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雪美条高校探偵部員たちの事件簿  作者: 香富士
File2 凪沢と恋の謎
5/56

File2-2 ラブレターはどこ?

事件関係者

千葉ちば美玲みれい   雪美条高校2-C バスケ部員

佐土原さどはら歌乃うたの  雪美条高校2-C 合唱部員

蓮井はすい颯也そうや   雪美条高校2-C 演劇部員〔演習室1〕

松菱まつびし珠理じゅり   雪美条高校2-C 書道部員〔演習室2〕

八木やき優奈ゆうな   雪美条高校2-C 美術部員〔美術室〕

段野だんの鈴夏すずか   雪美条高校2-C ファッション部員〔家庭科室〕


~C館見取り図~

挿絵(By みてみん)

「け~っきょくここにいたのは蓮井君、珠理ちゃん、優奈、鈴夏ちゃんの4人だったわね」

 美玲は階段を下りながら呟いた。

「そうね。特に不審な点のある教室は無かったし、やっぱりあの中に……」

 わたしたちの間に重い空気が広がる。1階まで下りて出入り口の方を見ると、歌乃の他にふたりの人物がいた。わたしが助っ人を頼んだ探偵部の女子部員(自分含めて3人だけだけど)、3年生の名瀬なせ美陽みよ先輩と1年生の森浦もりうら凛花りんかちゃんのふたりだ(え? わたしの学年の探偵部員だけ1人なのかって? 全学年男女1人ずついるわよ。話してないだけで)。

 名瀬先輩はかなりの美人だ。こんなわたしが言うのは少し変かもしれないが、“大人の魅力”みたいなのがあると思う。美しい黒々とした長い髪、華奢で長い指など……女性なら憧れる存在であろう。しかも人望もあって勉強もよくできる。そんな先輩がなぜ探偵部なんて部活に所属しているかは入部して以来の謎だ。 凛花ちゃんは無口であまり感情を表に出そうとはしない。でもわたしたちの活動にはしっかり着々とこなしてくれる。わたしはそんな彼女の性格が好きだ。それに彼女の本心も探ってみたい。

「2人ともありがとう、来てくれて。ところで凛花ちゃん、福森先生はどうしたの? 来られなかったの?」

「ええ、そうです。後で来ると言っていました」

「そ、そう。わかったわ」

 でもやっぱり凛花ちゃんとはとっかかりにくい。でもそんな性格は彼女の長所なのだろう。

「それで、ほのか。私たち探偵部の女子部員だけを集めたのはどうして?」

 名瀬先輩がきいてきた。

「ちょっと男子には話しにくいことなんですけど……」


 わたしは起こったことをふたりに話した。もちろん誰が好きかなんて言ってないが。

「なるほど。確かにそれは男子には話したくないことよね」

 名瀬先輩が言った。凛花ちゃんはコクッと頷いただけだったが先輩に同意したということだろう。そして名瀬先輩は続ける。

「やっぱり悪いけどまだ犯人はここにいると思うわ。だって唯一の出入り口は、え~っと名前はなんだっけ……そう、佐土原さん、あなたがいたんでしょ?」

 名瀬先輩に急に名前を呼ばれて歌乃は驚いた様子だったが、落ち着いて答える。

「はい。ほのかと美玲が戻って来るまでは1階にすら人は来ませんでしたよ」

「そうよね。まぁ窓からロープとかで逃げるっていう手もあるにはあるけど、そんな目立つ方法で逃げようとも思わないでしょうし、現に誰もいないのに窓が開いてる教室は無かったんでしょ、ほのか」

「もちろん全部しっかり施錠されていました。人がいる教室は暑いから、全部開け放たれてましたけど」

「じゃ、結局はC館にいる4人の中なのかもしれないわね。とりあえず私たち3人で、その人たちに会いに行きましょ、良いわよね?」


  ◇


「ねぇ一応事務室も見ておかない?」

 名瀬先輩がそう言うので1度事務室も覗く。でもドアを閉じてから先輩は急に話し出した。

「2人とも、今回の犯人はどんな感じだと思う?」

 そんなアバウトな質問に対し、凛花ちゃんが最初に口を開いた。

「わたしはやはりどこかしらでラブレターが鞄にあるということを知った人、もちろん千葉先輩と佐土原先輩以外でですけど、それが犯人だと思います。当たり前と言えばそうかもしれませんけどこれは結構重要ですよね?」

