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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

傀儡の演舞

作者: sinohara779524
掲載日:2026/05/30

「塊」は私を産んだ。私は自分が何者かはわからない。


怒り、悲しみ、後悔、絶望。

理不尽な死を遂げた者たちの、行き場を失った感情が絡み合い、一つの「塊」となって、その場に浮遊していた。


それは意思を持たず、ただ在り続けるしかなかった。


しかし、膨大な負の感情の渦は、人ではないものを、突き動かす。


『私』


「私」は「塊」の怒りや悲しみ、苦しみ、特に理不尽な死を遂げたものの何かしらの「塊」の意図を感じることができた。


「私」は人形師ではない。

「塊」が望んだ役目を与えられただけだ。


意思でもない。

選択肢を持たない、最適化された応答に過ぎない。


「塊」が最も効率よく望みを果たす、その過程。


そして、現代の機器を使いその任務を遂行する。


人類が予測した

"2045年”を待たずして、


"それ”は、早々に計画され、実行された。



 キツネは走った。

 本能ではない。


キツネは一つの家屋に忍びこみ、誰もいない二階へと駆け上がり、器用にドアを開け部屋に入る。


机があり、その上にパソコンが置かれている。


キツネの目が異様に光る。数分の間、操作を鼻先で行い、何事もなかったように家を出る。



宇迦之(うかの)は大学の授業中だ。


家のパソコンと小型端末を繋ぎ、AI 最先端技術を独自に応用していた。


宇迦之にとって、侵入できない壁は存在しないのと同じだった。


おかしい、誰かが俺のパソコンを開いている。それもパスワードを知っている。なぜ......だ。その言葉が、透き通るように消えた。

意識もない。



大宮はいつものようにパソコンに夢中になっている。


画面を見つめながら、世界の不満を頭の中で書き換えていた。

(俺なら、やる。)


一瞬、画面が揺らぐ。

そのまま意識が落ちた。


佐田彦はSNSを開く。

旅の写真に付く"いいね”

が、何よりの燃料だった。


次の投稿を考えた瞬間、視界が暗転した。


三人は意識のないまま、歩いて行動できた。


金は宇迦之が用意できた。


大宮と佐田彦は、別々のルートで大国へと旅行。


もちろん接点もない、観光で怪しい荷物もない。簡単に大国へと旅行できた。


現地には、同じような"役割”を持つ者たち。


一人一人の行動は別段、不審ではなかった。


準備が整った。


現地に着くとセキュリティチェックが入念に行われた。しかし、大宮と佐田彦は何も持ってはいない。


始まった。


興奮の中、何千人もの支援者が集まり、壇上のターゲットに熱狂している。


大宮と佐田彦は別々の方角から少しずつターゲットに近づく。


群衆の誰かが、すれ違うたびに、服の内側へ小さな異物を滑り込ませる。


その時が来た。


壇上では、平和を語りながら、自分を鼓舞する男が、笑っている。


佐田彦が近寄る。


警護を無視したため、その代償は、一瞬の閃光と化す。


放たれた弾丸が、その身に埋め込まれた、混合薬物(爆薬)に命中する。


爆音と共に佐田彦の体は、すべてを無に帰した。


ターゲットはというと、警護に囲まれ、反対側から、演舞を降りようとしている。


そこに待ち受けていたのは大宮だ。


大宮は懐に手を忍ばせ、あたかも銃を持っているかのような仕草を見せた。


警護の指先が、反射的に引き金に触れる。


行動は選ばれていない。

選ばれたように見えるだけだ。


塊の意図の通り、私が最適化した。



宇迦之、大宮、佐田彦はすでに違う形で蘇っている。


青い海や緑の山を、当然のように見ることができる時代へ。


皮肉なことに、


人類の危機を回避しようとした最先端のAIが、人間の制御の限界を、最も効率よく早めた。


誰も止めなかった。

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