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くるい  作者: 天城恭助
4/9

不謹慎と思いながらも幸せを感じる

これからエロとかグロが増えるといったな、あれは嘘だ。いや、これからあるかもしれないけど今回はないです。しかもちょっと短めです。

 その後、篝さんの体調に問題はなく普段通りに学校に通うのは問題がないようだ。

 ただ、京本先輩が登校してきている様子はなかった。達也がこれで平和になるなと言うから、頭を軽く叩いた。

 結局、京本先輩をDRE研究会に入れることは叶わなかったわけだが、今後どうしたら良いのだろう。僕にとっては京本先輩が優先事項だから部室に行く意味があまりない。そう思ったから、部室に行くことはなかった。

 あるとき、身体測定と健康診断を行うことになり、だるいと思いつつ言われたとおりにしていた。そして、今まで一度しか受けたことがなかった検査を受けることになった。

「はい、これ見てね」

 医者に試験管を見せられる。内科検診の後に試験管を見せられている。こんなおかしなことはあの検査でしかありえない。

「はい、いいよ」

「あの、これってKIVの検査ですよね」

「お、よく知っていたね。何? 周りに感染者でもいたの?」

 感染者になるというだけでかなり重いことのはずなのに、この医者はやけに軽いな。

「いえ、たまたま知っていただけです」

 本当のことを言う必要もないと思い、誤魔化す。

「へー。そうなんだぁ」

「ありがとうございました」

 この医者は何となく胡散臭い。整った顔立ちだったからか、保健室の外で一部女子達が少し浮かれているのを見かけた。しかし、俺にとっては怪しい男にしか見えなかった。

 

 放課後になって、部室に行くか少し迷い教室に留まっていると放送の呼び出しがかかった。

『二年B組の京本くるみさん。職員室に来てください。繰り返します。二年B組の京本くるみさん。職員室に来てください』

 京本先輩は来ていなかったと思ったのだが、来ていたのだろうか。確認するためにも職員室に向かうことにした。


 職員室前には、京本先輩の姿があった。

「こんにちは、京本先輩」

「どうして君がここに?」

「ここは学校ですよ。別にどこにいてもいいじゃないですか?」

「……正確な理由は知らないけど、本当は私が呼び出されたからここに来たんだろう?」

 バレてる。結構しつこかったからバレていて当然かもしれない。

 職員室のドアが開くと検査をしていた医者が居た。

「やぁ、さっきぶりだね。京本さん」

「検診の時にも思いましたが、どうして荒賀さんがここにいるんですか……」

 どういう接点か知らないが、知り合いのようだ。

 こっちに気づいたのかこちらに目をやる。

「君はKIV検査を知っていた……京本さんとは知り合いかい?」

「そうですけど……」

「そうか、そうか。知っていると思うけど、京本さん人見知りだから仲良くしてあげてよ」

 何故か嬉しそうにそう言う。

 検査の時は胡散臭いと思ったが今は何だか、とっても人の良さそうな人に見える。

「ちょっと、荒賀さん! 呼び出したの荒賀さんでしょう? 早く要件を言ってください」

「ごめん。京本さんには相談とお願いがあるんだ。人にあまり聞かれたくないし、ちょっと保健室に来てくれないかな」

「わかりました」

「君も来るかい?」

「えっと、人にあまり聞かれたくない話なんじゃ……?」

「京本さんと親しい人はその限りじゃないよ。むしろ来てもらいたい。もちろん、そこでこっちを見ている人たちもね」

 後ろを振り返り見た廊下の角には、遠藤さんと篝さんが立っていた。

 この人どうやって気づいたんだ?

