で真龍国にガッツリ入り込みたいグレタリアン。


 だけどグレタリアンは、1700年代半ば真龍国で、天然痘と言う疫病を広がらせた張本人なので、未だ真龍国に本国には入れず、フロラルスやランダ国が居住している珠湾島で、お情けで商館を置かせて貰っている状態だったりしていた。

 近くの陽の本では、白崎藩の出島に商館をおいて通商を行っていた。


 幾度か攻めに行ったけど撃退されたんだよね。

 今は大人しくグレタリアンは、米や茶葉、樟脳、植物なんかを輸入取引して居るらしいけど。


 まー、真龍国では俺がグレタリアン海賊を撃退して居たので何とも言えないけどさ。


 でもってグレタリアンも軍事技術力も上がったし、アーリア大陸を分捕りに行けと、金融資本をバックにした資本家達が議員達の背後から鼓舞したりしている。

 グレタリアンが御しやすい了民族は、今の真龍国に居ないから、案外と難しいと思うけど。



 つう兄の報告書をザックリと読んだ俺の感想だ。

 グレタリアンの世界が広がり夢を広げる空想的なグレタリアンの世界地図。

 まあ、此れを達成しようと思うと、補給地の確保でモスニアは邪魔なのだけど、さて、どんな方法で追い払う気なのか、興味はあるけど、俺的にも前世での祖国・真龍国は攻められたくはないんだよな。

 実際の所。

 イザと成ったらモスニアをじゃ無く、フロラルスを守りたいウィルと俺が企むか。

 その前に、兄と相談して真龍国と、クロエの前世の祖国陽の本を、ナントカ守れるような話をするべきか悩み所。



 ファンタジックなブルジョワジーの見る夢は、やっぱりゴールドなのかね。

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