2章-3
寒気で目が覚めた。
真っ暗で土や岩が散乱している場所に横たわっている。
全身びしょ濡れだ。それに臭い。ヘドロのような匂いがする。
えっと、なにがおきたんだっけ。
体を少し動かしてみる。問題なく動かせそうだ。
ゆっくりと体を起こす。
ぎぎぎぎぎ
何かがきしむような音がする。古い機械が軋みながら動いているような、そんな金属音。
なんだ?背後から聞こえる気がする。
振り向くと暗闇の中で何かが動くのが見えた。
「危ない!」
服の襟を捕まれ、後ろに引き倒された。直後何かが僕の近くを横切り、風圧が額を撫でた。
「うわわ」
慌ててソナーを打つ。先ほどのロボットがそこにいた。
水流と瓦礫の直撃を受けて、流石にダメージはあるようだが、まだ動いている。
そして、僕の後ろにはノヤが立っていた。また彼女に助けられたようだ。ノヤも全身びしょぬれになっているが、見た感じ怪我はなさそう。マノハは……見当たらない。
どうしよう、僕が戦うしかないのか?しかし、武器といえるのは借りているナイフぐらいだけど、どうやればあんな鋼鉄の塊に勝てるんだ?何かのケーブルを切断すれば動きが止まる?でも、そもそも近づくことが難しい。どうすれば?
「下がって!ここは私がやる!」
ノヤがリュックから何かを取り出しながら言った。取り出したのはカートリッジ式のバッテリーのようだ。しかし武器らしきものを持っているようには見えない。
「どうやって!?」
「まあ見てて」
そういうと、ノヤはリュックを地面に置き、右腕に装備していたガントレットのようなものにバッテリーカートリッジを差し込んだ。
するとガントレットの装甲がスライドして展開し、展開し一回り大きな腕のように変形する。
片腕だけやたらしっかりと防具つけてると思っていたが、まさかの格闘武器!?
「巻き込まれないように下がっててね」
そういうと、ノヤはロボットに向かって走りだした。
瞬時にロボットもノヤを捕捉して右のアームを振り上げる。しかしノヤは止まらない。
このままじゃノヤがやられる!?
アームが振り下ろされる。鋼鉄の塊による暴力。生身の人間ではもちろん耐えきれない。
「なんの!」
しかし、ノヤは振り下ろされたアームの軌道に合わせるように右手を振りぬいた。
だめだ、あれがどんな装備なのかわからないが、質量が違いすぎる。単純にぶつかれば吹き飛ばされるのはどう考えてもノヤの方だ。
ロボットのアームとノヤのガントレットが接触する。刹那、凄まじい音がして……
ロボットのアームが吹き飛んだ。
吹き飛んだアームは一度天井にぶつかり、数メートルにわたって転がって止まった。鋼鉄の塊が、である。
ノヤの強力な一撃によりアームが根元からへし折れたようだ。
地震のような振動と風圧がトンネル内を駆け抜ける。
僕は思わずよろけてしまったが、ノヤは止まらない。
走りながらガントレットにもう一本バッテリーを差し込む。
ロボットは残った左のアームを振り上げているが、ノヤの方が早い。
「これでぇ……おわり!」
ガラ空きになったロボットの胴体にノヤの右ストレートが決まる。
再び衝撃と破壊音がしてロボットは後ろに数メートル吹き飛んで、くの字に折れ曲がるようにして倒れた。
いや、実際分厚い装甲がぐしゃぐしゃにつぶれて折れ曲がっている。
振り上げていた左アームはそのままの形で、ロボットはピクリとも動かなくなった。
いたるところから煙が噴き出ている。どうやら機能停止したようだ。
「いえい!」
ノヤが勝利の声を上げた。ガッツポーズをしている。あれだけのパワーを発揮しながら、彼女の肉体にダメージは無いようだ。
ガントレットに装着されていたバッテリーが自動的にパージされ地面に落ちた。どうやらさっきの一撃で容量を使い切ったらしい。ガントレットはシューと音を立てながら煙を吹いている。