「そうね。凛花の言うとおり、どこかで知れるチャンスがあった人が犯人なのよ。ほのか、ラブレターが鞄にあるってことを口にした時に誰か傍にいなかった?」

「う~んと……あ、そういえば朝だけじゃなくて3時くらいに一緒についてきてくれるかどうかみたいな話をちょっとしたんですよ。校舎の裏手でこっそりと。でもそん時に誰かに聞かれたかも。朝は本当に誰もいない教室で話したんでその時に聞かれた可能性はゼロです」

「ふ~ん。じゃ、やっぱり犯人はその時に聞いたのよ、あなたの計画を。それでなんとかして阻止しようとした。そういうことじゃない?」

 今度は凛花ちゃんがきいてきた。

「凪沢先輩、その3時くらいにはどの程度のことまで話したんですか?」

「え~っと確かC館に4時20分くらいには置いておくってことから40分には行こうってことくらいまで全部話しちゃったわね」

「じゃあそうなら……」

 凛花ちゃんはわたしたちの方も向かずしばらく考え、話し始めた。

「じゃあちょっと考えたこと、聞いてもらいますね。まずその人は計画を知れたのは良いんですけど、鞄はC館事務室に置かれるまで凪沢先輩がずっと持っていた。そして事務室に置かれた時すでに出店の準備が始まっていて、C館に入ってすぐに出てきたら自分が疑われてしまうと考えた。かといって4時20分からずっとC館に居座っても結局疑われてラブレターを見つけられたらアウト。でも20分間で隠せるかはわからない。

 そこで盗んだ様子をあえて見せて、誰かに罪を被せて時間を稼ごうとしたんでしょう。でも表口から先輩方が入ってきたら、事務室から出てきた犯人は追いつかれる可能性があった。だから表口をレンガで開かないようにして、裏口に先輩方を誘導した。そして唯一の誤算はすぐに凪沢先輩たちがC館の教室を回り始めたことでまだその時は隠している途中、もしくはまだ全く隠していなかったこと。まぁ運良く凪沢先輩たちは気づかなかったみたいですけど」

 そう得意げな表情で語った凛花ちゃんは、言葉を終えるのと同時に電気が消えるようにフッと元の無表情に戻った。

 わたしはいつの間にか、彼女の手を取っていた。

「すごいわね、こんな短時間でまとめて言葉にするなんて。ちょっと意外だわ、凛花ちゃん。あなた本当にすごいわよ」

「そんな……ありがとうございます」

 彼女はあまり感情を外に出さない人なのに今日だけはいつもとは違った。まさかいつもは見せないだけで心の中ではこんだけ考えているのかしらね。

「それでですね、先輩。まずはレンガを移動させた方法を考えたいのですが……」

「分かった。じゃあ表口に行ってみましょ」


 ◇


 レンガは引きずって移動しておいたので、もうドアは開く状態だった。でも周囲にはわたしと美玲で動かした時の跡くらいしか残っていない。

「……ホントに何も残ってないわね。ほのか、何か気付いたことはないの?」

「特には……」

 レンガは、事務室の窓のすぐ下にまとめておいてある。犯人はおそらくそこから拝借したんだろう。一部がゴッソリ無くなっているし。

「あの、凪沢先輩」

 凛花ちゃんは顔を思いっきり地面に近づけ、何か探すようにしながらわたしを呼んだ。

「ここ、よく見てください。薄っすら何かの跡が……」

「ん?」 

 わたしも彼女に倣って顔を近づける。するとそこには、2本の真っ直ぐな線の跡があった。間隔は5センチくらい。そして20センチくらい先にも、ほぼ平行な感じで同じような2本の筋がある。こちらも間隔は

