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蛍雪の光  作者: snow
1/1

プロローグ1

俺は、何度あいつに負けただろう。

初めて会った5歳のころから10年間、何百何千とおれはあいつに戦いを挑み、そのたびに負けた。

俺は血反吐を吐くくらい努力していたのに。

あいつはろくに努力なんてしていなかったのに。

あいつは天才で、俺は凡才以下だった。

どれだけ走っても、どれだけ木刀を振っても。

全然差は縮まらなかった。

追いつけるなんて、誰も思っていなかっただろう。

剣術を教えてくれた爺さんも、仕事一筋だった親父も、にこにこ見ていたお袋も、

俺自身ですら、思っていなかった。

それでもずっと追いかけていた理由は、俺があいつに惚れていたからだろう。

綺麗で、強くて、寂しげで…。

そんな孤高の天才に出会ったときから惚れていた。

まあ、自覚したのは中学に入ってからだったが…。

綺麗なあいつの傍にいたくて、強いあいつに追いつきたくて、寂しげな顔を笑顔にしたくて、俺はずっと頑張ってきたのだと思う。

正直、勝てたら告白しようと思っていた。

友達に話したら「それ、死亡フラグだろ!」と笑われたこともあった。

少しでも良い効率の体の動かし方を、少しでもいい効率の修行法を、自分で考えて見つけ出していった。

頑張ってきたかいがあって、気づけば俺は強くなった。

他の奴に喧嘩で負けることもなくなったし、あいつと闘う時も闘う時間はどんどん伸びた。

実力差も少し、また少しと減っていくのがわかるようになった。

それでやっと、かすかな、一筋の勝算が見えた。

ずっと追っていたその背中が、手に届く所まで来た。

あと少しで勝てる。そんな時に……。

俺は異世界に召喚され、そして殺された。

俺、雪里蛍ゆきざと けいは、あいつ、姫路輝夜ひめじ かぐやに1度も勝つことなく、告白もできないまま一生を終えた。

死亡フラグを折ることはできなかった。

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