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読書の時間  作者: 雨世界
1/1

1 あなたの好きな本はなんですか?

 読書の時間


 プロローグ


 あなたの好きな本はなんですか?


 本編


 ……君は今、なにを考えているのかな?


 秋の季節


 茂木典子 小学校六年生 お嬢様

 

 読書の時間ですね。(だから、もう少し静かにしてください)


 季節は秋。月は九月の終わりごろ。時刻は放課後の時間。小学六年生の女の子、茂木典子がいつものように図書室で一人、担任の先生から許可をもらって居残りをして、大好きな本を読んでいると、がらっという音がして(ノックの音もなしに)突然図書室のドアが開いた。

「あ、いたいた。典子ちゃんいた。もー、ずっと探してたんだよ。こんなところにいたんだ」

 と、夏の太陽のように明るい、きらきらと眩しい笑顔をした典子と同じ六年一組の教室の女の子、小森木香はそういった。

「なにかあったの?」

 読んでいた本から顔を上げて木香を見て典子は言った。

「あ、典子ちゃん。なんの本読んでるの? この間言っていた難しい本?」

 木香は典子の言葉を無視して、典子の前の席のところまで小走りでやってくると、本を読んでいる途中だった典子を見てそういった。

 このとき典子が読んでいた本は、確かに木香に話をした難しい哲学の本だった。ただ、この本を読む前に典子はお気に入りの『君のことをずっと思う』という題名の恋愛小説を読んでいた。その本を読んでいるときに木香が図書室にこなくてよかったと典子は冷静に振る舞いながら、心の中でそう思ってほっとしていた。(そんな本を読んでいるところを木香に見られたら、きっと木香はその顔を真っ赤にして恥ずかしがってしまうと思うから)


「小森さん。用件はなに?」

 無表情のままで典子はいった。

「木香でいいよ。典子ちゃん」

 にっこりと笑って木香はいった。


(……そんなことを言われても困る、と思いながら)典子は木の香に「用件はなに? なにか用件があるから、私を探していたんでしょ?」と木の香を見て典子はいった。

「うん。そうだった。あのね、典子ちゃん。先生が呼んでいるよ。なにか大切な頼み事が典子ちゃんにあるんだって」

 とずっと椅子に座らずに、木の長テーブルの上に両手のひらをついたままで立ったままでいる木香はいった。

「先生が? ……わかった。すぐに行きます」

 そう言って典子は読んでいた本を音もなく閉じると、椅子から立ち上がって、本を元あった本棚の場所に戻して、それから隣の椅子の上に置いておいたいるかのストラップのついている赤いランドセルを背負って、さっきまで(木香が来るまで)自分一人だけだった静かな図書室をあとにした。

 典子がそんな風にして動いている間、木香はずっと無言のまま典子のあとについてとことこと歩いていた。


「風花先生はどこにいるの?」

 図書室を出たところで典子はずっと自分についてくる木香に言った。

「音楽室だよ」

 にっこりと笑って、木香は典子にそう言った。

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