5センチくらい。

「これは……何かしら?」

「……ひとまずC館の人に会ってから考えましょう」


 ◇


 まずは3階の美術室、優奈のところへ行く。美術室に入ると、優奈はわたしたちに気が付いたようで後ろを振り向いた。

「あれ? ほのか、まだ何かあるの? しかも3人で来ちゃって」

「えぇ。実はわたしのあるものが盗まれちゃって……。一応持ってるものを確認させてくれない?」

「何? 私を疑ってるの?」

 優奈は少しムッとした口調で言う。

「いや、えっとね……」

 わたしが言葉に詰まっていると、名瀬先輩が優しく諭す。

「八木さん、私たちはただ問題を解決したいだけなの。そのためにはどんなに親しい友人だろうと一瞬は疑わなければならないわ。だからお願い。確認させてもらえない?」

 優奈はしばらく考え、溜め息をついた。

「……わかった。ま、何が盗まれたのかは知らないけど、ここまでするってことはよっぽど大切なものなんだろ? だったらしゃーないかな。良いわ。今見せるよ」

 優奈は机の上の鞄を掴むと、わたしたちの前に置いてジッパーを開けた。

「別に怪しいものはないでしょ?」

 彼女の鞄には普通に筆箱、ファイル、それからファイルの中のプリント数枚くらい。特に珍しいものはない。

「あ、ポケットとかも見る?」

 そう言って彼女が出してきたのはスマホ、財布、イヤホン、ハンカチ、定期。財布やスマホケースは妙にゴテゴテした、高そうなもの。実に優奈らしい。

「一応私にポケットの中を確認させてくれる?」

「あぁ良いよ」という返事を聞いてからポケットに隠し持っていないか探したが、何も無し。

「それじゃ、あとは部屋に置いてあるものも良い?」

「もちろん。あたしじゃないってことの証明の為ならね」

 さっきはごちゃごちゃ置かれていた作品が、いくつかに分かれていた。基準は不明だけど。さっき見せてくれた桜の絵や、粘土で作られたと思われる「手」、ステンドグラス、彫刻など色々と置かれている。他にも絵の具や色鉛筆、クレヨン、画用紙もある。

「ねぇ八木さん、ここの作品はどうやってわけてあるの?」

 わたしが疑問に思っていると、先に名瀬先輩が優奈にきいた。

「これはただ、作った学年ごとにわけてあるだけですよ。作った人がわかるのはある程度だけ分けてあるんですけど、全部はわからないので」

「なるほど、ありがとう」

「別に調べるためなら多少なら触っても良いですけど、基本は触らないでくださいね」

 凛花ちゃんが気になり彼女を探すと、何かの作品1つをじっくりと観察しているようだった。別にフツーっぽいものばかりな気はするけど。

「ねえ、ちょっとほのか?」

「な、何?」

 優奈はドアに寄りかかりながら、わたしを呼んだ。

「さっき盗まれたって言ってたけど、なんであたしを疑うことになったの?」

「え~っと、それは……そう、このC館に逃げ込んだからよ、追いかけた人が」

「へぇ、でも犯人もやるよねぇ、ほのかのものを盗むなんて。他の人にもあたしと同じようなことをするんだろ? ほのかじゃなきゃ探されることもなかっただろうし。見つかると良いな」

「ありがとう、優奈」

 そう言った瞬間、ドアがガラガラと音をたてながら開き、寄りかかっていた優奈が転びそうになる。

「ひゃっ!」

「あ、ゴメン!」

 ドアを開けたのは歌乃。なんとか踏ん張った優奈に、申し訳なさそうな視線を送る。

「いや、大丈夫よ歌乃ちゃん。ところで何しに来たんだ?」

 するお歌乃はわたしの耳元に寄って、

「下に美術部の人が来て、作品を持っていきたいって言ってるんだけど……」

「そんくらいなら良いわよ、入れて」

「そう。じゃ連れてくるわ」

 歌乃が連れてきた美術部の生徒は優奈の桜の絵を含む3枚、まとまりから1枚ずつ持って行った。念のためもう一度それらを確認したが特に怪しそうな点はなく、普通の画用紙3枚だった。

「じゃあごめんね優奈。特になさそうだわ」

「良いよ、あたしは別に。しょうがねーよ、大事なものがなくなったんなら」


 *


 今度は家庭科室、鈴夏ちゃんのところだ。

「鈴夏ちゃん、ちょっと良い?」

「いらっしゃい……って今度は人を変えたの?」

「うん……。実はね、わたしのあるものが盗まれちゃって……ゴメン、ちょっと鈴夏ちゃんの持ち物見せてくれない?」

「そうなの? それは大変ね。もちろん良いわよ、協力するって言ったじゃない。私が持ってるのはそこに置いてあるので全部よ」

 鈴夏ちゃんの指差した先には筆記用具一式に、針や糸や糸切りばさみなど私たちが普通に家庭科で使うような裁縫道具。それからメジャーに布、アイロン、ミシン、デザインが描いてあるスケッチブック。あとはさっき見た、明日のための洋服がハンガーに掛かっている。秋物と思われる女性用の服が3着、男性用が1着だ。さっき鈴夏ちゃんがミシンで直していたスカートも含めて。