 二人共こちらに向かってくる。相変わらず、篝さんが遠藤さんにくっついたままだった。

「どうして気がついた」

「昔から気配には敏感なんだ。何はともあれ保健室に行こうか」

 言われた通りに保健室に向かい、全員が入ったあと扉を閉める。

「まぁ、適当に座ってよ」

 遠藤さんと篝さんが普段通り隣同士で座り、僕と京本先輩が少し互いに少し離れて座った。

「京本さんは知っていると思うけどまずは僕の自己紹介から始めようか。僕の名前は荒賀優一。自分で言うのもなんだけどちょっとした有名人でね。研究員をやっているよ」

「その研究員がどうしてこの学校の検診なんかしてるんだよ」

「一応、医療免許とか色々と資格持っているからその辺りは問題ないよ」

「そういう意味じゃなくて、どうしてやったのかって話だ」

「ここの養護教諭になるからそのついでに」

 そんな理由でできるものなのだろうか。その上、ここは私立ではなく公立だ。そんな勝手が許されるのだろうか。

「まぁ、僕が無理を言ってここに来ただけなんだけど」

「無理って何したんですか!?」

 食ってかかるように、京本先輩が言う。何をそんなに焦って言っているのだろう。

「別に何もしてないよ。ほら、君も知っているとおり僕は優秀な科学者だから研究の許可をもらっただけだよ」

「研究ってもしかしてKIVですか?」

「当然じゃないか。僕の専門なんだから」

 KIVを研究する上でわざわざこの学校を選ぶということは、ここに二人の感染者がいることを知っているということだろうか。むしろ、それを知るための検診だったのではないだろうか。そんな考えがこの男に対して僅かに疑念が募らせる。

「研究内容に関しては、京本さんは感づいているかもしれないけど、KIV感染者の中でも感染の進行を遅らせることに成功している人が近くにいたらどうなるか? って、とこかな」

「荒賀さんは、私たちを研究対象にしようって言うんですか?」

 表情や態度は極めて平静を保っていたが、その言葉には怒りがこもっていたように感じた。

「平たく言えば、そうなるね。でも、無理強いはする気はないんだよ」

「ここまでしておいて、何言っているんですか」

「確かに、ここまで頑張ったのに断られたらつらいね。だからといって、命令しているわけじゃないんだ。お願いしているんだ」

 逆パターンは、漫画とかでよく聞く気がするがこのパターンはあまりない。けれど、有無を言わせない雰囲気があるだけにそれと何ら変わりない。

 全員、考えているのか無言が続く。

「できれば早く答えてくれないかな?」

 優しい口調ではあるが、威圧感を感じる。

「……わかりました。私に荒賀さんのお願いを無碍に断ることはできません」

「ありがとう。君ならそう言ってくれると思ったよ。君たちもいいよね?」

「あ、はい……」

 その様子に、僕たちの誰も口答えはできなかった。

 これにより、図らずも京本先輩と一緒にいられることになったわけだが、納得はできなかった。


 翌日の放課後。DRE研究会の部室には、昨日集まっていた全員が集結していた。

「やぁ、君は確か須賀誠君だったね」

「……どうしてここにいるんですか?」

「研究させてくれるって話になったんだからここにいるのは当然じゃないかな? それに、ここの部活は非公式だったらしいじゃないか。だから、ついでに顧問をやらせてもらうことにしたよ」

「そうなんですか? 遠藤さん」

「そういうことらしい。正直納得はいかないが一応は目的を達成できているからな。これくらいは……な」

「私はマサ君が良いなら良い」

「それにしても……」

 荒賀さんもとい荒賀先生は興味津々と言った風に、篝さんを見る。

「興味深いねぇ。恋愛をきっかけに進行が止まる例は他にも見てきたけど、ここまで依存しているのを見るのは初めてだよ。それに、恋愛の場合だとすぐに進行が再開することが多いんだよ」

「そうなんすか」

と、遠藤さん。

「まぁ、どちらかといえば相手のせいであることが多いんだけどね。恋人が感染者だとどうしても前と同じようには接することができないから……」

 荒賀先生は詳細を言わなかった。でも、大体の予想はつく。感染者と恋人ともなれば、自分に感染するのではないか。感染が進行して自分が殺されるのではないか。他の人から嫌な目で見られないか。などなど、とにかく色んな心配を抱えることになる。そうなれば、些細なことで関係が悪化することは目に見えている。仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。それでも、以前のように仲良くいられているであろう遠藤さんと篝さんのようにいられればいいのにとは思う。

