will
次の日の夜、私の身体は活動を開始した。やることはすでに決まっていた。
終わらせよう、何もかも。
私はその場所に来ていた。色んな種類の花束が添えられている。誰かが死んだという暗示だった、暗黙だった。
「…………死んだんだね」
そう呟いた瞬間、涙が頬を流れて地面に落ちた。夜だというのに、熱かった。
「なんで………なんでッ、なんで約束を破ったの………」
ずっと、あの場所で待ってたのにッ!
「遅刻なら許せたのにッ!! 遅刻の方が断然マシだったのにッッ!!」
久しぶりに憤りというものを感じた、今まではそれさえも認識していなかったから。
「…………今から、会いに行くよ」
私は左から走ってくる眩い光に向かって飛び出した。
貴方と同じようにこの世から消えれば、会えるかな………
この世から、消えたかったのに
「……………………なんで」
どうして、貴方がここに居るんだよ…?
「No………don't kill yourself…!! what should I do if you die, too!?」
興奮しているのか、難しい羅列を並べるアルカディア。
「I'm did leaved alone not only by bro but also by you!? you are my will……my will to live!」
……………あぁ、彼の言ってることがわかってきた。
「…………僕も、二人が好きだった。兄さんも、君も、同じくらい好きだった。だから君の気持ちは死ぬほどわかる。でも、まだ全てを失ったわけじゃないんだ」
「……………私、のこと?」
「そうだ、そうだよ………どうしてそんな簡単なことにも気づかないんだ君は!」
「………………私は」
「………幻さん、君は僕にとって生きる意味になっているけれど、僕は君にとっての生きる意味にはなれていないの? やっぱり、兄さんじゃないとダメなの?」
………そんなはずはない。
私自身、そう思っていた。
二人共同じくらい大事だから、なのにどうしてなんだろう?
どうしてこんなにも身近に居てくれた彼の存在を私は見向きもしなかったんだろう?
そんな自分に腹を立てながら私は彼に聞く。
「………………もういちど、言って。エルドラドは、もう………居ないの?」
「……………うん」
「…………本当に、死んじゃったの?」
今でもまだ嘘なんじゃないかって考えている自分が居る。だから私は聞かなきゃいけない、偽なのか真なのか。
「………居ないんだ………もう居ないんだよ………僕達の大好きな兄さんは………もう…………居ないよ………」
その刹那、枯れたと思っていたその瞳から涙が溢れた。
「…………今、僕達のやるべきことはここで蹲ることじゃない。現実を逃避することじゃない。………兄さんを忘れないことだ、それが僕達の出来ることだ。下を見続けることなんて兄さんは決して望みやしない。前を見続けろって言うはず………だって、兄さんは僕達の幸せを望んでるんだから!!!」
もっと、涙が溢れた。
「大好きだったんだ………心の底からエルドラドのことが………恋人として、家族として………本当に、本当に大好きで…………それと同じくらい貴方のことも好きだったのに…………何で忘れていたんだろう………ごめん………ごめんね………二人とも愛していたのに……エルドラドがいなくなって何かが壊れて………貴方にイライラしちゃって……………ごめんね………ごめんねっ…………」
「良いんだ……それよりも今は兄さんのことを想おう……」
大切な人がいなくなった。
けれどそれでひとつわかったことがある。
そうだ、私にはアルカディアが、家族が居た。
私の為に……今まで……今まで生き続けてくれたんだ。
だから、ありがとう。そして、さようなら。
エルドラド………そっちに逝くにはまだ時間がかかりそうだよ。
ごめんね、用事が出来ちゃったんだ。でも貴方ならきっとわかってくれるよね?
私が望んだように。
彼が望んだように。
貴方も望んでいたんだよね?
だから、私は受け入れよう。幻実を見るのはやめてそれを乗り越えよう。
だから、おやすみなさい。また会う日まで。
ねぇ、兄さん。約束が果たせそうなんだ、今彼女を幸せに出来そうなんだよ。
だから、もう良いよね?
泣いても良いよね?
兄さんの為に、泣いても良いよね……?
大好きだったよ。あんな状態でも僕達のことを考えてくれた兄さんが僕は大好きだったよ。
いや……今も大好きだよ。
だから、見守っててほしい。これから僕は……僕が、彼女が幸せになる為に行動する。兄さんのように、彼女を幸せにするからね。