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ロングロング  作者: くろ
36/85

アンサー



   アリロスト歴1920年  5月




 リノって人の息子さんでニノって人に俺は蒸気自動車の運転を教わっている。

 リノって人はロンドに或る南セントラルの執務邸でエイム公爵の従者を務めていると言う凄い人だ。

 俺自身は執務邸へ行った事はないのだけど。

 って、言ってもニノも若くて18歳なんだよね。


 「俺の兄って美形しか雇わないんだよな。」


 そうジェロームが言う通り、イエローブラウンの髪に透明な青い瞳で少しヤンチャそうだけど、モテそうな美少年だ。

 俺の基準値はマイケルで、マイケルより若く見えると少年に成り、マイケルと同レベルの整った容姿だと美少年に成る。

 其処は拾い主のジェロームが基準値に成るのでは?

 って問われそうだけど、ジェロームとエイム公爵は人間に含めては駄目な気がするんだ。

 と言うかジェロームを基準値にしたら、世の中は平均値以下の人間しか存在しなくなってしまう。

 それはそれで寂しいと言うか、俺自身が髪を整えたり髭を剃る気力が湧かなくなるので、俺の中の男の基準値はやっぱりマイケルだな。



 でもって蒸気自動車の駆動練習って言うか運転練習は、蒸気機関が苦手なジェロームからストップが掛かっていたんだけど、ウィリアムから「ジョアンの遣りたい事は止めないって言ったよネ。」と話して呉れて、無事に練習開始が出来ることに成った。

 蒸気自動車の運転を止めていた理由を、後でセイン博士が教えて呉れたんだけど、どうもセイン博士が運転の練習をして居て、大きなオークの樹木へぶつけて怪我をした所為だったとか。

 ぶつけた樹木を見せて貰ったけど、切られて可哀想な切り株に成っていた。

 オークの樹木はセイン博士を傷付けた罰として切り倒されたらしい。

 でも広いあの道路から、如何してあの樹木にセイン博士が蒸気自動車をぶつけたのか、今でも俺の謎は残って居る。

 誰かアンサーカモン。

 何やらこの事故の事は屋敷内ではシークレット案件に成っているらしく、俺が尋ねても皆は目を宙に逸らして答えて呉れないのだ。

 セイン博士も自分で運転するのは諦め、車を使用する時は運転してくれる人を呼ぶらしい。

 


 蒸気が出て駆動する迄は少し時間は掛かるけど、走らせ始めると中々に快適だ。

 乗馬とはまた違う爽快感が或る。


 蒸気自動車を買う前、グレタリアン製と北カメリア北部製どちらの車を買う事にするか悩んだけど、やっぱり箱型のグレタリアン製にすることにした。

 此れも後で知ったのだけど、グレタリアン製の車を買うと関税と税金が無茶苦茶に掛かっていた。

 資金は俺用の銀行口座から支払った。

 実は俺がデルラで小姓に成った日から、賃金が支払われていて、毎年上げて言って呉れていたので、結構な額に成って居たのだ。

 俺って大学行っていただけの気がするのだけど。

 溜めているだけだとお金が死ぬので、偶には使いなさいとジェロームに言われて俺は購入を決めた。


 その間にウィリアムから、「僕に任せて」と、謎の買ってやるプッシュが来たので、俺が幾度断ってもウィリアムは引かなかった、、、ので、ジェロームが沈黙させた。

 俺はウィリアムを背後から蹴り飛ばして止めろっ!とは言って無いからね、ジェローム。



 って言うのが俺のここ最近の話。



 4月に成ってデイジーは無事に女の子を出産して、マイケルは可憐なパパに成った。

 儚げでつい守ってあげたくなるような風情はパパに成っても変わらないマイケル。

 思わず俺が飲んで居た砂糖ミルクを飲ませて上げたくなる。

 ジェロームが俺に砂糖ミルクばかりを飲ませて居たのはこんな気持ちだったのかも知れない。

 ついリオンにその話をしたら、暫く考えて「やってみましょう」と俺に告げた。

 「えっ?」

 そうリオンに問い掛けようとしたら、一陣の風と共に消えていた。

 、、、え?、、えええー?



