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3/7の逆襲  作者: 悠介
第1部 占拠
10/11

#9 1/14=?

 本当にこれでいいのか?

 テロリストの1人である宮城将太みやぎしょうたは、20階廊下にいた。ボスに、見回りを任されたのである。

 だが、宮城は、“迷い”を感じていた。

 ――俺には家族がある。

 清楚だが少しやんちゃなところがある妻、

 いつも仕事の邪魔をする可愛い子供。

 今年の10月には、2人目が生まれる。

 結婚して、子供が生まれた頃は、何もかもが幸せで、楽しかった。

 このときが、永遠に続いてくれればな、とも思った。


 ――だが、世の中はそんなに甘くなかった。


 子供が生まれて2ヵ月後に、勤めていた会社が倒産した。何も能のない自分を、喜んで雇ってくれた、最初の会社だった。

再就職しようとしても、高卒の宮城では、なかなか雇ってくれるところはなかった。公務員になろうとも思ったが、そこまで猛勉強する気にはなれなかった。

現在何とか就いている職は、24時間営業のスーパーの警備員。月給8万。夜勤なので生活リズムが乱れ、家族との時間も無くなる。何より、8万円で1ヶ月しのぐのは、辛かった。

 そんなとき、声をかけられた。


「一緒に、世の中を変えないか?」


 宮城は、その話に飛びついた。大桐建設本社ビルテロ。分け前は5000万円。何よりこんな世の中を変えたいと思っていた宮城にとっては、神様がくれた貴重なチャンスだった。これを逃したら、もう次は無いように思えた。


 だが、本当に良いことなのか?

 いくら世の中を変えるといっても、人質をとり、邪魔する者は殺し、大金を要求する。

 これで、悲しむ人が、どれほどいるんだ?

 そう考えると、自分のやっていることが、果てしなく虚しく思えた。


 20階人質部屋に到着する。

「おう、宮城。早かったな」

 田中たなかが声をかけてくるが、それもどうでもよかった。

 視線を逸らすと、テーブルの上の花瓶が目についた。花が生けてある。白い花びらの、綺麗な花だ。地味ながらも、清楚な感じがする。だが、どこかやんちゃな感じもした。

 まるで、俺の家族のようだ。

 そう思って、宮城はその花を、自分のシャツの内ポケットに、優しく入れた。

「何だ? お前、花が好きなのか?」

「いや……そうじゃないが……」

 宮城は、内ポケットの花を、優しい眼差しで見つめていた。

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