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第十三篇 計画漏洩

「──かなり危険な賭けだけどね」

 姫翠が静かに付け加える。

「一回失敗したら心がもっと傷ついて、その時ばかりか、二度と学校へ来られなくなるかも知れないから」

「……まぁ、俺は良いと思うがな……、ゆっくり時間をかけて話をしたとしても、いずれは思い切らなきゃならない時が来る。幼馴染がこんな自信満々なんだから、可能性も皆無じゃないだろう」

 政光が言った。何故かその言葉が、翔也にはとても頼もしく聞こえた。しかし、政光は懸念するような視線を月葉へと移す。

「まぁ、お前がどう思うかわからんがな」

 月葉は目を閉じて小さく息を吐いた。

「……とりあえず、何を考えてるかを教えて欲しい。まず、会長が幣原さんを全面的にバックアップすることを伝えれば、彼女の気持ちが復帰に傾いていくと思うのは同意するわ。でも、その後、どうやって唐突にコミュニティーに交じるだけの自信をもたせるのか、そこが問題だと思う。生徒会の権限って、何をするつもりなの?」

 問いかけの視線が翔也に刺さる。翔也が横目で姫翠を窺うと、姫翠は真っ直ぐ彼を見返して頷いた。

 翔也はつばを呑み込んで、大きく言った。

「……全校生徒を集める集会を開いてもらい、壇上に幣原を立たせてスピーチをさせて、全校生徒の理解を得ます」

 まるで、誰もいない大ホールの片隅で言ったかのように、翔也の言葉は生徒会室に響いたように思えた。

 月葉は眉をひそめる。

「本気で言ってるの?」

「……マジかよ」

 政光も流石に黙殺できなかったらしい、呆れたように言った。

 尤もな反応だ。長い間、家どころか部屋からもほとんど出ずに、家族と翔也以外と会話してこなかった瑠子が、いきなり全校生徒の前に姿を晒して話などできるはずがない。そんなこと、翔也が一番わきまえている。

 翔也は言葉を丁寧に選びながら言った。

「幣原が姿を晒すことは絶対にできません。だからついたてを立てて、誰にも幣原の姿を見せないようにするんです。その裏で、幣原は会長だけが見える状態で、マイクに語りかける。もちろん、そのスピーチの内容は作る必要はありますけど……、それで幣原の言葉は全校生徒に通じることになる。理解が得られれば、……少なくとも大楽庭の中での幣原の居場所は確保されるはずです」

 内心冷や冷やしながら翔也は説明したが、月葉は何も言えないようで押し黙ったままだった。

「……ヒントは月葉からもらったんだけどね」

 姫翠がいたずらっぽく言った。月葉は彼女が言わんとする事を理解したのか、目を瞠ってから恥ずかしげに顔を側める。政光がそんな彼女の様子を見て、疑問を呈した。

「どういうことだ?」

「外見と内面のギャップが大きいのなら、内面をきちんと人に見せてあげなくちゃいけないからね」

「……そういうことよ」

 月葉が小さく言う。

「ン……?」

 政光はピンとこない風だった。もともと政光は外見に頓着しない性質らしいから、月葉直々の近づきが無かったのだろう。なんとも政光らしい、と翔也は思った。

 月葉は自分の話題を終わらせたいのか、やや強引に言った。

「それで、そのスピーチが終わったらどうするの? まさか、話すだけ話してそのまま引っ込む、なんて茶番にもならない」

「……それは……」

 翔也は鼻の頭を掻いた。この作戦で一番困ったのはそこだった。彼女が姿を見せなければ話にリアリティが出ないし、第一その話を誰がしたのかわからなくなり、催しの意味がなくなってしまう。ならば、彼女は大衆の前に顔を見せなければならない。しかし、彼女にその勇気があるかどうか、自信があるかどうか、そして受け入れてもらえる環境があるかどうか。これらの懸案がある以上、瑠子はこの立案に参加してくれるとは思えなかった。

