4.いざ!会社見学へ!
一息ついたところで女性は封筒を差し出した。
「改めまして本日はありがとうございます。私は昨日ご連絡しました人事担当の仁丹と申します。早速ですが始めさせて頂いてもよろしいですか?」
「はい。よろしくお願いします。」
「では資料に沿ってお話しますね。」
封筒の中には書類が三枚入っており、一枚目には一人の青年の話が書かれていた。
《青年が生まれたのは作物が育ちにくく名産品もない辺境にある土地であった。 けれどその青年には領地の人だけでなく国中の人も聞いたことのない様々な知恵や知識を持っていた。 その知識は青年が幼少期の頃から遺憾なく発揮され何も無かった土地はあっという間に豊かな地へと姿を変えた。 その後、青年が「電気と水道を国内全土に普及させる」と宣言すると、それもあっという間に設備が整えられていった。》
朗読が途切れたので資料から目線を上げると仁丹さんと目が合った。
「こちらに書かれている内容は我社の社長が以前に行ったことのほんの一部になります。」
「左様ですか。」
これがほんの一部とは。ここの社長って思ってたより凄い人なのね。
それにここに記載されている「幼少期から様々な知識があった」というのは、もしや前世の記憶があったとかそういうのではないだろうか?
最近読んでいた小説でもそういった内容のものがあったし、以前テレビ番組で見た少年も前世の死ぬ間際までの記憶があると言っていた。きっとここの社長も同じように何処かの生まれ変わりなんだろうとぼんやり考えていた。
その後も仁丹さんの話は進んでいく。
書類に目を戻すとそれが今から約三年前の話で、会社はその時に立ち上げたことが記載されていた。
本店は社長がいる国にあるそうなので、ここは支店という扱いになる。
支店の建物は昨年出来たばかりということだったので、どうりで床もピカピカだった訳ね。
「新設して早々に社長から『支店の方で人材を募集して』との指令がありまして・・・。」
まだしっかりした設備も整っていない状態での募集に困り果てた仁丹さんは、仕方なく手書きでチラシを作ることにしたらしい。
「文面やレイアウトも全て私が考えました。正直申し上げまして我ながら胡散臭さと怪しさを兼ね備えていて『本気で募集するつもりはあるのか?』と思えるような仕上がりになったと自負しております。」
「いえ、そんなことは…ない…ですよ。ははは…」
正直、私もかなり怪しいと思ってた。けどまさか作った本人までそう感じていたとは。
しかもそれをそのまま採用してチラシにするってなかなかすごい根性してると思う。
「ですので希望申請が送られてきた時には正直驚いてしまい、すぐにお電話差し上げてしまいました。ビックリされましたよね?誠に申し訳ございません。」
「いえ、全然気にしておりませんので大丈夫です!」
日頃から休日は家でのんびり小説読んで過ごしていただけなので本当にお気になさらないで。