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1‐(1)二週間の時を経て

 ~4月30日~

  

 バン!

 銃声がコンクリートで固められた四角い空間に響いた。

 荒波の左肩に軽い衝撃が掛かる。

 銃口から発射された弾丸が25メートルの道のりを駆け抜けまとに次々と命中していった。

 当たった的は潔く倒れ、別の場所から違う的が上がる。

「ふうー」

 荒波はこった首を回して息を吐いた。

 7発目を打ち終わった荒波は安全装置を掛け、モニターを確認する。

「心臓に当たったのは4発、まあまあか……」

 荒波が数えていたのは人型のまとに弾がいくつ当たったか、ということ。

 ここ、ティリスミナリアに来てから既に二週間。荒波は射撃演習場に毎日のように通ってきていた。

「どうだ? 『ワルサーPPK』の使い心地」

 奥で荒波を見ていた人物が近づいてくる。

 この射撃演習場とその上にある銃専門店『ウインドホール』のオーナー―――――――サングラスが特徴の都倉とくら

オーナーと言っても荒波より2つ上なだけだなので、だいたいはため口で接していた。

「悪くないけど、軽いし……なんか小さい」

 正直に銃の感想を述べると都倉は残念そうな顔をする。

「おまえは体に取り込んでしまえるけど、俺らみたいな人間はコンパクトにしたほうがしまいやすいんだよ」

「そんなこと分かってるよ、俺も二週間前まで人間だったからな……」

「でもなあ、来たばっかの新人がTSOにいきなり入隊とか俺初めて聞いたぞ」

 TSOとは二週間前に荒波が所属したチームの略称だ。

 正式名称『Telysminaria special organize army』。意味はティリスミナリア特別編成軍。

 長老やそのほかの大臣らから受けた依頼をこなし、主に人間と神相手に戦闘を行うチーム。

 〝軍〟と付いているがだいたいは二人から四人ほどで仕事を行う。

 中には依頼を絶対に一人でこなす『1人だけの軍ワンマンアーミー』もいるらしい。

「訓練場には行かなくて良いのか? 毎日毎日俺の店に来てるけど」

「来なくて良い、って言われた」

「はあ!? 何したんだ荒波!」

「違うよ、剣術がうますぎて訓練は必要ないってこと」

「なんだそりゃ?」

 別に荒波がナルシストになったわけではない。その通りだった。

 訓練所で剣を握った瞬間、懐かしい物がこみ上げてくるような感触がして、教官の剣捌きを見るたびに思い出すように剣術が頭に浮かんできたのだ。

 5日前に訓練所で行われた模擬剣術戦闘では片手一本で余裕で優勝してしまい、教官を本気で驚かせてしまった。

 しかしその戦い方を見れば誰でもそう思うだろう。

 荒波の戦い方は剣を相手と交差することがほとんど無いからだ。荒波は切り込んでくる訓練生を華麗に避け、隙が出来たところで剣を振るう。

 しかもそれが1週間あまりでできたのだから、驚くなと言う方が無理がある。

 最速5秒で相手を降参リザインに持ち込むその腕前は、一夜にしてティリスミナリア中に広がった。

 と、いうわけでもう荒波は剣術より拳銃を優先させたいという気持ちになっていたのだった。

「と、まあそういう訳。分かった?」

 都倉に訓練所でのことを話すと納得してくれた。

「それで七瀬とはうまくやってんのか?」

「うまくって、別にケンカなんかしてないけど」

「ああ……なんだ進展なしかよ」

「なんの話してるんだ?」

「そんなことより荒波、おまえ何で左手で拳銃撃つんだ? 利き手は右だろ」

「ああ、このこと? これは右手で剣を握るためだ」

「はあ? おまえ、右手に剣で左手に拳銃ってか? そんなんで戦えないだろう」

 剣と銃。その発想は歴史上で見ても何人も思いついてることだろう。

 しかし実行する者は少ない、というかまずいない。

 理由の大きな部分は間合いが全く違うからだろう。

 剣の間合いはせいぜい2~3メートル。それに比べ拳銃の有効射程距離は50~100メートル。

 攻撃方法が全く違う武器をどうやって使うのだろうか、と都倉は考える。

「なあ、ホントに出来るのか? まあ確かに針沢は針と拳銃を使ってるけど、アレは間合いが変わらないからであって……というか弾倉マガジンはどうやって入れ替えるんだよ!」