 もちろん、無策ではない。

 ──あらゆる想定をしてみたが、結局たどり着いた最善と思われるその方法は翔也にとっても重い選択だった。自分でその終局を考えておきながら、その実行を決断するのに時間を要した。だが、思ったよりも多く掛からなかった。長いこと瑠子の再帰を望んでいた気持ちの堆積が、心の支えになったに違いない。

「──一人で立てないのなら、誰かが一緒に居てやればいいんです」

 翔也は静かに言った。


「……あぁ、ついていくのがやっとだった……」

 彰介がぐったりと座り込んで言った。規華はベッドに腰をかけて、ぼうっとしている。

 会議は翔也と姫翠の案を採用するに至って解散した。危険は確かに大きいが、決して償えない損害が出るわけでもない。仮に失敗して彼女が傷ついてまた逆戻りをしても、瑠子が生きている限りは可能性がある。いざ本番になった時こそ何が起こるか分からないが、成功さえすればとても大きい。

 だが、それ以前の懸案事項は、瑠子がこのイベントに参加してくれるかどうかである。朝会という場を学校が用意してくれるかも分からないが、何よりもその同意がなければ始まらない。

 なので明日、瑠子の家を生徒会で訪れることにした。今日訪れても良かったが、アポ無しでぞろぞろ訪ねられても困るだろう、という配慮をしたのだ。そのことを幣原家に連絡する役目は、翔也が負った。

 そこまでで話は終わったのだが、姫翠は用事があるといって早く帰ってしまい、月葉も政光を伴って出て行ってしまった。──そして、残された二年生は悄然としている。

「よほど俺が浅はかだったって思い知った……何も発言できなかったからなあ……」

「うん……」

 彰介と規華はほとんど参加できなかったことを気にしている。今まで生徒会で行なってきた話よりも、今日のそれは格段に重い話だった。翔也も瑠子と馴染みがなければ、迂闊に口出しできなかったに違いない。

「あぁ……もう! こんなんじゃダメだよね!」

 規華が唐突に威勢よく言った。

「く、空気を変えようよ! 話はそれからだよ!」

「空気ねえ──、あ、そうだ。俺ずっと気になってたことがあるんだけどさ」

 彰介の言葉はどうやら翔也に向けられているらしい。彼は振り向いて彰介の顔を見る。

「俺ですか?」

「あぁ、お前って会長のこと好きなのか?」

「え──」

 翔也は絶句した。思考が根こそぎ奪われたように、ぽかんとして彰介の顔をただ凝視している。

 そんな翔也の様子に、二年生二人は愉快そうに顔をほころばせた。

「お、図星か?」

「まぁ、バレバレだよね……私も人のこと言えないけど」

「ああ、全くだ」

「……そうきっぱり言われるとちょっとムカつく」

 翔也はそこでようやく我に帰って慌てて彰介に食いついた。

「ちょ、ちょっとどういうことですかそれ!」

 すると彰介はきょとんとした顔をする。

「あれ、違うのか」

「そんな訳ないじゃないですか。一介の庶民にすぎない俺がどうして会長を好きになることができるんですか!」

「……まぁ、俺達はそんなようなプロセスがあってここに居るわけなんだけど」

「うーん……紺屋センパイも月葉も学園じゃ有名だからね……、そんなこと言ったら、庶民である私達はここにいないわけだし……」

 彰介と規華が顔を見合わせる。そういえば、彼らは元々恋愛絡みの不思議な成り行きで生徒会に誘われたのだ。ならば、翔也が姫翠を好いていてもある意味当然となるのだが──いや、その理屈はおかしいか。

「で、でも俺は会長にそんな気持は持ってませんよ」

 翔也が否定すると規華は首を傾げた。

「ふーん……、でもさ、明らかに日に日に柄井の会長に対してぎこちなくなってるよね」

 翔也はギクリとした。月葉が言っていた、翔也の姫翠に対する『恋心ではないが、それに近い何か』という言葉が思い起こされたのだ。今なら、翔也はその『恋心ではない』ときっぱりといえるだけの根拠を持っている。その、根拠とは──

