イコールで繋がらないものが愛ではない
舞台はどこかの街。モデルはありますが、架空の土地です。
Prologue
ぼたぼた垂れている血が自分のものではないことはよく分かる。痛みがその血に見合うほどないのだ。あるとすればガムテープの剥がされた口元や強く縛られた手足だけでそれ以外にはない。目の前の奴は平常時の振る舞いをしようとしているが、貧血で視界が朧げなのだろう。私の肩に置かれた手は強くそこを握っている。
「バカじゃないの、怪我してまで来なくて良かったのに。」
「約束守るやつだって言っちゃったし?嘘つき呼ばわりはごめんだね。」
「そんな、そんなことのために……」
「俺にとっては違うね。血が尽きてもこの約束だけは守らないといけない。」
「死んでもってやつ?」
「まあ。」
ニヒルに笑う口が歪んでいる。単純な話、痛いのだ。頭から流れてしまう血は他より多いとは言えどこの量から察するに傷は深い。
私には理解できなかった。こうまでして彼がここに来る価値、私に価値はあるのだろうか。
私と彼は互いを探って自分を決して見せないようにと、疑り深い関係だったはずだ。ほんの少しだけ情をうつしたりしていたとしても命を賭けるほどのものではなかった。なかったはずだ。
私の認識ではそうなのに彼はそうでないと言う。理解できない。決してこれは頭では理解できない。
「泣くなよ、助けてんだから。」
「知らない、分かんない、なんで、どうして」
「俺もよく分かんねーけど、それでも、」
次の言葉を言う、待つために吸った息は視界にうつった影によって阻まれる。
何を言ったかを記憶するより前に意識は暗い所へ落ちてしまった。
しかしその瞬間に私は理解した。これは確かに愛だ。
遠い昔誰かが私に言った、君は人を愛することができないと言うのを否定したのは彼だ。彼は私を愛せる人間だと言った。そうして私は彼を愛している。彼も私を愛している。私たちは皮肉を言い合うだけの関係性ではなく、愛し合う関係性だった。
過去形にしなくてもまだ間に合うと言ったのは一体誰だった?




