表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/17

2.怪しいチラシ

 ある日曜日のお昼過ぎ。

 私、市村(いちむら)まことは自宅のソファで寛ぎながら、休日の日課と化した携帯小説を読んでいた。ちなみに今読んでいるのは「異世界転生しちゃった悪役令嬢の苦難」という物語だ。


「悪役令嬢に転生した子って基本的に性格良く書かれてるよね~。逆にヒロインに転生した子の性格はほぼ全員にゲスさが醸し出されてて、正直どっちが悪役なのかわからない。」


 就職してすぐに一人暮らしを始めたので、今の言葉に反応してくれる者は誰もいない。独り言は一人暮らしを始めると出てくる弊害でもある。



 スコンッ


「ん?」


 玄関の方から軽快な音がした。



「なんかきた?何だろう?」


 リビングの扉を開けて玄関に向かう。リビングから見て左の壁際にキッチンがついており、トイレとお風呂場は右の壁側に、正面に玄関がある作りだ。私が住んでいるアパートは玄関にポストと郵便受けが付いているので、中を開けて見てみるとわら半紙のような紙が一枚入っていた。


 まーたチラシか。

 最近、一軒家の売り込みのチラシばっかり見てる気がするんだけどな。


 毎日毎日飽きることなく投函されるチラシに若干ウンザリしながらも、軽く目を通してから捨てるようにしている。


「はてさて今日のチラシは何でしょうか?」


 いつものように家の見取り図が書いてある・・・かと思いきや、そのチラシは手書きの文面と共に右下にQRコードが付いていて手作り感溢れるものだった。



「えーっと、なになに…《貴方の“好き”を仕事にしてみませんか?その“夢”私たちが叶えます!年齢、性別、学歴問いません!下記のQRコードからお申し込み頂けます!》って…え、何これ。普通に怪しいんですけど。」


 そのチラシを持ったままリビングに戻り、QRコードの下に記載されてる会社名を調べてみた。


「ふ~ん。起業したての会社なんだ。それ以外に有力な情報はなし、と。」


 うん。正直かなり怪しい。捨ててしまおうか?

 チラシを折りたたんでゴミ箱に入れる直前、ふと思った。

 そろそろ転職しようかと考えていたし、もし、もしも本当に夢が叶うなら物凄く惹かれるな、と。


 チラシのQRコードを読み取って見ると、会社見学をさせて貰えると書いてあったので、情報欄を埋めて送信をした。あとは電話がかかって来るのを待つだけ『ririririririri』


 って早!!もしかしてもうかかってきた!?


 ディスプレイに表示されたは番号は先ほど見た会社の代表番号と同じだった。

 一度深呼吸をして通話のボタンを押す。


「はい、もしもし」


「市村様でしょうか?わたくし先程ご登録いただきました会社の人事担当でございます。ご応募、誠にありがとうございます!!」


「あ、はい。」


 電話の相手は女性で電話越しでも分かるほど興奮気味だ。対する私はその圧に引き気味である。


「早速で恐縮ですが、日時を調整させて頂きたいのでご都合はいつがよろしいですか?」


「えーっと、そうですね・・・最短でいつ頃になりますか?」


 そんなに急いではないけれど、見学するだけなら早いに越したことはないだろうし、再来週とかになるのかな?


「はい!最短で明日の午前中になります!」


「え!?」


 思ってたよりもかなり早い!会社見学ってそんなに早く準備できるの!?


「いかがでしょうか?」


 女性の声色は先程よりも幾分か落ち着いていた。


「明日は午前中仕事がありますので、12時以降でお願いしたいのですが。」


「畏まりました。では明日の13時はいかがでしょうか?」


「はい。それでお願いします。」


「では明日の13時に会社前でお待ちしております。それでは失礼致します。」


「失礼します。」


 ピッ


 まさかこんなに早く電話が来るとは思っていなかったから、かなり驚いた。

 バクバクと心臓の音が耳につくので、深呼吸をしてから壁掛時計を見ると15時になったばかりだった。


 明日のために今から美容室に行こう。すぐに予約の手続きをして、軽く化粧を施し携帯と財布をトートバックに詰めて家を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