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【偉い人になりたくない】

 俺の初日は伝説になった。参謀として、指揮官としての能力を見せびらかしたようなもんだからだ。

 「なにたいしたことをしたわけではない。冷静に丁寧に正確に行動しただけのことだ」

 クールな感じで二等広報官に答えた俺だが、頭の中ではもう一つのことを考えていた。何故、英雄になるかの別の理由だ。事実だけではない。ふん、そうか単純な理由だな。口に出すべきではないが。二等広報官が帰ったあと、司令室に残った俺は次の命令を待った。

 「よく答えてくれたな。広報官の仕事に答えることを理解しておるか」

 「軍人は命令に従います、美流姫偉閣下」

 「理解しておるかと聞いておる。まあ、いい、理解しているということだろう」

 美流姫偉さまはいらいらしている顔もさまになる。上に立つ人間は表情が豊かであるべきだなと思う。それに比べると俺は能面だな。笑顔も怒り顔も苦手だ。ところで能面って何だ。頭には思い浮かぶんだが。

 美流姫偉さまは誰もいない司令室でやや大きな声で言った。

 「要は負け戦だったというわけだ。レッド軍の主力を壊滅する予定の会戦でそれをできなかった上に損害もあり、しかも、無敵を誇る第1戦車軍団は作戦がしばらく行えない位の消耗をした」

 そうレッド軍も無傷ではすまなかったから、レッド軍もしばらくは戦争を行わないだろう。問題はグリーン軍とブラック軍だ。消耗した我がブルー軍を攻めてくる可能性は大いにある。

 「私を手ごわいと誤解しつづけてくれるといいんですが」

 「誤解ではない。理解させねばならぬ」

 俺は無表情で、というかもともとそうだ。とにかく黙った。

 「お主が天才軍略家にして、勇敢な指揮官だとな」

 「とにかく、消耗が回復するまで敵が来ないことを祈るのみです」

 美流姫偉さまは金色の髪をかきあげながら、無表情な俺をじっと見る。

 「お主は単なる軍人ではなく、政治家の才もありそうだな。」

 「いえ、滅相な」

 「この場で表情を出さないなどとは、政治家の才があるぞ。私が直視すると皆、動揺するものだ」

 いや、この能面顔は日常だから。好きでしていないから。まだ、実質二日目だからって評価高すぎだろう。敵に評価されるのはいい。軍人の仕事だ。上司から評価されるのはいいことなのだろうか。多くの場合はろくでもない任務が増えるだけだが。

 「お主は司令部作戦参謀のままだが、司令部直属の独立旅団も率いてもらうことになった。旅団と言っても先の部隊にさらに敗残兵を追加しただけのしろものだ。ただ敵が脅威に思ってくれることを願うのみだ」

 うわ、司令官から言われちゃったよ。ほら、仕事増えた。便利屋な俺。出世ぽくて、周囲から誤解されそうでやだ。敵より味方から誤解されたりしてね。

 「拝命、お受けします」

 能面顔のまま俺は答えた。ところで、俺の名前は何だ。能面って何だ。




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