 後日、しょっぱい顔をしたマイケルから俺は睨まれたけど、御免、チョット笑えた。



 レッツ・コミュニケーション。

 って事で、日々、サラームと互いに言いたい事を話して居ると、ジェロームが肩を震わせ笑っていた。

 其処で欲しいモノを互いにノートへ書いて、当てっこする事にした。

 サラームはオシリス語も書けなかったので、絵で描いて貰うことにした。

 でもって、俺が書いたグレタリアン単語をサラームは覚えてもらい、俺は、サラームから絵と発音で教えて貰って、オシリス語を覚える事にしたけど、先ずサラームが何を描いているのか分からない。

 そんな苦悩の毎日を過ごして居ると、休憩時間にクロードとサラームが、普通にグレタリアン語で会話していた。


 「なっ、何でだよ、サラーム。グレタリアン語が話せるのかよー、俺に話してよ、もう。」

 「ええー、だってジョアンは、ボクからオシリス語を習いたいって言ってたから。」


 なんてことはなく、俺がジェロームの用を熟している間に、クロードがサラームへグレタリアン語を教えて居たのだ。


 「ジョアンは全く駄目ですね。幼い頃、私がジョアンへ教えた通りにすれば、直ぐにサラームも覚えたのに。教えていた私は少し切ないですよ。」

 「いや、そのー、御免クロード。俺ってあんまり、その頃の事を覚えて居なくて。なんか食べたいモノとかあったら、サラームも直ぐ言葉を覚えるかなーって思い付いてしまって。」


 「ふふっ、良いんだよジョアン、ジョアンはそれで。俺は、中々に楽しい1ヶ月を過ごさせて貰ったからさ。サラームは敢えて態とやって居ただろう?ねっ?サラーム。」

 「はっ、はい。ジェロームさま。3ヶ月も毎日ジョアン達が居たあそこへ通って居たら、単語は少しだけど解るように成りました。ジョアンが面白くて、つい。ごめんなさい、ジョアン。」

 「はっ?もう酷いよ、サラーム。先ずは言葉を覚えないと、次に進めないと、俺は悩んでたのに。」

 「ごめんなさい、ジョアン。オシリスにボクを戻す?」

 「戻りたいの?サラーム。」

 「ううん、戻りたくない。もう面白い事はしないから、ごめんなさい。」

 「はぁー、いいよ。もう、サラーム。」

 「ふっ、話が付いたみたいだから、ジョアン、おいで、珈琲を飲もう。サラームは、クロードに砂糖ミルクを入れて貰いなさい。」

 「はっ、はい。」


 サラームは、しおしおとクロードと一緒に、木目の壁と馴染んでいる隣室の扉を開けて、クロード達の控室へ入って行った。


 うん。

 ジェロームは相変わらず痩せている子供には、砂糖ミルクを与えるんだな。

 そう思うと俺は懐かしくなった。

 決して飲みたいとは思わないけどね。

 俺がジェローム探偵事務所での日々の記憶が曖昧なのは、朝と午後の砂糖ミルクの不味さの衝撃を耐え続けて居たからだと思うんだ。






 


 

   ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



  アリロスト歴1920年   6月






 何だかんだと煩わしい事もある中で、ジョアンとサラームのピクチャー・ランゲージ・ゲームは俺の癒しだったけど、まあジョアンにバレてしまったのでは仕方ない。



 ジョアンがランクアップの旅に出ている間に、グレタリアンでは選挙法が改正され、21歳以上の男性は選挙権を与えられ、女性も30歳以上の戸主若しくは戸主の妻で一定の税金を支払って居る者に選挙権が与えられることに成った。

 選挙法改正に否決ばかり出す上院への大衆の抗議デモが、議会堂やバレン宮殿を取り囲み破壊活動まで及び初め、議会で議員達やスチュアート4世も居たのでビビって、通過させたってのが真相みたいだ。

 400万から一挙に2500万人以上へと選挙権は拡大された。



 そして選挙は今年7月に行われる。

 トラッドランドでの議会設置の是非を問うって言うことに成って居るけど、不動産課税他の増税の是非を問うって事だったりする。

 国民保険の為と言うよりも、先の大戦で掛かった莫大な戦費を補う為でもあるし、細々とした税では如何にも成らないのだろう。

 そして此の選挙準備期間に兄たちは、ヴェイトの活動家が入り込まないか警戒を強めていると連絡があった。

 まー、他のヨーアン諸国と違ってグレタリアンは島国なので、ホイホイと気楽に入国は出来ないつうのが助かっているとのこと。

 どっちかと言うと北カメリア南北へヴェイトの活動家は入り込んでいるそうだ。

 そりゃそうだ。

 輸出入業務はヴェイトと普通に遣り取りして居るんだもの。

 (さぞ)かし入り安かろう。


 

