社長のところに行きましょう!
「シェリルさんに社員証明の説明もして頂きましたので、社長の元へ向かいましょう。その他の説明は社長とお会いした後に致します。」
「はい。わかりました。」
仁丹さんの呼びかけと共に三人で部屋を出て、仁丹さんを先頭に歩き出した。
あ。そういえば、一つ聞きたいことがあったんだった。
前を歩く仁丹さんに近付いて小さな声でこっそり聞いてみた。
「あの、私がシェリルさんに初めてあった時に、仁丹さんに話しかけてたと思うんですけどシェリルさんはなんて言ってたですか?」
「え、ああ、あの時ですね。あの時は『この人がそう?』と聞かれたのでそうですとお答えしました。」
「ちなみにその後のは?」
「その後?・・・ああ。あれですか。」
仁丹さんが苦笑した。
「『“頼れる先輩”をアピールする私の計画が・・・』とか何とか仰ってました。」
「な、なるほど。」
出会い頭に私に倒れかかって仁丹さんに注意されるという場面を初っ端から見られたから落胆してたのか。
チラッとシェリルさんを見ると、まだ「先輩・・・フフッ!」と喜んでいた。
「ちなみにご年齢って・・・。」
「申し訳ありません。個人情報ですので正確なことまでは・・・。ただ成人済みとはお答えできます。」
「あ、こちらこそすみません。ありがとうございました。」
成人済み・・・ってことは20歳越えてるのか。
意外だ・・・。童顔だからもっと若いかと思ってた。
年下だろうが何だろうが会社の先輩に違いはないので、これからはシェリル先輩とお呼びしょう。
そういえば、これから社長に会いにいくって言ってたけど社長って普段は海外にいるんだったよね?
今日は日本に戻ってきてるってことなのかな?
「仁丹さん、社長はどちらのお部屋にいらっしゃってるんですか?」
「社長は本社の社長室にいらっしゃいます。」
「え?でも本社って海外でしたよね?私何も持ってきてないんですが・・・。」
「だーいじょーぶだよ!証明石あるでしょ?それで行けるからへーきへーき。」
ヒラヒラ手を振ってシェリルさんが笑う。
証明石ってパスポートの代わりにもなったりするの?
もしそうならすごい・・・。
それに今から行くとしてどうやって海外に行くんだろう??
日帰り?車中泊?着替えは?お金は?宿泊先は?
うーん・・・わかんないことだらけだ。
それにさっきから建物内を歩いてるだけで、外に出る様子がまるでない。
それに今は階段を降りている真っ最中である。
さっき居たのが一階だったからこれって地下に向かってるよね?
今降りている階段は建物同様に白く、壁際に等間隔で設置された照明が淡いオレンジ色に光っていた。
「あのー・・・どこに向かってるんでしょうか?」
「社長のところだってばぁ。ほら、もう少しで着くよ!」
階段を降りきった先にまた扉があった。
仁丹さんがドアノブに手をかけると小さくピッと音がして扉が開いた。
中に入ると窓のない十二畳くらいの真っ白な空間にドーム型の大きな機械が部屋の真ん中に置いてあった。
その機械は四、五人が一緒に入れるくらいの大きいものでかなりの存在感がある。
シェリルさんが小走りで機械に近付く。
機械の前に立って手をかざすと『ピピッ…シュー』と音がしてドーム型の入口が開いた。
「はぁー!やっと帰れる!ほらほら早く行こう!」
「え?え?帰る?え?」
どういうこと?
これでどこに行くの?