1章-8
そんな話をしているとノヤが戻ってきた。
「今じっちゃんに見てもらってるけど、やっぱりすぐにはわからないってさ」
「……ノヤっちお疲れ」
「お、さくらちゃんおつー!」
ノヤがさくらをハグして頭を撫でまわす。
「……うう、やめろー」
さくらはノヤの手を振り払おうともがいているが、なぜか無表情なので嫌がっているのか喜んでいるのかよくわからない。
まあ、本気で抵抗している感じではないけど。
「それで、廃工場はどの辺にあったんだ?」
「北千住のあたりだよ。駅までは地下鉄の線路で進めるんだけど、そこからが大変だったよ」
「なるほど、あっちは確かにあまり探索できてない地域だな」
「最近までロボットばっかりで近寄れなかったからね」
「ちょっと気になったんだけど、ロボットって敵なの?」
つい質問してしまった。
今までの会話の流れから仲良しって感じじゃないのは想像できたけど。
「3分の1ぐらいは無害だよ。ただ存在しているだけ。私たちが立ち入り禁止エリアに入らなければ攻撃してこない。でも残りの3分の2は人間を見つけたら襲ってくるかな」
「四足歩行型の警備ロボで、武装はスタンロッドかテザーガンがほとんどだが、ヤバイ場所は実銃携帯の人型アンドロイドがいる。奴らはAI積んでるから厄介だ」
マノハが補足してくれた。なるほど。ロボットと遭遇したらとりあえず逃げた方がよさそうだ。
「まあ、ちゃんと武装してればそれほど怖くはない。明日は俺が言ってこよう」
「マノハが行くなんて珍しいね。私も行こうか?」
「……そうだな、たまにはいいかもしれない」
「じゃ、ついでにエールも実戦初参加してみますか」
「え?僕も?」
そういう流れになるとは思っていなかった。
僕は別に何か特技があるわけでもないし、運動神経もそこそこだ。
きっと足手まといになる。
「そうだよ。そのためにここ(ヨドバシベース)に連れてきたんだから」
「嫌なら別に来なくてもいいが、お前は何をするつもりなんだ?何か考えがあるのか?」
「いや、考えはないけど……」
「じゃあ来た方が良い。今自分がいる場所がどこなのか確かめるいい機会だ」
……うん、確かにそうだ。ちょっと怖いけど。
「わかった。よろしくお願いします」
「OK、じゃあ明日の朝出発するぜ。装備の準備は俺がしておこう」
「ありがと!さくらちゃんも来る?」
「……私はいい。でも何かあったら呼んで」
「じゃあ、俺はもう行くぜ。明日起こしに来てやるからわかりやすいところで寝とけよ」
そういってマノハは去っていった。
「じゃあ私たちも帰るね。君は入ってきたばかりだし、見ての通りここは人が多いから個室は用意してあげられないんだけど、毛布とか布は結構あるからそれを使って」
ということはホームレスみたいに通路の端で毛布に包まるしかないようだ。
それでも危険な外で眠りにつくよりははるかにマシだが。
まあ、贅沢を言える立場ではない。
ノヤ達に毛布をもらってから、僕は邪魔にならなそうなところに布を敷きそこに横たわった。
これからどうなるんだろう。
僕はどうすればいいんだろう。
目が覚めたらすべて元通りだったらいいのにな。
1章完
2章「ディグアウター」は近日更新予定