コロナ渦、幼馴染みにあげるチョコ
綺麗に包装された市販のチョコを選んだ
製菓材料の特設コーナーもあったのに
後ろ髪を引かれる
本当は自分で作りたかった
チョコレートのかたまりを刻んで
ボールに入れ湯煎にかけて
自分の心ごと、チョコレートに溶かして混ぜたかった
教室で、あいつに声を掛ける女の子
あぁ、あれはきっと手作りのチョコ
透明のラッピングから覗く、少し歪な形が手作りの証拠
自分の鞄の中にある、形の整ったチョコではきっと何も伝わらない
「ごめん。今、蔓防出てるし、流行ってるから。うち飲食だし、家族もかなり気にしてて」
受け取らなかった
ホッとした
でも、あの子も、私も、断られたのは同じ
声を掛けることもなく、断られた
帰り道、鞄の中身をどうしようかと考えながら
ううん、きっと考えてなんかいない
考えるのが嫌だったから
私もせめて声を掛ければよかっただろうか
学校で会話できるチャンスだったのに
たとえ断られても、堂々と話せたのに
「痛っ」
鞄が頭に降ってきた
空飛ぶ鞄が降ってきた
普通に痛い
「なぁ、俺のチョコは?」
「……あげるチョコなんて、無いもん」
嘘
こいつのために買った
頭、痛い
「嘘つけ、持ってんだろ」
「貰わないんでしょ?」
「既製品なら貰う」
「……もし手作りだったら?」
「去年は既製品だったろ。今年もお前なら既製品をくれる」
当たり
市販のチョコ
お金で買っただけの、綺麗で美味しいチョコ
「……来年、もし収まっていたら、手作りでも食べてくれる?」
「食べさせてくれる?」
来年はたっぷり心を溶かして手作りを
愛情込めて、手間かけて
私の手から、こいつの口に