タイトル未定2024/08/17 23:26
地方大会決勝。8回表9点差。投球数126。おまけで気温33.6℃。
誰がどー考えてもピッチャーを変えなきゃいけないのは分かるだろう。
「十八!相良に代われ!」
キャッチャーの万がなんと言おうと俺は9回まで投げる。
監督は俺の病気の事を知っているから何も言わない。
「最期の夏なんだよ。悔いのないようにやらせてくれ」
「そうだな!3年だもんな!俺もそうだ!俺も悔いを残したくないから代われってんの!」
こいつの最期ってのは最後だろ。俺は最期。
この数カ月後か数週間後か数日後か数時間後かに俺は死ぬ。
俺は『十八病』だ。
致死率99.4 %。十八歳で死んでしまう治療法のまったくない病。
親も十八だなんて皮肉な名前を付けてくれたもんだ。
俺は春に18になった。
いつ死んでもおかしくない。
「先輩!自分に投げさせてください!」
「相良!出しゃばんな!」
「お願いしゃっす!」
相良。いいなぁ。お前は来年も投げれる。
来年も生きれる。
昨日の夜にごっそり髪の毛が抜けた。
カウントダウンは始まっている。
あーあ。せっかく髪型自由の野球部に入ってパーマをかけたのに病気でツルツルになって俺は死ぬのか。
相良の後ろに束ねたキレイな黒髪が憎い。
負けたら終わり。この緊張感の中にいる内は俺は死の恐怖を忘れられる。
高校最期の試合のマウンドに出来るだけ長く居たい。
「とにかく俺はまだ投げる。万。早く戻れよ」
しかし万ってなんだよ。長生きしそうな名前しやがって。
ジャガイモみたいな顔で茶髪にしてんじゃねぇよ。
坊主にしろ坊主に。
「なぁ十八。俺たちは3年間バッテリーだったよな?」
泣き落としの臭いがする。
「質実剛健。3年間。毎日野球野球でさ。これで大学に行けるか不安だし童貞だしな」
「俺は童貞じゃないぞ」
「はっ!?マジかよ!?いや。それはどうでもよくて……」
「何がいいたいんだよ」
時間を掛けられるとヤバい。
3年間の思い出が頭をよぎり始めた。
泣きそうだ。
「俺達花の18歳。夏はまだまだこれからじゃん?ここで肩を壊したらどーすんのって話!仲間を信じろよ!」
呆れた。
夏はまだこれから?このマウンドを降りたらもう俺の人生は終わりなんだよ。
キラキラした目で見るな。
「俺達が信用できないか?」
「……」
信用できない訳ないだろ。
3年も2年も1年も同じ夢に向かって努力して来たんだもん。
寮暮らしでさ。家族みたいなもんじゃん。
みんなで甲子園行きたかったよ。
お前ら集まってくんな鬱陶しい。
最期の我儘に巻き込んで悪いと思うけどさ。
俺は最期まで投げるからな。
どうした?皆の声が遠いよ。
あれ?俺倒れた?
太陽が真上にある。眩しい。
なんだよ。今かよ。
怯えながら死ぬよりはマウンドで死ぬ方がマシか。
遺言……いざとなると出ないな。
色々考えてたのに。
「……9点も取られちゃってごめん」
ダセェ遺言。
最期に謝れて良かった。
「任せろ」「任せてください」
「お前は諦めるのがはえーのよ」
救急車のサイレンの音が聴こえてきた様な?
手遅れだけどな。
◯◯県代表は◯高に!
決勝は死闘と呼ぶに相応しい試合だった。
8回に3年生エースの國崎が熱中症で倒れるハプニングもあった◯高だが8回、9回の攻撃で9得点。同点に追いつきタイブレークへ。
14回ウラにこの試合初めて1点をリードした◯高。
15回オモテ。最後は8回から交代した2年控えの相良が気迫の三者三振でピシャリと締めた。
◯高。甲子園へ出発。
初の甲子園出場となる◯高ナインの送迎会が行われた。
髪型は自由の同校だが、全員五厘の丸刈りにして初勝利への気合をアピールか。
主将の垰田万君「まぁ暑かったので何となくですよ」
◯高1回戦で散る。
甲子園初出場の◯高。優勝候補の◯学に1✕0で敗れる。
甲子園初勝利の夢は後輩達に託された。
2年。投手。相良君「必ず来年もこの舞台に帰ってくる。先輩達にはぜひ応援席で初勝利を見届けて欲しい」
3年。伝令係。國崎十八君「生きていたら見に行きます。アハハ」
出場出来る確率は0.6%といわれる甲子園。
来年の◯高は再び0.6%の『低くて高い壁』を乗り越えられるのか?