「これでしょ、さっきのは。なんだか全然違うわね」

「ええ、結構大変だったわ。裏地付きだから特にね。それは部長が着るやつだからさらに完璧じゃないと」

「やっぱり鈴夏ちゃんは真面目ね。あ、そうそう、一応ポケットの中も見せてくれる?」

「うん。あ、でもこういうのは念のためにほのかがやった方が良いんじゃない?」

そう言われポケットの中を探ったが、スマホ、財布、ハンカチしかなかった。今度は名瀬先輩が鈴夏ちゃんにきいた。

「ねえ段野さん、このハンガーに掛かっている衣装にもポケットあるみたいだし、見て良いかしら」

「どうぞどうぞ。別に何も入れてませんが。あ、でもあんまり服はいじらないでくださいね。なんとなく関係ない人に公開する前に触らせるのは好きではないので」

  衣装を触ろうとしていた凛花ちゃんはその手を止めて、名瀬先輩とポケットを見た。でも特に何もなかったようだ。すると鈴夏ちゃんが、

「ほのか、なんで私のところへ来たの? 何かアテでもあったの?」

「うん、もちろん。その盗んだ犯人がC館に逃げ込んだのが見えたのよ」

「あら、そうなの? ならこのままいけばすぐにあんなものなら見つかるんじゃない? 頑張って」

「ありがとう、鈴夏ちゃん」

 そう言って私わたしたちが家庭科室を出ようとすると、鈴夏ちゃんが呼び止める。

「この衣装、ホールに届けたいんだけど良い?」

「別に良いわよ。その衣装とかに怪しいところは無かったから」

「じゃ、私は2号館の小ホールにいるから何かあったらそこまで来てね。鍵はどうする?」

「わたしたちでかけるから気にしないで」

「うん、じゃあよろしくね」

 そう言って鈴夏ちゃんは荷物を持って行った。


 *


 次は2階の演習室2、珠理ちゃんのところだ。

「あら、ほのかちゃんどうしたの? また何かあったの?」

「実はわたしのあるものが盗まれちゃって……ゴメン、珠理ちゃんの持ち物を見せてくれる?」

 すると珠理は目を丸くして言った。

「え? な、何を盗まれたの? 大変ね……ってまさか私を……」

「ゴメン、でも一応このC館にいる人はどんな人でも疑わないと……」

「……そう。でもきっとほのかちゃんも辛いわよね。良いわ。でも持ち物って言っても部活で書いたみんなの作品とあの大きい半紙とバケツと筆ぐらいよ」

 さっきとは違い作品はきっちりとわけられていた。表装されているのもそうでないものもある。大きな半紙は厚紙に貼りつけてあり、壁に立てかけてある。その下には普通のものより大きな筆が8本とバケツが5つ置いてある。あとはおそらく貼りつけるために使った糊もある。例のごとくポケットには財布、スマホ、生徒手帳、ボールペン、定期、ハンカチしかなかった。

