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3/7の逆襲  作者: 悠介
第1部 占拠
6/11

#5 “3/7”

「見つかりました、陣内さん!!」

 背後から、数名の警官が声をかけてきた。その手には、端をホッチキスの針でしっかり留められたリストが。

陣内が注文を出してから、まだ15分ほどしか経っていなかった。

「随分早かったな」

 陣内が感心したようにそう言うと、警官たちは満面の笑みを浮かべた。

「我が警視庁の情報網を、甘く見ないでください。それでは、僕たちはこれで」

 そう言って、警官たちはパトカーの方へ去った。陣内は、それをしみじみとした気分で見送っていた。

「いいな、若いって」

「え? 陣内さん、何か言いました?」

「いや、何でもない。それより、こっちだこっち!! 大急ぎで読め!! 30秒で読め!!」

 陣内が、そう言ってバンバンとリストを叩くと、神田と朝田の顔から、サァーッと血の気が引いた。

「む、無理ですよ、無理!! 絶対無理!!」

 確かに、リストは合計で200ページ以上あった。これを30秒で読める奴なんか、神田と朝田は人間として認めない自信があった。つまり陣内は、部下に怪物になれと命じているのだった。もはやメチャクチャである。

「うるせぇ! この世に無理など存在しない! さっさと読め!!」

 自分でもよく分からん理論を無理やり自分の口からひねり出すと、やっと神田と朝田はリストを開いた。ブツブツ言いながらだが。

 パラパラとページをめくっていく。だが、100ページを過ぎても、目星はつかなかった。だが、面倒くさそうにページをめくっていた朝田の手が、ピタリと止まった。目がカッと見開かれる。

「こ、これは、何のリストなんだ?」

 先ほど駆けていった警官たちに、朝田は再び声をかけた。

「あ、それですか? ……実はですね。10年前にも、今起こっているテロ事件と似たような事件があったんですよ」

「な、何!?」

 それを早く言えよ、と叫ぼうとしたが、慌てて思い留まる。こんなところで、叫んでいる暇はない。こいつの話を聞くのが先手だ。

「ちょうど10年前の今日、大桐建設大神町支店に、10数名のテロリストが侵入し、何名かが重軽傷を負った事件です。幸い、死亡した人はいなかったみたいですが――偶然とは思えませんね。そのテロリストは、通称“3/7”と呼ばれているそうです」

「ナナブンノサン?」

「はい。3/7の確率で逮捕できるということで――で、そのリストは、その日非番だった警官のリストですよ」

「え?」

 いきなり、話が別の方向にすっ飛んでいってしまったので、朝田はびっくりして、きょとんとした顔になってしまった。だが、よくよく思い出せば、それは自分が最初に質問したことの答えだということに気づいた。

「非番……警官……テロリスト……」

 朝田は、アゴの下に手をやって考えた。……偶然とは思えない。もし、俺の考えていることがビンゴだったとしたら――これは、大変なことだぞ。

 朝田は、いったんその“ヤバい”考えを頭から締め出すことにした。不用意に口にして、あまり場を乱すべきではない。

 だが、もしそうだとしたら――

 朝田の頭の中の不安は、立ち込める暗雲のように、ただただ広がっていくだけだった。

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