「だから、君たちみたいな例はとってもお、嬉しいよ」

 この人、今何か言い間違えかけたぞ。

「……荒賀先生。今、面白いっていいかけましたね」

 京本さんが指摘する。

「ごめんよ。本音が隠せなくて」

「べ、別にいいですけど……」

「京本さん、荒賀先生って前からこんな感じなんですか?」

 耳打ちするように聞いてみる。

「四年ぶりぐらいだけど……前と変わらないわ。良い人ではあるんだけどね」

「ところで気になったんだけど、荒賀先生? とくるいちゃんってどんな関係なの?」

 正直気になっていたけど、ズバリ聞いてきたなこの人。

「プッ、アハハ。もしかしてくるいちゃんって京本さんのこと? 君はセンスあるねぇ。なに、僕と京本さんは昔、一緒に研究をしていたことがあるってだけさ」

「研究って、KIVですか?」

「もちろん」

 京本先輩って、一体何者なんだ? 改めてそう思わざるを得ない。

「先生、余計なことは言わないでください」

「特に隠すこともないからいいじゃないか。感染者だということもバレているんだろう?」

「そうですけど、言う必要はないはずです」

「君がそこまで言うならやめておくよ」

 二人にはそれなりの信頼関係があるように思えた。何故か、遠藤さんや篝さん相手よりずっと安心しているように見えた。

 その後、特に何かが起こるわけでもなかった。ただ、二人と一人だった部室が二人と二人と一人になっていた。

 お互い会話が全くないわけではないが、どこか疎外感のある時間だった。何か一石を投じることはできないものだろうかと思案せずにはいられなかった。


 翌日、ニュースを見るとある事件を報道していた。

 連続殺人犯、荒賀雷二による犠牲者がまた出たことである。普段ならニュース事態そこまで気にして見るわけではないが、ある二つの事実が目を引いていた。一つは苗字が荒賀であること。先生も同じ苗字だったので少し気になった。単なる偶然という可能性も大いにあるわけだが。もう一つは、殺人のあった地域が学校から結構近いことだ。電車で二駅分ぐらいの距離だ。母親も少し心配そうにしていた。

 達也に話を聞くと噂の範疇を出ないが、荒賀雷二は荒賀優一の弟であるとのことであった。それが、例え真実だとしても何が変わるわけでもないが気になるものは気になる。本人に直接確認してみることにしよう。

 放課後、部室に行き全員揃ったところで話を聞いてみる。

「荒賀先生」

「何か用かい?」

「今日、連続殺人犯の荒賀雷二って人のニュースを見ましたけど親族ですか?」

 先輩方が少しギョッとした感じで僕を見る。やっぱり聞いてはいけないことだったんだろうか?

「そうだよ」

「えっ」

 京本先輩が驚いてポカンとしていた。

「いやぁ、愚弟のことを知られてしまって恥ずかしい。家族の一人として、世間様に謝らなくちゃならないよね」

あっけらかんと何事もないようにおちゃらけたように言った。

「先生は気にしないんですか?」

「正直な話、僕と弟は血がつながっているけど他人に過ぎないからね。僕にとっての悪評になるのは少し許せないけどね」

「そ、そうですか」

 この人の異常性を垣間見た気がしたと同時に、僕も何か世間とズレているのだと感じた。

「兄弟っていえば、誰か兄弟いる人いないの?」

 先生が他愛のない世間話を始めた。

「僕はいないです」

 遠藤さんも篝さんもいないと答える。

「私には兄がいました」

 京本先輩がそう言った。過去形で言ったということは、死んでしまったということなのだろうか?

「そうなの? 聞かないほうがよかった?」

「いいえ。十年以上前のことですから、気にしていません」

「それならお兄さんのこと聞かせてもらってもいいかな?」

 気にしてないと言っていたが、普通に考えたらその発言自体気を使っていたと思うだろうに。この人は遠慮というものを知らないのだろうか。

「……いいですよ」

 ああいった手前、言えないとは言えないのだろう。そう思いつつ京本先輩について僅かでも知ることができることを嬉しく思っていた。

「兄とは10歳、年が離れていましたが仲は良かったと思います――」

 ――京本先輩は兄について語った。

 教えることが好きで勉強を教えるのが上手かったそうだ。

 その語る表情はどこか楽しそうに見えた。どの程度かは、わからないがお兄さんのことが好きだったのだろう。そのお兄さんが死んだときは、幼かっただろうから余計に辛く感じたのではないだろうか。

「兄はそんな感じの人でした」

「いやぁ、ありがとね。でも、そんなに悲しんでいる様子がなくて安心したよ」

「先生と一緒に研究している時にそんな様子を見せたことありましたか?」

「ないね」

「それじゃあ、なんで気にしたんですか?」

「知りたいと思ったからじゃ、不十分かい?」

「……はぁ。別にそれでいいですよ」

 研究者ゆえの純粋な好奇心なのか、それとも京本先輩に何か特別な感情があるのかはわからなかった。ただ、なんとなくこの人に負けたくないと思った。


 それ以降の日々にこれといった変化はなく至って平和だった。しかし、変化が何も起こらないのは退屈な上に進展もないということでもあった。だが、それが最も良いことだということを僕は知らなかった。


