掟
狼の群れにはその群れ独自の掟がある。
食事のはボスから食べ始める。や、いつでもボスを守れるようにして行動する。など、些細なことから重要なことまで決められている。
もちろん俺がもともといた群れにもそんな掟があった。
一.ボスの命令には絶対に従う。
一.自分の身は自分で守る。
一.群れから抜けることは‘死’を意味する。
以上のことが守れなかったものは群れから追放する。
大体はこんなところだ。
細かいものはもっとたくさんあるが、言っていると月が欠けてしまうので今はやめておこう。
俺とチビ、改めクロはこの三つ目を破ったわけだ。
当然群れぐるみで俺たちを追いかけてくる。
「いたぞぉぉ!! ここ……ぎゃぁぁぁぁぁぁっ……………」
先ほどから幾度も断末魔があがっている。
おそらくクロだろう。
俺とは別にこの群れを迎え撃つ狼はいない。
「……死ぬなよ……」
クロはよくできた弟子だった。
何より基がしっかりしている。
事を飲み込むことも早いしコツをつかむのも早い。
類稀な才能であろう。
放っておけばすぐに俺すらも追い抜いてしまいそうな成長のスピードだ。
「この調子だと……この群れを全滅も夢じゃないかもな……」
300匹もの精鋭をそろえた合計1000引きを超える大きな群れはたった一晩で全滅したという。
それも、もともとはその群れにいた一匹の狼がやったのだとか。
「あとはやつらを倒すこと……か……」
そう呟いた俺の目の前には白狼が待っていた。
「久しぶりだな、兄弟。」