失われたもの
「……!! 師匠!! 危ないっ!!」
そう叫んだクロは一瞬動きを止めてしまった俺の体を突き飛ばした。
その瞬間クロからは今度こそ正真正銘彼の血が噴き出した。
「クロッ!!!! てめぇらよくも……」
そこには珍しく取り乱す俺がいた。
クロとはただの師弟関係であって、決して特別親しくはない。
だが、俺は俺の代わりに傷だらけになってしまった原因の狼たちに明らかな怒りを覚えていた。
あまりの怒りに我を忘れた俺は怒りに任せ、狼たちに攻撃し続けた。どのくらいこうしてすでに死んでしまった相手の体を無用に切り裂き踏みつけているのだろうか。
すると突然、クロの声が聞こえた。
「し…しょう……」
その声で我に返った俺はすぐにそっちに駆け寄った。
「クロ!! 大丈夫か、しっかりしろ!! クロ!!!」
「そんなに大きな声出したら…あいつらに見つかりますよ……?? 僕は…大丈夫ですから……」
そういうクロの目はすでに見えていないかもしれない。黒目からは生気が失われていた。そして、横たわるクロの周りには大きな血だまりができていた。
「僕は…師匠を追い越すまで……死にませんから………」
そこでクロは息絶えてしまった。
「クロ……!! クソッ……」
黒い大きな狼は生まれて初めて涙を流した。
そして今はもう亡き弟子に向かってこう告げた。
「俺がしっかり仇をとってくるから…もう少しだけ、俺の後ろを……ついてこい……」
再び一匹になった狼は、弟子の瞼を閉じて立ち上がった。
彼の目は決意に満ちた目は決意で満ち溢れていた。
あぁ……
クロが死んでしまいました……
僕は黒狼師が先に亡くなられるかと思っていたのですが……
あのタイミングでクロの師匠愛が発揮され、こういう結果に落ち着きました。
でもやっぱり、そこらに転がる下っ端とは違って、メインで動いていた(一応)キャラが死んじゃうと悲しいものですよね……