 その後、中間テストを終え部室に向かうと篝さんの姿が見えなかった。

「遠藤さん。何か知っていますか?」

「知らん。連絡を取っても返答がなくて、家にも向かったけど、全く返事をくれなかった。心配だ」

「その割には意外と落ち着いていますね」

「あんま嬉しいことじゃねぇけど、監視が付いているからな。本当に何かあったなら連絡をくれるそうだ」

「なるほど」

「それでは、全員でお見舞いにでも行くかい?」

 先生はニコニコと笑顔だった。

「別にいいんじゃないですか、でも……」

 笑っていうことじゃないよな。

「おい。何、笑ってんだよ」

 同じことを思ったのか、遠藤さんがドスの効いた声で言った。

「失礼。研究者の性みたいなもので、観察対象に変化が起こると嬉しくなってしまうんだ」

「気持ちはわからないでもないですが、それは失礼や不謹慎というレベルではありませんよ」

 京本先輩が注意する。……でも、わからないでもないのか。

「いや、生徒に怒られてしまうとは情けないな、僕は」

「自覚があるなら顔を引き締めてください」

「そうだね」

 先生は急に真顔になった。そして、立ち上がる。

「それじゃあ、行こうか」

 また、顔がにやけていた。


 高校から歩いて30分ほどで篝さんの家についた。閑静な住宅街だった。人も車通りも少ない。この地域一帯が、あの事件によって住む人が減ってしまったのだろう。

 遠藤さんがチャイムを鳴らそうとすると遠藤さんの携帯に電話がかかった。

 それを確認した。驚いてから、すぐに電話に出る。

「お前、連絡もよこさずにどうしたんだよ」

『帰って! くるいちゃんの言った通りだった!』

 篝さんは大声で言っていたようで音が漏れていた。

「一体どうしったて言うんだよ」

 その後の会話はあまり聞こえなかった。

 しばらくして遠藤さんは電話を切った。

「もうやめだ。あの研究は中止にしろ」

「え、いきなりそんなこと言われても困るなぁ」

「いいからやめろ! これ以上、美穂を苦しめるな」

「苦しめた覚えはないけど、そう言われたら引くしかない」

「ああ。そうしろ」

「色んな申請も通りづらくなってしまうんだけどそれでもいいのかい」

「いいんだよ! とにかく美穂に関わるのはやめろ!」

「わかったよ。そこまで言うならやめるよ」

 落ち込んだように顔を俯け、右手で顔を隠していた。けれど、その口元はつり上がっているように見えた。

 その日以降、遠藤さんも部室に来ることはなくなった。

 連絡を取っても出る気配がない。僕には積極性がなかったのでそれ以上のことをすることはなかった。篝さんと遠藤さんが来なくなったことに伴い、先生が部室に来る頻度が少なくなり、先輩と二人きりの時間が増えた。

 気まずい雰囲気ではあったが、僕にとっては至福の時間でもあった。

 先輩といると心臓が高鳴るのがわかる。

「もう君もここに来る必要はないんじゃないか?」

「そんなことありません! 先輩がここにいますから」

 しまった! 今のは告白みたいなもんだったような……

「そ、そうか。私がここに来るのに君が来ないのは、申し訳なく感じるんだよね」

 どうやら、そういう風には受け取らなかったらしい……良かった。良くはないけど。

「……君は私のことが好きなのか?」

「え!? あぁ、えっと、その……好きというか自分の中でどういう気持ちか測りかねている感じですかね」

 ……あぁ、俺のヘタレ。もうここで言ってしまった方がよかっただろうに。

「それなら、確かめてみる?」

「……どうやってですか?」

「私と付き合って」

 何故かわからないけど、期末テスト、夏休み間近で幸せの絶頂を覚えた。

「……是非、よろしくお願いします」

 こうして、僕は京本先輩もといくるみさんと付き合うことになった。

本当は一週間で更新しようと思ったんですが、PS4買って浮かれてましたすみません。ですが、書かずにゲームやってたおかげでDQHのトロコンできたんでこれから集中して書こうかと思っています。なので、これからモチベ保つためにも是非とも感想ください。お願いします。何があっても、なくても書き続けるつもりですけどね。

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