「ねえほのか、ちょっと言いたいことがあるんだけど良い?」

 珠理ちゃんが遠慮がちにきく。

「うん。どうかしたの?」

「さっき『C館にいる人は』って言ったけどなんでそんな風に絞ったの? C館に入るのでも目撃したの?」

「そう、このC館に逃げ込んだのを見たのよ」

「でもどこでどうやって盗まれたの? それから多少は何かがわかるんじゃない?」

「さっきのを正確に言うとね、ここの事務室に置いてた鞄から盗まれて、事務室から出て上に行くのを見たのよ」

「そういうことなのね。じゃ、2階か3階にいる人ってことなの?」

「それだけじゃなくて色々あるんだけど……それはちょっと教えられないわ」

「あら残念。でもそれだけ絞れてるならすぐに見つかるんじゃない? 頑張って」

「ありがとう、珠理ちゃん」

 部屋の中を隅々まで見ていた名瀬先輩と、大きな半紙をじっくりと見ていた凛花ちゃんに声をかけて演習室2を後にした。


 *


「一応演習室1にも行くんですか?」

 わたしは名瀬先輩にきく。

「ええ。だってシンプルに蓮井君ってこともなくはないでしょ」

 凛花ちゃんは黙ってコクッと頷く。やっぱり行くのね。ミステリーとしては彼だったらまんまり面白くないけど、むしろわかりにくいのよね。

「ありゃ、どうしたのわざわざ3人も引き連れて」

 蓮井君は呆れた感じで言った。

「実は私のあるものが盗まれちゃって……」

そこまでしか言ってないのに急に彼は顔を歪めて慌て始め、

「ま、まさか僕を疑ってんの? ちょ、ちょっと、僕はずっとここでこれの修理してたんだから! どこで盗まれたかなんて知らないけど僕は無理だからね!」

「落ち着いてよ蓮井君。別にそういう訳じゃ……」

「じゃあどういうことなんだよ? まさかさっきも僕を疑ったからきたのか?」

「もうだから違……」

「1回落ち着きなさい!」

 名瀬先輩の大声に蓮井君も私も先輩の方を向いた。すると声を潜め、蓮井君に自分の顔をグイッと近づきこう言った。

「良い? ここだけの話むしろあなたは一番怪しくないの。わかる? でもあんたがそういう態度だとむしろ怪しく見えちゃうんだけど……」

「す、すみません……。さっき凪沢さんと千葉さんが来た時に僕のことめっちゃ怪しい目つきで見てたんです。だ、だから僕は何かしちゃってたのかと……」

「ふ~ん、だってよ、凪沢さん・・・・

「ご、ごめん蓮井君。でもあの時はあなたが1番疑わしかったから……」

「そうなんだ。でももうこのパネルを持って僕も向こうに行かないと」

「そうなの? じゃ、手早く済ませるわ。でもさっきももうすぐ取りに来るって言ってなかった?」

「向こうで色々手間取ったらしくてね。少し遅くなったんだよ」

 そんな訳でここにあったものを調べたが例の木のパネルと工具、つまり金づちや釘やドライバーなんか、他にもペンキとハケ、あとはさっきの衣装2着があった。直接ポケットに入れていたのはスマホだけで他のものは演劇部の人たちのいるホールにあるらしい。調べ終えると同時に歌乃が入ってきて、演劇部の人が来たそうなので蓮井君はホールに行った。


 ◇


 わたしたちは1階の美玲と歌乃のいるところまで戻って、あったことを報告した。

「なるほどね。で、誰なのか分かったの?」

 美玲は興味津々な様子。歌乃も同じように結果を知りたがっているようだ。

「いや、まだなんだけど……ふたりともありがとうね、こんなことに巻き込んじゃって」

「別に良いよ私たちは。ね、歌乃?」

「うん。私たちは精一杯ほのかを応援したいだけだもん」

「ありがとう、ふたりとも。でもここからは名瀬先輩と凛花ちゃんのふたりで頑張ることにするわ。もうこんなに付き合ってくれたんだから……。もうこれ以上はね」

 美玲と歌乃は顔を見合わせると、大きく頷いた。

「わかった。あたしたちは別に構わないけど、ほのかがそう言うならそうするわ」

「うん。探偵部3人の方が何かやりやすいこともあると思うしね」

 こうしてふたりが去ったのを見届けてから、わたしは探偵部員のふたりの方を向いた。すると凛花ちゃんの方が口を開く。

「私はわかりましたよ。どうやってあのラブレターを隠したのかも、どうやって時間を稼ごうとしたのかも。もちろん犯人もね」

「え?」私と名瀬先輩は同時に言った。すると後ろから声が聞こえた。

「皆さん、お待たせしました。やっとこの福森、到着ですよ!」

「福森先生! もっとさっさと来てくれれば良かったのに……」

 すると福森先生はにたりと笑い、こう言った。

「いや、私は遅れて来て正解だったようですよ。だってほら、いつもより良い表情ですよ、あなたの後輩は」

 わたしの後輩は、いつもの無口で無表情な彼女からは想像もできないような笑みを浮かべていた。

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