01.アーノルド視点
ある昼下がりの午後。
二日酔いから目覚めたばかりの俺は、珍しくこの時間帯に冒険者ギルドを訪れていた。
それにしても、昨日の冒険は大成功だった。
いつも通りの通い慣れたダンジョン探索。しかし、運が良かったのだろう。高値で売れるアイテムやモンスターが山のように出てきたのだ。
それで浮かれて、一緒にパーティ組んでいたメンバーと昨日は深酒。
こんな時間帯に冒険者ギルドを訪れることになっちまった理由がそれだった。
冒険者の朝は早い。
稼ぎの良い依頼は朝のうちに奪いあいが始まっちまうし、パーティのお誘いもだいたい朝方で締め切られちまうからだ。
それでも、俺が冒険者ギルドを訪れたのは、昨日ダンジョンで倒したモンスターの素材を納品するためだった。
納品の依頼を受けていたので、パーティメンバーに頼んで換金するぶんとは別にわけて貰ったのだ。
「よっ、メリンダちゃん。今日も可愛いね」
馴染みの受付嬢に軽い口調で挨拶をして、俺は依頼されていた素材を机の上に置く。
愛しのメリンダちゃんは困ったような笑顔を浮かべているが、それももう慣れっこだ。
こんな辺境で数十年もくすぶっている俺と、美人受付嬢のメリンダちゃんじゃ釣り合うはずもない。
それに、俺だって本気じゃない。口説くように話しかけたのは、いつもの社交辞令って奴だ。
「アーノルドさん。今日も口がお達者ですね」
それがわかっているからこそ、メリンダちゃんはその顔に苦笑を浮かべる。
いつも通りのやりとり。
いつも通りの日常。
冒険者なんて危険の多い仕事で、そんなの日常を甘受できている俺はきっと運が良いのだろう。
有名になれるほど才能なんてない俺だが、それでもいつも通りの日常なんていうものを持てるほどには安定した生活を送れている。
それは、きっと幸せなことなのだろうと俺は感じていた。
冒険者ギルドの出入り口であるスイングドアが開いたのは、そのときだった。




