桜
泣きたいときもあるだろうにと、貴方を見るたびにそう思います。
苦しいときもあるだろうにと、貴方を見るたびそう思います。
切ないときもあるだろうにと、貴方を見るたびに、貴方の笑顔を見るたびに、そう思ってしまいます。
ふっと、唇を噛みしめるのはなぜですか?
ふっと、遠くを眺めるのはなぜですか?
貴方はいつも、笑顔だけは絶やさないけれども・・・・・・
わたしは知っています。一番哀しい人は、いつも笑っている人だってことを。
そしてわたしは知っています。それより哀しい人は、哀しみを分かち合えない人だってことを。
いつか、二人で見た桜のことを覚えていますか? 新宿御苑の桜です。わたしたちが行ったときにはもう時季はずれで、桜というより葉桜でしたけど。
その桜を見て、わたしが「少し遅かったみたいね」と言ったとき、貴方はわたしにこう呟きましたね。
「それでも、少しは綺麗だよ」って。
貴方は誰に向かっていったのでしょう? 誰に気を遣ったのでしょうか?
それが桜にではなくわたしにだとしたら、わたしは、貴方にとってどういう存在なのでしょうか?
わたしは、貴方の安らぎにはなれないのでしょうか?
貴方は、一体何処で安らぐのでしょうか?