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1.将来の夢

プロローグ作りました。

初投稿でドキドキです。

生暖かい目で見てください。

 小さい頃、私には夢があった。

 それは駄菓子屋さんになること。

 私が通っている学校の近くに【ボンモマン】という駄菓子屋さん──みんなボンモと省略して呼んでいた──があった。

 ボンモにはいつもたくさんの人が集まっていて、駄菓子を買いに来る子供たちはもちろん、近所の大人達もお店のおばあちゃんと話しをしに来ていて、ボンモにはいつもたくさんの笑顔に溢れていた。

 その光景を見て以来、私は駄菓子屋さんが大好きになった。

 けれど私が中学生になってすぐの頃、駄菓子屋のおばあちゃんは入退院を繰り返すようになった。とても元気そうに見えていたけれど、持病の悪化や身内の不幸などの心労が祟り体調を崩しやすくなってしまったそう。その後度々お店の前を通っても開店している様子もなく、それから数年もせずに駄菓子屋ボンモマンはひっそりとお店を畳んでしまっていた。





 月日は流れ、私は高校生になった。

 私が通っている高校は進学よりも就職に力を入れていて、卒業生の約85%は正社員として就職していた。

 学校では早くから「やりたいこと 就職したい企業を見つけて それに合った指導をしていこう」を教育方針としていて、毎年倍率が高くとても人気の学校だ。私も高校の教育方針を気に入ってこの高校に進学しようと決め、見事合格することができた。

 一年生の夏にはもう進路指導が始まった。私はすぐ進路指導の先生に「駄菓子屋さんになりたい」と打ち明けた。先生は私の話に目を丸くして驚いた様子だった。だがすぐに小さくため息を吐くと「駄菓子屋なんて老人の小遣い稼ぎくらいにしかならん。小学生みたいにいつまでも夢ばかり見てないで現実を見ろ。」と席を立ち他の生徒のところへ行ってしまった。

 

一瞬、何を言われたのか分からず呼吸すら忘れてそこに立ち竦んでいた。


 私だって駄菓子屋が儲けがほとんど無いことくらい知っている。それを知っていても、お金だけじゃ得られないたくさんの人の笑顔と幸せが詰まっている駄菓子屋を、今度は自分の手で作りたいと強く思ったからやりたいんだ。


 その日から私は毎日のように進路指導室へ通い詰めた。

 否定されたからといって「分かりました」と諦めるつもりは全くない。何度も先生に食い下がり了承が得られるまで放課後や休み時間にも進路指導室へ通い詰めた。


「給料がお小遣い程度なのも分かってます!それでも駄菓子屋がやりたいんです!」

「何度言われても結果は同じ。それは老後の楽しみにとっとけ。それよりほら、ここの募集とかどうだ?大手企業の受付だって。お前の容姿なら合格間違いなしだ!」

 進路指導の男性教諭は笑いながら私にGOサインの入った求人を渡してきた。

「だから!私は受付じゃなくて駄菓子屋がやりたいんです!」

 毎日繰り広げられる光景に、周囲の生徒たちも「またか…」とすぐに興味を無くし求人の入ったファイルに視線を戻した。


 私がなぜここまでしつこく食い下がったかと言うと、この学校の就職率が他校に比べて良いのに関係があった。それは進路指導の教員が「GO!」サインを出さない限り、希望の会社を受けることは出来ないようになっているからだ。

 自分が希望した企業に学力や生活態度などを総合的に見て合うかを複数の教員が判断し、承認されるとやっと願書を出すことが出来るようになっている。さらに一企業に一人までしか募集枠がないため、就職を考えている者はその争奪戦を勝ち上がらなければならない。

 仮に教員の了承を得られても就職先からの「合格」がなければ全てやり直しになるのだが。



「何度来ても結果は同じ。そもそも駄菓子屋に就職ってなんだ?百貨店内にある駄菓子屋のことか?それならここにそんな求人はないぞ。」

「え…」

「おいおい。まさか知らなかったのか?毎日ここに来ておいて」

 先生の最もな話にぐうの音も出ない。

「いや…その…毎日先生に了承をもらうために来てたから…そういえばきちんと求人見てなかったかも」

「お前なぁ…。もう三年の夏だぞ。本格的に動き始めないと就職できずに卒業になるぞ」


 一年の夏から三年の夏まで毎日通い詰めた進路指導室には下級生の姿がちらほら見えるだけで、もう三年生の姿は私以外見あたらなかった。


「もう駄菓子屋は諦めて、こっち受けろ。な?お前の容姿ならきっと受かるぞ」

 先生は以前にも渡してきた用紙を出してきた。

 きっと今の私なら「容姿だけで受かるってどんな企業だ。仕事舐めてるのか。ハラスメントで訴えるぞ。」と言っていただろう。

 けれど、何度お願いしてもダメだと悟った私は「・・・・・・・・・わかりました。」

 それ以外、答えることが出来なかった。


 そこからはあれよあれよと面接指導や立ち居振る舞いなどを教わり、大手企業の受付として就職が決まり、両親や教員に大いに喜ばれるのであった。


 あの就職までの騒動から五年目が経った夏。

 私の平凡で退屈な日常が変わろうとしていた。

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