 それなのにヤング元大統領は、気楽に無線通信を本邸に送って来やがるんですよ。

 俺の代わりにウィルと通信させている。

 ウィルとヤング氏なら話も合いそうだし、(ついで)に顔の広いウィルが、ヤング氏の再婚相手でも探して遣れば良いと俺は思う。

 つうか、ウィルは嫁を放置で良いのかね、て、今更か。

 

 でもって俺を何やかんやで政治に関わらせようとして来るんだよ。

 先日も「しれー」っとヤング氏を連れて来て、グレタリアンから司法の権限完全移譲させる方法を、アドバイスして欲しいとか言って来るし。

 面倒だから俺はヤング氏に、ナユカ連邦国と一緒に活動すりゃ良いじゃんって話して於いた。

 元植民地に纏まられるとグレタリアンはイラドの件も合って案外と面倒がる。

 金融の方は兄も絡んでいるから難しいと思うし、それにモリアーニが居たら北部政府の好き勝手にはさせないだろうしな。


 心情的にグレタリアン派ってのも北部にも残って居て、血筋的に本家はグレタリアンに未だいるって人もポツポツ残って居る。

 粗方は南部へ行っているけどね。

 そしてゲルン共和国って名のプロセン連合王国もブルジョワ政権の議会制民主主義なので北部とも相性が良いらしく、此の侭の関係が続けば親ゲルン共和派って派閥も構築が出来そうだ。

 

 現在はボロボロのヨーアン諸国への輸出が盛況で北カメリア南北の独り勝ち?いや2国勝ち状態。

 だから北カメリアなんか放置で良いじゃんと、俺は思っているのに、忌々しいウィルが政府関係者を連れて来る、ホント面倒臭い。

 つう訳で、ランクアップして帰って来たジョアンは、俺の傍でも寛げる様に成ったので、俺の横に居させて客の応対をさせている。

 知識不足は仕方ないので偶にフォローをし、応対させると俺が安らぐジャックに似たハスキーボイスと独特の間で、俺の精神も安定するし、ジョアンは相手の立場で真摯に応対するので来客も満足のアンサー、なのにこのお値段って感じで俺が〆て、俺の聖域から退出を願っている。

 ジョアンは考えながらポツポツと話すので、俺の可愛いセインのようなエアークラッシャーにも成らない。


 この状況に一番喜んでいるのはウィルかも知れない。



 そんなセインは怪我が治ってから、週5日の講義を受け持つ様に成ってしまった。

 『男はやっぱり仕事だよね。』

 って言う、セインの妙な矜持で、頼まれていた教授職を受けてしまったんだよなー。

 案外早く終わった俺のラブイチャ三昧の日々。

 若い男子学生に囲まれてキャッキャッウフフな毎日の方を選んだセイン、ちくせう。


 まー、ロンドじゃハードワークな日々だったのに、デルラだとウィルのボケとか、その連れとか、兄の配下(ハイカ)ーズ来る時以外は、俺とまったり茶飲み話でボーっとしているってのに慣れなかったのかもな。


 そんな事を忘れた頃にクロエから「セインとの新婚生活は如何?」と能天気な手紙が来た。

 そんなモノは、セインが来て2ケ月で終わったよ。

 しかも2週間はセインは蒸気自動車事故でベットの上だよ。

 俺もベットは好きだけど、怪我人となんかラブイチャ出来るかーっ!

 そう内心で俺は吠えて、クロエの手紙を破りたくなったけど、続きがあったので理性で抑えた。

 

 『電話が欲しいよ、ジェローム』


 可愛く文末にハートマークとか書いてるけど、クロエ、君は62歳だよね。

 元よりグランマで精神的な貫禄バリバリあるから、俺には可愛くねーし。

 そう言うのは溺愛して来る夫のルスランだけにしてよ。


 電話機だけをクロエに送ったら怒るだろうな、面白そうだけど。

 物欲の殆どないクロエからのお願いだし、聞いて遣るかー、しょーがねーな。

 俺が緑藍時代から腐れ縁だし、クロエはジャックと同じ日本って言う前世の記憶も在るし、懐かしくて欲しくなったのかもな。



 そう思ってクロエに「了解」って引っ越し先の離島へアンサーを送った。

 当然、兄へ手紙でクロエの所に電話線を引くお願いをした。

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