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第25話 この世界の下着事情に期待することをやめた。

◆前回のあらすじ

レオンはアルスが遺失魔術の『転移門』を使えることを酒の席で話してしまったため、

ケルヴィン陛下がアルスにプタハ村御幸を命じる。


意気揚々とプタハ村に冒険者装備で出かける陛下は護衛のバルガスたちと寒村とは言い難い

プタハ村の様子に驚愕する。


魔導ウォシュレットが国王とカプリコヌス侯爵の心を掴んで離さない!

おかげで部下はその対応に苦慮することに。

 ケルヴィン陛下たちの急なプタハ村訪問が終わり、

レオンが『太陽の恵み亭』でジェシカさんに滞在の延長を告げていた。


 その翌朝起きたら、シアとソフィの様子がおかしかった。


「どうしたの2人とも?」


「……///」


「あ、あのね、アル……実はね///」


シアが恥ずかしがりつつ、ソフィーと2人に起こったことを顔を真っ赤にしながら、

俺に説明してくれた。別に羞恥プレイさせるつもりはないのに……。


 シアとソフィが抱えたとある問題、まぁ、第二次性徴によるものなのだが、

胸が成長して刺激に敏感になり、衣服と胸の先端が擦れ、痛くて動けなくなっていた

のだ。2人とも涙目である。


 どうしたものかと【世界検索(ググール)】で調べてわかったのだが、

なんと、この世界に女性用の下着でブラが存在していなかったのだ。


 下穿きも色気のないかぼちゃパンツしかないから、デザインは悪くとも、

あるだろうと考えていたが、まさかないとはね。


「母様、2人にこのような下着を作ってあげることはできませんか?」


 痛がる2人があまりに可哀想で不憫なので、俺はクリスに2人をモデルにしたブラの

ラフスケッチを見せて説明した。


「……っ! ちょっと来なさい、アル!! 

シアたちはここで待ってて!」


「え? ちょっと、母様!?」


いきなり俺はクリスに手をひかれて、うむを言わせず、すごい勢いで

王都の目立たない立地にあるとある仕立て屋に連行された。


「はぁ……あら、いらっしゃい。お久しぶりね、クリス。と……そのお嬢ちゃん?

お嬢ちゃん、始めまして、アタシはキャロル・テタシーよ」


「アルス・ヴィ・アクエリアスです……」


ため息を吐いてどんよりとした思い空気を背負って燻っていたクリスの友人である

仕立て職人に俺は会わされた。


 キャロルさんと名乗った彼女(?)は筋骨隆々で、どう見ても、

女性には見えない強面の人だったが、【世界検索】の鑑定機能は性別で女性を示していた。

……解せぬ。


「あの、僕はおと「キャロル、貴女にこれを作ってもらいたいのだけれど、

お願いできるかしら?」」


キャロルさんの俺へのお嬢ちゃん発言を訂正しようとしたが、

興奮したクリスが俺の言葉にかぶせ気味に俺が描いたラフスケッチを

キャロルさんに渡していた。


「なあ~に? どれどれ、あら、上手に描けているわね……んんっ!?

