表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7の逆襲  作者: 悠介
第1部 占拠
3/11

#2 1/20

 三郎が携帯で呼んだ警察は、すぐに到着した。パトカー数十台に、警官数百人。もう既に、異常な事態になっていた。

 廊下に出て、その様子を窓から見届けた三郎は、再びエレベーターに隠れた。エレベーターにいれば、いつどんな事態に陥っても、素早く移動できるからだ。

 するとそのとき、エレベーターの扉の向こうで、廊下を足踏みする音が聞こえた。大勢の人間が移動する音である。何だ? 奴らが移動するのか……? ……いや。武装集団は、もっと多い人数だったはずだ。それなら、誰だ……?

 しかし、そんなことよりももっと危険なことが起こった。扉の向こうで、

「エレベーターに誰かいるか、調べてみるからな」

「おう。誰かいたら、即刻殺すんだぞ」

 という声が聞こえたのだ。そして、足音がこちらに近づいてきた。

 ……ヤバイ! そう本能的に感じ取った三郎は、エレベーターの1階ボタンを連打した。だが、こんなときに限ってエレベーターが故障したのか、テロリストがわざとエレベーターを使えなくさせたのか、エレベーターが動く気配は、全くなかった。

 ……クソ!! どうする!? このままじゃヤツと、鉢合わせになるぞ! そうなったら――終わりだ。武装している人間に、丸腰の人間が勝てるわけがない。だが、今の三郎にはその選択肢しかなかった。その“ありえない”勝負に賭けなければならない。

 やがて、エレベーターのドアが開いた。ドアの向こうには、屈強な体つきをした、ボディービルダーのような男が立っていた。もちろん、体中を武装している。

 相手も、人がいるとは考えていなかったようで、一瞬、困惑の表情を見せた。

 ――今だッ!!

「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーっ!!!」

「!?」

 三郎はいきなり、相手の腰を狙って、突っ込んでいった。油断していた相手は、吹っ飛ばされて、転がりながら、廊下の壁に激突した。

だが、相手は戦闘のプロ。しゃがんだまま三郎の腰の下に滑り込むと、下から素早く起き上がり、強烈なアッパーカットを食らわせた。三郎の体が浮き、そのまま、エレベーターの中へ転がり込んで、エレベーターの硬い床に、頭をしこたま打ち付けた。三郎の目の前を、チカチカと星がいくつも舞う。相手も、三郎を狙って、エレベーターの中に突っ込んだ。

 相手は腰からナイフを取り出そうとしたが、三郎がそれを抑える。もみ合いになり、三郎はボタン部分の方へ追いやられた。そして、うっかり背中が当たってしまったのか、エレベーターのドアは閉まり、降下を始めた。1階のランプが点灯している。目的地は、1階である。

 三郎は、相手の手をガードしたまま、素早くボタン部分からドア側に移動すると、相手の手を振り払って、相手の下へ滑り込んだ。

「!?」

 そして、突然三郎が消えて狼狽している相手の足に、手を引っ掛けて転ばせる。油断していた相手は、エレベーターの壁に頭を打ちつける。その隙に三郎は、エレベーターのドアをこじ開けた。もちろん、エレベーターから脱出するためである。

「脱出させるわけにはいくかっ!!」

 相手は、なりふり構わず、いきなり三郎に突っ込んできた。だが、そのときにはもう、三郎はエレベーターの天井に手を掛け、よじ登り始めているところだった。素早く上体を乗せ、下半身も乗せると、三郎は安堵の息を吐いた。

 だが、そう安心してもいられなかった。今度は相手は、下から天井を機関銃で撃ってきたのだ。

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁーッッッ!!!」

狂ったように叫びながら、連射してくる。三郎は素早く貫通してくる銃弾を交わし続けるが、天井の壁は穴だらけになり、脆くなって、天井の壁が抜け落ちた。そして、三郎も再びエレベーター内に落ちてしまった。

「くっ……!!!」

 死を覚悟した、そのときだった。

 三郎は、何を思ったか、相手の足にタックルを食らわせた。

「うおっ!?」

 いきなりのタックルで不安定な体形になった相手を、素早くドア側まで押し付け、移動させると、相手の顔を、いきなりドアの向こうに突き出した。

「えっ!!? えっ!!?」

 予想外の出来事に狼狽する彼の頭の下に、コンクリートの壁が迫っていた。

「うギャあアあぁあアァあアああっッッ!!!!!!!!」

 断末魔の叫び声を上げると、彼はコンクリートの壁に後頭部を強打し、その弾みでエレベーター外に放り出された。

 彼の死体は空中を彷徨った後、地上20mの高さから落下し、床に全身を強打して、グチャリと潰れたのだった。

「ハア……ハア……ハア……」

 相手との肉弾戦を終えたばかりの三郎は、降下するエレベーター内に、座り込んだ。電子表示は、間もなく1階に到着することを示していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