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雪美条高校探偵部員たちの事件簿  作者: 香富士
File4 江藤と打ち上げ店の密室
12/56

File4-3 密室を解く鍵

事件関係者

城野じょうの留奈るな(16) 雪美条高校1-C (江藤・森浦の同級生)

昼田ひらた初穂はつほ(37) 「ヒルタ」店員 留奈の叔母

酒井さかい和照かずてる(28) 「ヒルタ」店員

薄木うすき温香あつか(26) 「ヒルタ」店員

昼田ひるた昭友しょうゆう(37) 「ヒルタ」店主 初穂の夫 〔被害者〕


現場周辺図

挿絵(By みてみん)

「それは大変でしたねぇ」

「でも結局何がどうなったのか、過程を知らないんですよわたしたちは。凛花ちゃんが網倉さんに話してる間に、わたしたちは先に帰らされたんで。でも同じ頃に、吉峰警部も気が付いたそうなんですけど」

 僕と凪沢先輩は探偵部顧問、福森ふくもり先生のところにいた。

「じゃあ、森浦さんから直接聞けるんじゃないですか?」

「僕もそうしようとしたんですよ。けど森浦さん、教えてくれなくて。それで先生のところへ……」

「なるほど。じゃあ話してもらえます? どうせこの教室には私たち以外誰もいないんですから」


  ◇


「……という感じです」

 僕と凪沢先輩であの日のことをざっと先生に話した。しばらく考えた後に先生は何かを閃いたようで、にたりと笑った。

「この事件の鍵は文字通り“鍵”ですね」

「どういうことですか?」

「壁に掛かっていた鍵が、本当に店長室の鍵だったのかってことですよ。もし店長室のキーホルダーを適当な別の鍵に付けたとしたら、パッと見ただけでは店長室の鍵。実際に鍵穴に入れない限り、判別は難しいと思いますよ」

「あ、わかった!」

 凪沢先輩が椅子から勢いよく立ちあがった。

「ホントですか! 僕は全然思いつきませんよ」

「いい、江藤君?」

 凪沢先輩は得意気な表情で語る。

「あの人はあらかじめ、別の鍵に『店長室』のキーホルダーを付けておいたのよ。真の店長室の鍵は、自分の手元に置いて。そして理由をつけて厨房を出たら店長室に向かって、昭友さんを花瓶で殴って殺害。既に持っている店長室の鍵で、店長室を施錠してから厨房へ。あなた達が忘れ物を取りに来た時、昭友さんにも聞こうって話になったら自分が鍵を取りに行く。『店長室』のキーホルダーが付いた鍵で開けられないことがばれてしまうからね。だからキーホルダーを付け直してから、他のふたりのところに戻って鍵を渡した。だから犯人は薄木さんってことなのね」

 満足げに福森先生は頷く。

「それが吉峰さんや森浦さんが出した結論なんでしょう?」

 僕は何か違和感を感じたが、福森先生はそんなことには気が付かずに続ける。

「他のふたりは元に戻すタイミングがありません。厨房には常にふたりの人間がいたので、20時30分から21時の間にすり替えることは不可能。だからすり替えのチャンスはあなた達が店に戻り、店を探した始めて遺体を発見するまでの間。酒井さんは更衣室の鍵とすり替えるしか方法がないですが、更衣室には薄木さんも行っているので不可能。初穂さんはすり替えるための鍵がないので不可能。倉庫や更衣室の鍵に1度も触れていないのでね」

 場がシーンと静まり返る。外の運動部の練習する声しか聞こえてこない。気まずくなったのか凪沢先輩がぼそりと言う。

「でも先生、証拠が無いと思うんです。そのトリックが使われたかどうかの」

「僕も思いました。外部犯の可能性も捨てきれませんし……」

「確かにそうですねぇ。私も気になっているんですよ、森浦さん」

 先生はドアに向かって呼びかけた。驚いて振り向くと、ドアを開けて森浦さんが入って来た。

「やっぱり先生は気が付いてましたか。ま、わたしも気になっていたんでね」

「森浦さん! それで証拠は何なんだ?」

「あそこに戻る原因を作った、わたしのハンカチよ」

「どういうこと?」

「後で調べたら、奥の倉庫にあったんですよ。しかも検査すると、昭友さんの血が付着していた。これから推測するに、薄木さんは更衣室でわたしのハンカチを拾い、それを昭友さんを殺害した時に落とした。そしてそれを自分のものと勘違いして、処分するためにに持ち去ったんです。でもわたしたちが来たことで遺体がもう発見されることを察した彼女は、処分できなくなったハンカチを奥の倉庫に隠したんです。酒井さんも奥の倉庫に隠すことはできましたが、自分の物でないハンカチを持ち去る意味がないので、薄木さんが犯人という証拠になった訳です」

「ちなみに凛花ちゃん。動機は何だったの?」

 凪沢先輩が腕を組みながら尋ねる。

「昭友さんと薄木さんのお兄さんは、友達同士だったようでね。彼らが登山に行った時、昭友さんは薄木さんのお兄さんを事故にみせかけ殺した――そう言っていたわ。まあ詳しくはこれからの捜査で判明するでしょう」



  ◇


 放課後、ようやく違和感に気が付いた僕は凪沢先輩を待つ。しばらくして見つかった彼女に、僕は小声で言った。

「凪沢先輩、福森先生は警部さんのことを“吉峰さん”って呼んでませんでしたか? もしかして知り合いなんですか?」

「あぁそういえば江藤君は知らないわよね。お母さんから聞いたんだけど、実は吉峰警部って雪美条高校の卒業生なの。まあ大学は受験でかなりヤバいところ行ってるから、網倉刑事とは別のところへ行っちゃったそうだけど」

「へぇ……って網倉刑事もここの卒業生なんですか?」

「そうよ。彼は普通に雪美条大学に行ったそうだから。でもあのふたりが、わたしたちの部活の先輩であることは変わらないわ」

「え! 意外と古い部活なんですね探偵部って」

「ええ、だから福森先生は吉峰警部も網倉刑事のことを知ってるってわけ」

 結構僕らと似たような感じなんだね、あのふたり。でも彼女らと出会うってことは理由が必要だし、あんまり会わない方が幸福なのかもね。

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