「──実は、会長のちょっとした話を聞かせてもらったんです」

 翔也は敢えて秘密めかして言った。すると案の定、彰介が何か察したらしい。

「苦労話みたいな感じか」

「まぁ、そんなところですけど……、それがなんとも気になっちゃって……」

「へぇ、よく会長話してくれたな」

「……まぁ、その話が、俺の会長立候補の助けになればって感じでしたね」

 この言葉は全てが嘘ではない。確実に、姫翠の秘密を全校生徒へと明かすという企みは、翔也の心を揺らがして会長立候補への恐怖をかき消し始めている。以前に抱いていた辞退への申し訳なさとは無関係の、自分の意志で立候補しよう、という心持が少し、少しだけだが芽生えた。

 ──そして、初めてあのアパートで彼女から話を聞いた折から引っかかっていたことが、姫翠のその企てを聞いたことによって一つの推測になった。きっと、その推理を姫翠に話したところで彼女はきっと認めないし、仮に認めたとしても却って翔也自身が彼女と自然に接せなくなるかも知れない。だから、翔也は黙ってそれを心のうちに留めておくことにした。

 彰介が大きなため息と共にぼやく。

「そうか……、俺もそろそろ会長立候補に向けて考えないとな」

「まぁ、その前にどうにか今日みたいな会議にもついていけるようにしなくちゃ」

 規華が自分を奮い立たせるように言う。どうやら、翔也に対する言及は終わったらしい。翔也は胸を撫で下ろした。


 地元に帰ってきた時にはすでに、日はすっかり暮れていた。月葉に喫茶店に付き合わされた時のことが思い出される。だが、当時と今では幣原家を訪れる理由は全く違う。

  翔也は幣原家のインターホンを鳴らした。ややあって、瑠子の父が玄関の扉を開け、僅かな笑みと共に翔也を迎えた。

「やぁ。……まだ、瑠子は決心ができてない。やっぱり、かなりの不安があるみたいで……」

「分かってます。今はかなり辛い時ですから……、えっと、今日来たのは会いに来たからじゃなくて、ちょっと確認しておきたくて来たんです」

「……何だい?」

 瑠子の父の顔が少し緊張を帯びた。

「明日、結構な人数で来るんですけど……大丈夫ですよね」

「……それは、学校の人?」

「はい。生徒会の人たちです」

「……それは」

 非常にありがたい、と言わんばかりに彼の頬が緩んだ。翔也はその表情に安堵を覚えつつ、変わらない口調で訊ねる。

「なので、明日はあいつの部屋のカーテンは閉めておいてくれますか?」

 彼は首を傾げた。

「どうして?」

「いえ……、ちょっと考えてる所があるので」

「……分かった。そうしておこう」

 翔也は礼を述べて幣原家を立ち去った。無心に半ば急ぎ足で自宅へと向かう。

 姫翠の部屋は明かりがついていなかったが、彼女とは打合せたいことがあったので、その旨を付箋に書いて扉に貼りつけておいた。

 自宅も暗くひっそりとしていた。父はまだ帰っていないらしい。

 翔也が風呂から上がった時、俊也は帰宅した。

「おう」

「あれ、今日は早いね」

「まぁな、こういう日もある……それに、お前に聞きたいことがあるしな」

 翔也は休日の間に、俊也に瑠子の件についてあらかた話してしまっていた。俊也が委細を何度も訊いてきたからでもあるし、俊也と瑠子の父との旧い関係と考えると、父を今回の件から閉め出すのも気が引けたからでもある。

 必然的に、翔也は自分のおかれた立場を説明した。つまるところ、生徒会長の後継者に選ばれ、生徒会に関与しているということであるが、もちろん、隣人が生徒会長であることは言わなかった。──幸い、入学式で父は爆睡していたらしいので、隣人が生徒会長だということに気が付いていなかった。