「大丈夫だ、出来るって!」

 余裕の笑みで自信満々に宣言した。

 いったいこの自信がどこからくるのか? 都倉は全く分からなかった。

「じゃあ、次の拳銃行くか!」

 つまり別の拳銃貸せと言っているのだ。

「もう、40丁は試したじゃないか その中に良いのはなかったのか?」

「一つあった。でももうちょっとバリエーションが欲しいんだ」

「注文がうるさい客だなあ、ったく!」

 そうは言いながらも、代わりの拳銃を持ってくる。

「これはどうだ? 1969年発売の『ワルサーPPK/S』に自作の『消音器サイレンサー』を取り付けた自慢の1品だ! どうだ?」

 美味しい料理紹介のようにスラスラ自慢する。

 どうだ? の言葉で「へっへっへ、自作だぞ! 俺が作ったんだ!」という言葉を込める都倉。が……


「いや、『消音器サイレンサー』とか、余計な物いらない」

 

 ガーン!

 都倉は崩れ落ちた。レフェリーがカウントを始める。

(ま、まさか俺が作った超凄い・・・消音器サイレンサーが否定されるとはあああぁぁ……)

「な、何故だぁ。そこらの消音器サイレンサーよりも音も光も漏れないこの自信作が……」

「いや、弾丸が引っかかって威力が弱まるから俺は消音器サイレンサー好きじゃないだ」

「そこは俺が工夫してやるから!」

「とにかくいらない!」

 ガビーン!

(最後は理屈なし……)

 都倉はもう立てない。ゴングが鳴った。

(ま、負けた……)

 勝者、荒波?



 ◆◆



 別次元ディメリクスは地球と同じく昼夜が24時間で巡ってくる。二つの次元が隣り合うように接しているので面積も地球と同じだ。

 なので生活リズムを変えることはなく、食事も1日3回ある。

 射撃練習場を後にし、今日も軽く昼食を済ませた荒波はお日様の下を歩いていた。

 荒波は一旦噴水のたもとに座る。

 ここは城下町6番地区。荒波が初めてティリスミナリアに来たときの瞬間移動門テレポートゲートは右側にあった。

 二週間前、荒波は変わった。

 TSOに入隊することになったその夜から、自主的に走り込みやジャンプの練習をし、射撃演習場にも毎日通った。訓練場も追い出されたが、針沢に「そこら辺の人間や神の血縁ゴッドブラッドには負けないな!」と言われるまで、剣術は上達していた。

 今となっては七瀬や針沢と同じ強さとして捉えられるまでに成長しているはずだった……が。

「うーん……」

 荒波は悩みが絶えなかった。

 剣と銃で戦う。

 その実現には自分に合った武器が必要だった。

 ビュンと音がして、荒波が1つの拳銃を実体化させる。

 『ガバメント9㎜カスタム』。コルト・ガバメント、つまり『コルトM1911』をベースに都倉がカスタムした銃。ダブルアクションになっていて、初段のコッキングさえ行えば続けて弾丸を発射可能だ。

 装弾数は少ないが、アメリカで同じ拳銃をよく使っていたせいか一番しっくり来た。

 さて、問題はもう一つ武器、剣の方だった。

 荒波の理想としては片手持ちの長剣ロングソードが良かったが、まだ自分にあった物が見つかってない。

 既に武器屋はいくつか周り、七瀬と一緒に城の武器庫までチェックを済ませてあった。

 だが、使いやすいものは何個か合った物のなんだか体が拒否するようでうまく使えなかい。

 模擬剣術戦闘の時の剣もしっくり来なかったが、七瀬には「しっくり来ない!? じゃあ模擬戦闘の時は本気が出せなかったの!? そんな贅沢言ったら負けた人達が黙ってないわよ」と怒られてしまったため、今日は一人で探すハメになっている。

(あとどこかに武器屋あったかな?)

 座ってても始まらないと思い、6番地区の大通りを歩き出した。



  

 




 

 

 



 


 

 




 


 

 

  

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