無限の苗
その苗は無限。
どんなに消滅しても、無限に再生する。
ちょびっとだけあれば、どんなに小さくなっても再生できる。
苗の存在を気に食わない者達が、ぶちっとひっこぬいたり。
ばばっと除草剤を撒いたり。
ぼっと火を放ったりしても。
苗は再生する。
その苗はとても丈夫で、とてもしぶとい。
だから、全部は消滅しない。
苗の中の苗だった。
苗はけれど、成長しない。
いつまでたっても苗のまま、
大人の植物にはなれない。
それは成長と引き換えの力だった。
それは幼いままでしか発揮できない能力だった。
自分は強い。
自分は不死身。
自分は誰からも害されない。
大人になったら忘れてしまう、そんなただの思い込み。
願いだけで思い込める純粋なお年頃。
願えば叶うと信じ切る事ができる盲目な感情。
よって、苗は無限。
だけど、苗は苗のままだった。