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ラブホテル、始めました。  作者: 日暮 記
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001 プロローグ

 指定した2時間が経過したと同時に、一組の男女が部屋から出てくる。

「急なお願いですみませんでした。これ、いつもより少し多く入れてありますので」

 男の方が懐から茶封筒を取り出す。確かにいつもより、ほんの少し厚みがあった。

「そんな、困ります。時間と値段を均一にしているから、誰にでも安心してご利用いただけるようにしているのです。どうか余剰分は財布に戻されてください」

「いえいえ。だって前の人が出てすぐだったじゃないですか。何かしら片付けや準備の時間も必要でしょうに、余計にあわただしくさせてしまって―」

 僕は申し訳なさそうにする男の言葉を遮るように、自分の手のひらを男の顔の前に出し、静止のポーズをとった。

「うちは事前予約なんて受け付けていませんし、皆様がきれいに使用してくださるので片付けの手間もほとんどかからないのです。ですので、指定した2時間分の代金のみお支払いください」

「……そこまで言われてしまったら、では、お言葉に甘えて」

 茶封筒から男は1万円札を3枚取り出し、財布に戻した。それだけで通常利用10人分に相当する金額だ。とても受け取れない。

「じゃあ、はい。2時間で3300円。確かに渡しましたよ」

「……はい、確かに受け取りました。また何かあればご利用くださいね」

「はい、またきっとぜひお願いいします。では」

 男はそれまで背中に隠れていた女の手を引いて、さっさと階段を下りていく。カン、カンと金属階段特有の響きが開放廊下にこだました。


 僕は、大学近くの自分のアパートを、主に性行為を行う男女に貸し出している。簡単に言えば、完全個人経営、一室のみのラブホテルを、自分の小遣い稼ぎに利用しているのだ。

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