 俊也は適当に腰を下ろして訊ねてきた。

「で、生徒会では幣原について、どういう話にまとまったんだ」

「……大体、昨日俺が話したとおりの感じ」

「へえ、大層俺の息子も随分出世しちまったもんだ。生涯、そんな風に表立つことなんて無いと思ったのに」

「それ、本人の前で言うか……」

 翔也が呆れた風に言うと、俊也はいたずらっぽく笑った。相変わらず、責任という文字が似つかわしくない父だった。

 それから三十分ほどのち、二人で夕飯を食べていると呼び鈴が鳴った。翔也が急いで玄関に行って確認すると、客は姫翠だった。

 俊也が顔をのぞかせて言う。

「誰だ?」

「友達。ちょっと、外で話してくる」

「そんな嘘なんて吐くこと無いぞ」

 あたかも彼に心中を透視された気がして翔也はギョッとして父の顔を見る。だが、俊也は酔った時によく見せる大らかな笑みを浮かべていた。

「隣の姉ちゃんだろ?」

「えっ」

 心臓を縄で縛られたような緊張を感じたが、そんな彼の内情など全く知らぬ様子で俊也はご機嫌そうに言った。

「まあ、伝言する時はもっと機密性の高い方法を使うんだな。ドアにあんなべたっと貼ってあったら、誰に盗られてもおかしくないぞ」

「……あれを見たのか……」

 姫翠の部屋の扉に貼り付けておいたメモを見られたらしい。姫翠の素性を知られまいと日々苦心する翔也には、なかなか冷やりとする発言だ。

 その後、俊也を何とか言いくるめて翔也は外に出た。姫翠は黒いコートと白いスカートという私服姿で、寒そうな表情をして立っていた。

「待たせちゃってすみません」

「あ、だ、大丈夫だよ。……それで、話って何?」

 生徒会室では絶対に見られない、やや気恥ずかしげにいる彼女とは久しぶりに会った気がする。

「まぁ、ちょっとしたことなんですけど……、明日、幣原の家に行く時、俺が最初に一人で入っても良いですか?」

「うん……良いけど、どうして?」

「……いきなり生徒会全員で押しかけたら、あいつの心臓が止まっちゃいますよ」

 翔也は真剣に言った。


 明くる日の放課後、翔也は政光と月葉と一緒に、雑学研究会の部室へと向かった。担任である白瀬に会うためだ。浅井がいつか、顧問が担任だ、とか漏らしていたのを思い出す。裏を返せば、行った先で浅井に出会う可能性が高いわけだが、この際仕方がない。生徒会の中で、一番白瀬に話を持ちかけやすいのは翔也しかいない。

 白瀬とコンタクトを取る目的は、彼に生徒会の味方となってもらうことだ。全校生徒を集めた行事を執り行うことを教師達に合意してもらうのに、生徒だけの説得では効果が薄いだろう。白瀬のバックアップがあれば、いくらかこちらの要請に重みが増すだろう、と考えた。

 件の部室までたどり着くと、政光が咳払いをした。

「じゃあ、入るぞ」

 月葉が翔也は頷くと、政光はノックの小気味良い音を響かせて、扉を開けた。

「失礼します。生徒会の者ですが、白瀬先生はいらっしゃいますか」

 室内では四、五人が向い合って話をしていたが、一瞬で白けてこちらに視線を向けた。その近くでぼんやりと座っていた長身の男が、のっそりと立ち上がる。

「俺?」

「はい。少々、お時間よろしいですか」

 政光が爽やかな調子で言う。白瀬は特に怪訝そうな様子も見せず、素直に部屋の外まで出てきてくれた。

「あれ、柄井、どうしてここに居るんだ」

 白瀬は翔也を見て驚いたように言う。翔也は視線を逸らして、言いづらそうに答えた。

「ちょっと、生徒会の使い走りをやってまして……。って、先生本当にここの顧問なんですね」

「残念ながらな……、副でも良いからバスケ部の方に回りたかったが、ここの部長に引きぬかれてな……はぁ……」

 白瀬は露骨に残念そうなため息を吐く。だが、すぐに真面目な表情になって訊ねた。

「それで、何の用?」

「……幣原瑠子さんの件で、話があってきました」

 月葉が滔々と、瑠子の目下の状況、生徒会の方針などを説明した。それに付け加えるような形で、政光が言う。

「そうすると、そのスピーチをする場が必要です。全校生徒を集める必要がありますから。その打診に、これから職員室或いは校長室に赴く予定なんですが、お力添え願えませんかね」

