1章-3
そこには僕と同い年ぐらいの少女が立っていた。
どうやら僕を助けてくれたのは彼女のようだ。すぐにでも感謝の言葉を述べるべきなのだが、すぐ真後ろでドラゴンの頭が少女を食いちぎろうと暴れているのが大変気になる。
「あれ、聞こえてる?耳やられちゃった?」
「あ、はい聞こえてます」
「ふーん?あ、もしかしてこいつら見るの初めて?」
僕が勢いよく頷くと、彼女は何かに納得したようだ。
「なるほどね。丸腰だし、全然警戒心ないし、どこからか迷いこんじゃったんだね」
「あぁー まあ、そんな感じですね」
「それで、どこから来たの?」
僕はありのまま全て話した。
「ふーん?なるほど?」
なるほどとは言っているが、全く理解できて無さそうだ。僕もよくわかってないので、仕方ないのだが。
「うん、とりあえず町まで行こうか。ここで立ち話もなんだし」
そう言って彼女が壁際のパネルを操作すると、下から隔壁がせり上がり、地下鉄の入り口を完全に封鎖した。壁の向こうからは微かに竜が暴れている音がする。
「この扉凄いですね」
「え、こんなのどこにでもあるでしょ?」
あるのかなぁ。
それから僕たちは階段を下り、地下道にたどり着いた。この道を真っ直ぐ行けば自動改札があり、地下鉄の駅に繋がるはずだ。
「町にいくって言いましたよね。電車に乗るんですか?」
「電車は今日は走らないよ。大丈夫、そんなに遠くないし安全だから」
「あ、うん」
電車が走る日と走らない日があるらしい。よく分からない。
自動改札機まで来た。僕が最初に見た駅とはうって変わって清潔で明るい駅だ。自動改札機も現役だ。廃墟感は無い。多少古びてはいるが、ごく普通の駅だ。
彼女は改札機をひょいと飛び越えた。
「ほら、早くおいでよ」
良いのかな?と思ったが、見渡しても駅員はいないようだし、まあいっか。
僕も真似して飛び越えようとしたら、微妙に高さが足りずつんのめってしまった。
「ふふっ、どんくさー」
く、くそー
日頃の運動不足のツケがここで来たか。
改札機を越えるとすぐにホームがあった。上り線、下り線の線路がありその先に反対側のホームが見えている。
LEDライトが明るく照らしているが、やはりホームに人影はない。
「町とやらはどこから向かうんですか?」
「どこって、線路を歩いていくんだよ。他に道なんてないじゃん」
さも当たり前のように言われた。
彼女はホームから身軽に飛び降りてすたすたと線路上を歩いていく。
まあ、電車は来ないとのことなので、轢かれる心配はないが、線路内はさすがに明かりが少ない。
少し不安だが、このままだと置いて行かれてしまうので、僕も慌てて後を追う。
「もしかして、この時代は地上で生活している人間はいないんですか?」
歩きながら聞きたかったことを質問してみた。
「地上に住んでいる人?うーん、何人かはいるけどそんなに多くは無いかな」
「じゃあ他の人は?」
「地下だよ。私もそうだし」
人類は滅んだわけではなかった。でも、地上を放棄して地下で生活している。
「ねえ、ちょっと聞きたいんだけど」
彼女は立ち止まって振り向いた。
僕も立ち止まる。
「あなた本当はどこから来たの?もしかして東京の外から?」
「え、いや、僕は本当に……」
「それにしては(知っている)のよ。こうなる前の世界を。私とほとんど変わらない歳なのに。私は生まれてからずっとこの世界しか知らないのに」
その言葉からは困惑がにじみ出ていた。
「あなたは誰?」