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不器用な姉弟は傷を舐め合う、舐め合う舌はちょっとざらつく  作者: 桜乃マヒロ
生徒会はあの日から始まっている

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出る杭筆頭、加賀美咲 前編

 ── 5月7日 16時50分 加賀美咲 ──


 入学から一ヶ月経って、私の最初から全力で激動だった学生生活も一旦の落ち着きを見せ始めていた。

 高校になってからの授業や時間割にもすっかり慣れたし、クラスメイトとの交流もこの時期になればすっかり仲の良い人間やグループは決まってしまい新しくなることもない。


 ただそのせいで、気長にと思っていた橘さんとの仲が進展しづらくなってしまったのは失敗だった。

 まあ、橘さんの場合急に懐に飛び込んだとしても、それなりの理由でもない限り受け入れてもらえそうにはなかったので、私のゆっくりと機を伺う姿勢は間違っていないと思う。

 それだけに、あちらを立てればこちらを立たずといった感じでなかなか仲良くなるビジョンが見えなくて歯噛みする想いではあったけど。

 

 振り返ってみれば全体で見れば平均以上に上手くやれているのに、重要な所で今一歩進展が無くて、少しもやもやとした思いが残る結果だった。

 

 しかし、部活の方ではこれ以上ない手ごたえを感じていた。

 私は実力を判別するための紅白戦で結構活躍できたので、本入部開始からレギュラーのAチーム入りを果たし、部内で一番腕の立つ先輩たちと一緒に練習をするようになった。


 これまでにないハイレベルな練習や試合は、私の中で燻り続けていたやり場のない衝動を完璧に消化してくれた。

 先輩たちに比べればまだまだだけど、バスケの腕がめきめきと上達しているのを肌で感じる。

 高校に入る前に私の求めていた充実感が今まさにここにあった。


 しかし、それでもやはり気になることはゼロではなかった。


 ……顧問の中村先生。


 仮入部時点では顔も見せないようなやる気のない顧問という印象であまり好ましくなかったけど、それは私以外にも、例えば三木先輩や松前部長を筆頭とした部員のほとんどから見ても同じなようで、なんならめちゃくちゃに嫌われていた。

 

 パワハラ、モラハラのオンパレードで、凄く自尊心が高く顧問の立場を悪用し、部員に対していつも強権的な態度をとっているらしい。

 らしいというのも、まだ大事な大会も遠く、試合などの予定もない今の時期では、あまり練習に顔を出すこともなく、来たとしても目立った真似をすることがない日が続いていたから。

 本当に先輩たちがいうほど悪辣なのかとおもっていたけど、先輩たちが言うには今は小康状態らしい。

 大会や試合が近づくにつれてだんだん機嫌が悪くなっていくとか。

 これから先のことを考えると頭の痛くなる話だ。


 そんな何も問題が起きることなく、この状態がこれから先も続いてほしいなと思っていたこのタイミングで、まるで見計らったかのように練習試合の予定が告げられた。

  

 練習を始める前に中村先生が部員たちの前で報告を始める。

 心なしか、いつもよりも緊張感のある面持ちだった。


「急な話だが来週の土曜に練習試合を行うことになった。対戦相手は杉山西高校、うちと同じで県大会まで進んでるレベルだ」


 あまり高校バスケの力関係に詳しくない私にはピンとこなかったモノの、周りの先輩達はその名を聞いて背筋が伸びたように見える。


「当然だが、うちと力量にそこまで差がない以上、負けは許さん。各々練習に励んで試合に臨むように」 


 命令口調でそう話を締めくくった先生に、部員たちは運動部らしく大きな声で応えた。




 ──…………。


「練習試合って私達一年は初めてですね」

「そういえばそうだったかな」


 各チームに分かれて練習開始。 

 私はAチームで一緒にストレッチしている三木先輩と先ほどの練習試合について軽く話をしていた。


「でも、一年は結局出番無いですよね」

「そうだねー、いつも通りのスタメンで出ると思うけど……加賀なら交代要員には入れられるんじゃないかな?」


 私も応援くらいしか出来ないと踏んでいたので、三木先輩の推測に少し胸が弾んだ。


「本当ですか?」

「ああ、一年とはいえ腕は私達と比べてもあんま遜色ないからねー」

「それは言い過ぎですよ」

「まあ、まだ私達も負けない自信はあるが、加賀は伸び代抜群だしね。おちおちしてたらいつの間にか追い越されそうで内心ヒヤヒヤしてるよ」


 リップサービスがほとんどだろうけど、本当にそう思われているならこれ以上無いくらい嬉しい認識だ。


「出来るだけすぐに追いつきますよ。私も先輩達と一緒に試合してみたいですから」

「嬉しいこと言ってくれるね。私や松前なら加賀とポジションも違うし、努力次第では無理じゃないかもよ?」

「三年生は夏で引退ですからね。ゆっくりしてられません」


 私がそういうと、それまで近くにいるけど話には参加していなかった松前部長が口を開いた。


「無理して怪我するようなことが無いようにな。お前はもうこの先の部に欠かせない存在だ」

「はい! もちろんです!」


 一ヶ月も一緒に練習してれば、馬鹿でもわかる。松前部長は鉄仮面に見えるだけで、かなり面倒見が良い先輩だ。ツンデレの素養があるかもしれない。


 面倒見のいい先輩たちに囲まれて、今日もいい練習になりそうだ。 

 そう実感し、いつもより少しだけ張り切って練習に挑んだ。

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