 政光が言う。すると、白瀬は自嘲気味に苦笑した。

「あはは、なるほどなぁ。教師陣からは絶対に出ないような作戦だな、本人にスピーチをさせるだなんて。……協力か、そうだな、よろこんでさせてもらうよ」

「ありがとうございます」

 三人は礼を述べる。それから、月葉が言った。

「じゃあ、一旦生徒会室に来て下さい。少し打ち合わせをしますので」

「分かった。どうせ、この部活は俺なんて居なくても機能してるし、構わないだろ……」

 三年生の二人が白瀬を伴って歩き始めたので、翔也も自然、その流れに乗って歩き始めたが、ふいに誰かから腕を思い切り掴まれて立ち止まった。

「よう、柄井……、何の話をしてたんだ?」

 振り向くと果たして、浅井だった。いつも見せる飄々とした面持ちは消えて、ひどく真剣な顔をしている。

 翔也はぎこちなく愛想笑いを浮かべた。

「な、何の話って……?」

「今の今まで、ここで何の話をしていたんだ、って訊いてるんだ」

 前方を歩いている政光達が振り返って翔也を待っていた。翔也は浅井の様子をちらりと窺ってみたが、すぐにはどうにもならないと判断を下し、政光たちに言った。

「……先に行ってて下さい」

 すると政光は頷き、また歩き出して廊下の角を曲っていった。

 浅井はその背中を眺めながら、さっき翔也の腕を掴んだ時の真剣さなど無かったかのように、いつもの調子で言った。

「あの人らって、生徒会の紺屋先輩と草壁先輩だろ? ……もうすっかりお前、生徒会に馴染んでるのな」

「まぁ……、色々あってさ」

 翔也が自嘲めかせて言うと、浅井は軽く笑う。

「──で、その大御所二人と担任で、一体何を話してたんだ」

「他愛のない世間話──ってだけじゃあ、見逃してもらえないよね」

「あぁ。だって、幣原がうんぬんかんぬん、言ってなかったか?」

「……地獄耳なのか」

 月葉の説明は必要最低限の音量であったのに、よくも立聞きができたものだ。

「ちょっと好奇心だ。聞かせてくれ」

 浅井は平気な顔をして言う。翔也は疑惑の眼差しで彼の顔を見た。

「ちょっとした好奇心で、あんな重要そうな局面にいた俺を引き止めたりはできないと思うんだけど」

「お前はそうなのかも知れないけど、俺はできたぞ」

 しれっと言ってのける。自分はもしかしたら、こういうあっけらかんとした押しに非常に弱いタイプなのかも知れない、と翔也は思った。

「……誰にも言わない?」

「もちろん」

 浅井は瑠子が不登校であることも、彼女が翔也の幼馴染であることも知っている。だから、箝口令を敷いておけば話しても支障は出まい、と踏んだのである。

 そういうわけで、あらかたの計画を話してしまった。

「ふぅん……なるほどねえ……」

 浅井は思案げに言った。なんだか、ただ単に好奇心を満たした、という表情に見えなかった。なんだか、狡いネズミにまんまと騙されて食物のありかを教えてしまったような、そんな心持がした。

 だが、一瞬、そう直感的に思っただけであとは妙な違和感だけが残った。

「何か、気になることでもある?」

 翔也は思わず訊いた。

「あることにはあるが……、まぁ別に今言う必要も無いだろ」

 浅井は恐ろしくけろっとして言った。


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