これはぁああ!!?」


読み進むごとにキャロルさんの覇気のなかった目が職人の目になり、

さらにその職人の目に光が灯り、更に徐々に輝きを増していき、

いつしか背負っていたどんよりとした重い空気は霧散していた。


そのキャロルさんの表情は目が血走って物凄い迫力があり、

今すぐここから逃げ出した位怖い。


「いいものをありがとうクリス。

おかげで失っていた情熱を取り戻せた清々しい気分だわ。


 この素晴らしいものを作れるなら、こちらから土下座してでもお願いしたい位よ。

アタシに任せてくれるなら、これを着るこの絵のモデルの子たちを連れてきて頂戴。

これを作りあげるには正確で繊細な採寸が必要みたいだから♪」


キャロルさんはラフスケッチを読み終わると、出会った当初とは対照的にやる気に

満ちた瞳に笑顔を浮かべて礼を告げてきて、クリスの依頼を快諾し、早速採寸に

入るつもりでいた。


「時間が惜しいわね。キャロルこれから使う手段は他言無用になる

けれど、大幅に移動の時間を節約できる方法があるの。

約束は守れる?」


「……いいわよ。アタシの職人としての誇りと魂を賭けて他言しないと約束するわ」


「じゃあ、内側から施錠できる部屋を案内してくれない?」


「ちょっと待ってね。はい、こっちよ……」


キャロルさんは面に[本日閉店]の張り紙を張って、俺とクリスを

先導し、俺達はキャロルさんの仕事部屋に案内された。


 そこにはおよそ服を仕立てるのに必要な針や糸、布といったものは

もとより、この世界ではじめてみる”ミシン”が見事に整頓されて

置いてある部屋だった。


「ここは防音も完璧だから、内緒話もOKよ」


「アル、”アレ”をシアたちが待っている部屋に繋げて頂戴。

キャロルは少し待っていて」


「わかりました。母様」


「いいわよ。こっちは必要な生地を揃えておくわね」


クリスの指示で俺は『転移門』を開き、驚くシアとソフィを連れて

すぐにキャロルさんの仕事部屋に戻ってきた。


「さあ、始めるわよ!」


そう告げるともの凄い速さでキャロルさんはシアとソフィ、クリスの

採寸を終え、更に数時間も経たないうちに神業の如く数点の上下の試作品を

速さに見合わぬ丁寧な作りで仕上げた。


「うわ~、これで痛くないよ。ありがとうキャロルさん、クリス様、アル!」


「ありがとうございます」


おかげでシアとソフィは衣擦れで痛がることもなくなり、喜びの声を

あげた。


「んん~、久しぶりにいいものができたわ。

折角だから、もっといいアイディアないかしら? アルちゃん?」


キャロルさんが期待の眼差しでこちらを見る。

その筋骨隆々の女性とは思えない風貌が放つ脅威の気配に怯みつつ、

俺は少し思案して応えた。


「では、こういうのはどうでしょう?」


俺はキャロルさんに先ほどのブラとセットでレースやフリルを付けた

デザインのショーツやスポーツブラ、大人向けのデザインのものを

スケッチしてみせた。


「あら、これもいいわね!

……でも、子供の貴方がこれを思いつくなんて。

いえ、頭の柔らかい子供だからこそ思いつくものなのかしら?」


キャロルさんは感じた違和感に少しの間、思案顔になったが、

すぐに俺の出したアイディアのものも試作し、明日までに今日作ったものの

替えの分も作っておくことを約束してくれた。


「お代? いいわよ。この素敵な素晴らしいアイディアをくれたから

いらないわ。それよりもこれをアレンジして販売をしてもいいかしら?」


いやいや、シルクとか辺境の平民では手がでない上級生地使っているから無料は

まずいでしょと言おうとしたが、続く商談の言葉で封じられてしまった。


「……いいですよ。ただ、市場に出回ると粗悪な複製品が出てくると思うので、

それと区別する意味で目立たない位置にシンボルマークの刺繍を入れましょう」


「そうね。粗悪品を作ったのがアタシだと思われるのは心外だわ。

じゃあ……こんなのでどうかしら?」


俺が承諾すると、キャロルさんはサラサラとシンボルのラフスケッチを描いてくれた。

それは糸を通した針を紋章の様に刻まれた宝瓶であった。


「いいわね。それでいきましょう」


クリスの快諾が出て、シンボルはそれで決まり、そのシンボルの刺繍で使用する糸は

魔力を流すと特有の光を放つ特製のものに決まった。


「キャロルさん以外にも衛生品を扱っている大貴族様に販売権をあげることになり

そうですが、いいですか?」


「ああ~、あそこの貴族様ね。別にいいわよ。アタシもあのお方には

お世話になっているから。そうね。できれば早めに話を持っていった

ほうがいいわよ」


「忠告ありがとうございます。王都にいらっしゃるでしょうから、

なるべく早く伝えますね」


さる大貴族とはこの国で衛生用品と化粧品を製造・販売している

大商人でもある伯爵家のことだ。


「ところで、アル。貴方はなんでこの下着のことを考えついた

のかしら?」


クリスが笑顔で尋ねてくるが、その目は笑っていないので怖い。


「……近い将来のためにいろいろケイロン小父さんの本などで

調べていたのですが、女性の胸は加齢とともに形が崩れるそうなので、

解決策はないかと考えていた所で思いつきました。

 母様にはきれいでいてほしいですからね。

シア達に関しては全くの想定外でした」


「もう、この子は!」


「わぷ、母様、苦しいですよ!?」


いきなり喜んでいるクリスに正面から抱きしめられてしまい、

その豊かな胸に圧迫される形になった。苦しいけど気持ちいい。


 前半は【世界検索】を伏せるためのほとんどでまかせでもあったが、

後半のことは本音だ。


 先ほどの怖い笑顔とは異なり、クリスもご満悦であったので、

終わりよければと思っていたのだが、


「ねえ、クリス。この子、本当に男の子なの?」


「ええ、可愛いわたしの息子よ♪」


「そう、残念ね。てっきり女の子だと思ったから、

貴女たちがそこのお嬢ちゃんたちを呼びに行っている間に

貴女の趣味に合いそうな良さ気な服を見繕っておいたのだけれど……」


「あら、それなら問題ないわよ」


「へ?」


母の予想外の言葉に俺は思わず素っ頓狂な言葉を上げてしまった。


「まぁ、可愛いアルにはこれも、うん、これも似合いそうね♪」


「貴女ならそういうと思ったの。これなんかどうかしら?」


「あらあら、それもいいわね♪」


クリスはキャロルさんが用意していた服を手に取り、

ご機嫌だった。


 あかん。本能が全力で警鐘を鳴らしている。

この場で味方になってくれそうな人物は……


「シア! ソフィ!」


2人の名を呼ぶと2人はキャロルさんの仕事部屋の扉に近づき、


カチャッ、カチャッ


施錠を1度外して、かけ直して確認した?


「あたしもクリス様とキャロルさんが選んだ服をアルが着た姿を見たいな♪」


「大丈夫。ボクはアルの伴侶だから、評判に傷をつけるこの場のことは他言しないから」


2人はなんでもないことのように言うが、この状況って、

助け船かと思ったら、護送船だったでござる!?


 次いで、ガシッとシアとソフィが俺の両腕に抱きついてきた。

そして、俺は……天を仰いだ。



その後、俺は4人の着せ替え人形にされて更にまた1日潰れてしまった。。。orz


 楽しみにしていたシアとソフィとのショッピングデートが遠い……。



ご一読ありがとうございました。


次話投稿は7月4日月曜日朝6時を予定しています。

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