できること
マイヤーを埋葬してからサンディ王都に向けて貧民街を出た。
しかし重要な問題が差し掛かる。お金が無いのだ。
正しくは金銭はマイヤーから貰ったのがあるのでしばらく飢えに苦しむことは無いのだが、それが尽きたあと、どうにかして稼ぐ手段が無い。
特別な技能があれば話は変わってきたのだろうが生憎と聖剣とマイヤー仕込みの剣術しかない。
純粋な武力のみを求められ、出自に左右されず、市街地で暮らしていけるような仕事などそう簡単にはない。
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「とりあえず、食い扶持を探さなきゃ。」
片道凡そ徒歩四時間、『イルリカリ』の街に着いた。
貧民街と見比べてメインストリートは均した石で舗装されている上、清掃も行き届いており清潔感は比べるまでもない。馬車が行き交い活気に満ちている。
そして街ゆく大人の三割程が何かしら聖剣を帯剣している。これも聖剣を持つものが殆ど居なかった貧民街とは明らかに違う点である。
「条件はまず住み込みであること、あと......俺が働ける事。」
都市部への出稼ぎを装うしかないが、そういった力任せの土木作業は一六〇センチに満たない子供の背丈では到底任せられようもない。奉公の様に伝手も無い。
「聞くしかないか。」
食事がてらに人に話を聞くため、比較的値段の安い都市外郭部へと足を向ける。方角はどの道円形状に広がるこの街を一周するので結局はどこでもいいが、住民宅が多い西へと舵を取る。人が多いほど情報は多い。
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街の中心部から西へ進むが外郭部に進むにつれて行き交う人の生活レベルが変わっていくのが目に見えてわかる。
道の交差点を四つ五つ過ぎたあたりには既にごく一般的な平民の住居が居並ぶ住宅街へと変わっていた。
店舗は数を減らし、またどこかの商会が運営する大規模な小売店から個人が経営する小規模な商店の率が変わっていった。
「ごめんください。」
入ったのは西の最奥、目の前に広大な農耕地が広がる大衆向けの食堂である。時間帯が昼時ということもあって、近くの工場や農場で働く人々で店内はよく賑わっていた。
「いらっしゃい!ご注文どうぞ。」
「パンとスープ、安いので。」
「パンとスープのセット一人前、ありがとうございます!」
おそらく家の手伝いであろうハキハキとした女の子がメモをとって厨房へと消えていく。
(十歳ってとこかな。ウチの年少組と同じくらいか。)
パタパタと走る年下の少女を見てサンディは懐かしい気分になっていた。
たまに表皮の混じったパンと芋のスープが木盆に載って運ばれてくる。
食事を運んできた少女に聞く。
「ちょっと良いかい?仕事を探してるんだけど、お父さんお母さんに話を聞けないかな?」
「へ?お仕事ですか?多分ウチは無いと思いますけど......探しているなら南区広場に掲示板があるので行ってみては?」
「ありがとう。行ってみるよ。」
素朴な食事を取り終わりサンディは南へと向かった。